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16品目

「報酬がでない?」

「えー、せっかく、高いお酒を買おうと思っていたのに」


 昼近くになり、ターニアが竜の焔亭に顔を出した事でセフィーリアとロイックはメビウスからの圧力から解放された。

 常連客からだいぶ酒を飲まされていたロイックではあるがメビウスから睨まれていた間に酒はしっかり抜けたようで先日の魔物討伐の件で騎士上層部の決定を伝える。

 騎士上部の決定は自分達で討伐対象をはっきりさせなかったにも関わらず、対象を討伐できなかったメビウスには報酬を渡せないと言う物であった。

 その割にヒュプノパイソンと言う凶暴な魔物は第1騎士隊が討伐した事にすると言うふざけたものであり、メビウスは眉間に深いしわを寄せるがターニアはお酒が買えないと不満そうに口を尖らせるだけである。

 セフィーリアとロイックは条件に同意して魔物討伐を依頼したにも関わらず、条件を反故にした上層部に納得は言っていないようだが立場上、何も言えないようで申し訳なさそうにしている。


「……申し訳ありません」

「別にお前達が謝る事でもないだろ」

「そうね。ただ、兄さんが死んじゃったからって言って、竜の焔亭の恐ろしさを忘れているみたいだから、罰は与えないといけないわね」


 騎士としての立場があってもセフィーリアはやはり謝らないといけないと思ったようで小さな声で謝罪をする。

 メビウスは今回の件で同行した第8騎士隊が条件を反故したわけでもないため、2人を責める気にはならないようで困ったように頭をかいた。

 ターニアも2人を責める気は無いようではあるが報酬で高価な酒を買う予定だったようで報酬を得られない事には少し怒っているようだが、なぜか表情は楽しそうに口元を緩ませている。

 その笑みにセフィーリアとロイックはメビウスの冷たい視線にも似た物を感じて顔を引きつらせてしまう。


「……何する気だよ?」

「何しようかしら、一先ず、天変地異でも起こす? 簡単なおつまみくらいなら半年くらい長雨が降るくらいでしょ」

「バカな事を言うなよ」


 ターニアの様子にメビウスがため息を吐くと彼女は自分にかかっている呪いを駆使して騎士上層部を倒すと冗談じみた事を言う。

 それは普通に考えればただの酔っぱらいの戯言であり、メビウスは呆れたと言いたげにその言葉を切り捨て、ロイックは場を和ませるために冗談だと思い苦笑いを浮かべた。

 しかし、先日の呪いだと言う話を聞いているセフィーリアには冗談には聞こえないようで顔を引きつらせている。


「まあ、元々、約束を守るとは思っていなかったから、俺は俺で契約破棄としてやる事はやるから、どうでも良い。そう契約したからな……いや、ダメだな。あいつらが壊したモップ代とダメにしたナイフ代は払って貰わないと」

「ナイフはわかりますけど、モップを壊したのはメビウスさんでは……いえ、何でもありません」


 メビウスは魔物討伐を受けた時に条件を出しているため、騎士達が契約破棄をしたと広める気のようではあるが経費として最低でもモップ代とナイフ代は請求しないといけないと言う。

 ただ、モップを折ったのはメビウスであり、セフィーリアはモップだけは無理なのではないかと首を傾げるが彼の背後から黒い何かが出ているように見え、口を閉じた。


「それじゃあ、何しようか? 街中で騎士達を狩る?」

「……ターニアさん、あまり過激な事はしないようにお願いします」

「被害を受けたくないなら、止めちゃえば第8騎士隊にまで追いやられたんだから、家の名誉も何もないでしょ」


 騎士達への罰はターニアにとっては完全に酒の肴であり、酒をあおりながら笑っているのだがロイックにとっては笑い事ではない。

 心配顔のロイックの姿にターニアは手を止めて笑った。その言葉はロイックやセフィーリアへ騎士と言う物と決別してしまえば良いと言う物である。

 2人は彼女の言葉に驚きの表情を見せるがそれでも騎士と言う立場や家名を捨てきる事は出来ないのか、すぐに顔を伏せてしまう。

 ターニアは2人の置かれている状況をわかっているのか、手を止めると小さく首を横に振った。


「……何をやっているんだ?」

「メビウスは気にしなくて良いのよ。それで、メビウス、どうするつもり?」

「いや、まだ特には決めてないけどな。数日中にまた狩りに行くつもりだから、それを終わってから考える」


 メビウスは騎士について興味などないためか、3人の話について行けないようで怪訝そうな表情をする。

 残っていた酒を一気に飲み干したターニアは気にする必要はないと言った後、酒をカップに注ぎながら騎士相手にメビウスはどう動くつもりかと聞く。

 契約破棄に対する制裁も考えてはいるメビウスだが彼にとっては差し当たってしなければならない事ではないようでため息を吐いて見せる。


「狩りに行く? また?」

「ちょっとな。気になる事があるんだよ」

「気になる事ですか? どうしたんですか?」

「お前らに関係はないだろ」


 先日、魔物討伐から帰ってきたばかりのメビウスがまた魔物を狩りに行くと言った事にターニアは首を傾げた。

 メビウスは小さくため息を吐くのだがその表情は真剣なものであり、セフィーリアはただ事ではないと思ったようで釣られるように真剣な面持ちをして聞き返す。

 ただ、それをセフィーリアやロイックに説明する理由はなく、メビウスは呆れ顔で言う。関係ないと言われてしまっては返す言葉が見つからないのかセフィーリアはうつむいてしまった。


「メビウスは忙しいか……それなら、騎士達への罰はこのお姉様が受け持っても問題ないわね」

「別に問題はないけど、俺がやる分も残しておけよ」

「あの、何もしないと言う事は……ありませんよね」


 ターニアはメビウスを信頼しているようで小さく頷いた後、騎士達への制裁を思い浮かべて楽しそうに笑う。

 彼女の様子にメビウスはため息を吐くのだが、騎士への制裁に関してはもちろん行うつもりのようでやりすぎないようにと釘を刺す。

 2人の会話にロイックは出来れば自重して貰いたいのだが非は明らかに騎士側にあるためか強く出る事が出来ずに肩を落とした。


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