13品目
「……大丈夫ですよね?」
「だ、大丈夫ですよ。味つけは私がしたんですから」
「……問題なさそうですね。とても美味しいです」
メビウスとセフィーリアが作った食事が騎士達に配られはした物の騎士達は口に運ぶのをためらっている。
セフィーリアは体調も戻ったようで苦笑いを浮かべて問題ないと言うが簡単には信じられないようで騎士達の視線はロイックに集まった。
部下達の視線にロイックは覚悟を決めて料理を頬張るのだが疑っていた料理は美味しく驚きの声を上げた。
その声に部下達は警戒しながらも食事を1口頬張った後、驚いたような表情をする。
「……そんなに俺が信じられないか?」
「メビウスさん、言い難いのですが、お店の噂を聞いていると仕方ないと思います」
「た、隊長、メビウスさんの料理の手際はもの凄く良いんですよ。味つけができないだけです!!」
「……セフィーリア、擁護になっていませんよ」
騎士達の態度にメビウスの額にはくっきりと青筋が浮かび上がる。
ロイックはバツが悪そうに言うとセフィーリアがメビウスを擁護しようと声を上げるがその声は擁護になどなっていない。
彼女の言葉にどうやらメビウスの怒りは限界を超えたようで笑顔ではあるが額には青筋が浮かんだままであり、笑顔からは殺気にも似た物を放っている。
このままでは彼女が殺されかねないと思ったロイックは大きく肩を落とし、セフィーリアに擁護になっていない事を伝える。
セフィーリアは一瞬、何を言われたかわからないようで首を傾げたるとロイックがメビウスを指差す。
指を追いかけた先にはメビウスがおり、セフィーリアは状況を理解したのか彼女の顔からは血の気は引いて行く。
「……味つけが出来なくて悪かったな」
「そ、そうではなくて」
「あ? それなら、何なんだ?」
メビウスの問いかけに慌てて弁明しようとするが言葉は続かない。彼女の怯えようは先ほど魔物と対峙した時以上であり、同行していた騎士2人は彼女の気持ちもわかるようだが自分達に矛先が向いても困るため、彼女を助けるような事はしない。
そんな自分達だけ良ければ良いと言う態度が彼の怒りをさらにあおるのだが矛先が実際に向いている彼女にはどうする事もできない。
それでもメビウスは彼女には手を上げるつもりはないようで鋭い視線を向けたまま、次の言葉を待っているだけである。
「……今度はターニアさんにも同行して貰った方が良いですね」
「あ?」
「えーと、でも、不思議ですね。私は料理の事はよくわかりませんが、メビウスさんの手際はとても良かったと思えます。それなのに……」
ロイックはメビウスの手綱を引けるのは彼の叔母であるターニアだけだと察したようで大きく肩を落とす。
ため息はメビウスの耳にも届き、怒りの矛先は彼に向けられる。ロイックは気まずそうに視線をそらすもののメビウスの料理が不味い理由に不可解に思ったようで首を捻った。
その疑問にメビウスは眉間に深いしわを寄せるのだが、それは彼にとってはあまり触れて欲しくない物だったようでセフィーリアへの圧力が消える。
「……」
「あ、あの?」
「セフィーリア、一先ずは食事を終えましょう。この後、報告を受けないといけないのですから。もちろん、メビウスさんに同行したあなたにも報告して貰う事はありますからね」
不機嫌そうな表情で食事を再開し始めたメビウスにセフィーリアは何が起きたかわからないようで戸惑っているとロイックはまた揉められても困るため、彼女に少し離れた位置で食事を続けるように指示を出す。
セフィーリアはメビウスを怒らせた事を謝りたいようだが謝る方法が見つからないようで小さく頷くとメビウスとロイックから離れて食事を続ける。。
「あまりいじめないでくださいね」
「あ? 知らねえよ」
「そうですね。それでは報告をお願いします」
ここで揉めないようにと言う彼の心づかいなのだがメビウスの機嫌は直っていない。
彼の態度にロイックはため息を吐くものの、元々は部下であるセフィーリアの発言が原因のためか強く出る事はできない。
それでも上層部への報告を上げなければいけないため、メビウスから魔物の話の聞き取りを始める。
「ヒュプノパイソンですか?」
「大層な名前が付いてはいるけど、ただの毒蛇だ」
「そんな簡単に言わないでください。そんな危険な魔物が森に出没しているなんて、どうしたら良いんでしょうか?」
「いや、たぶん、ヒュプノパイソンはあれ1匹だけだな。危険性があると言うなら……このヤグルって言う鳥の魔物だな」
当初、巨大蛇のパイソンだと思われていた魔物はさらに危険性が高い巨大毒蛇のヒュプノパイソンだったと報告を受けたロイックは頭を悩ませ始める。
メビウスにとってはたいした問題ではないと切って捨ててしまう。そんな彼の様子にロイックはもっと危機感を持って欲しいと肩を落とす。
しかし、メビウスは経験からかヒュプノパイソンはさほど問題ではないと思っているようで馬車からヒュプノパイソン以外に捕らえて来た鳥型の魔物を取ってくる。
「……すいません。すでに下準備をされているとわかりません」
「焼いて塩で食うと美味いぞ」
「調理方法も聞いていません」
ただ、持ってこられたヤグルと言う魔物はすでに羽根がむしられており、ただの肉の塊にしか見えない。
ロイックは会話が成立しない事に眉間に深いしわを寄せるのだがなぜかメビウスは嬉々としてヤグルをさばき始める。
その様子にロイックはどう反応して良いのかわからないようだが焼くだけならおかしな事など起きないと考え、機嫌が直るならと彼に好きにやらせようと決める。
「メ、メビウスさん、何をしているんですか!?」
「これからヤグルを焼くんだ」
「ま、待ってください!? 落ち着いてください!?」
「……焼いて、塩をふるだけなのでしょう。なぜ、そんなに慌てているんでしょう」
メビウスが調理を始めた事にセフィーリアが気づいて声を上げた。
その声にメビウスは見ればわかるだろと言うが彼女の慌て方は尋常ではないように見える。
メビウスとセフィーリアのやり取りにロイックは不思議そうに首を傾げるのだがすぐ後に彼は後悔する事になる。




