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大好きな彼女  作者: 武村 華音
18/33

番外編:柴田 美奈子 1/4

海と言えばこの人を忘れるわけにはいきません。

番外編、第2弾。

本日から4日連続UPです!

『ちょっと気難しい坊やのお守りをして欲しい』

そんな内容で掛かってきた電話に大きな溜め息を吐きながら社長室に向かった。

「失礼します」

社長室の扉をノックして開けると、そこには美少年が座っていた。

それが坊やとの出会いだった。

「柴田さん、忙しいのに悪いね」

社長は苦笑しながら私を見て視線を少年に移した。

「うちの事務所に所属が決まった望月 海君」

少年は私の顔を見て小さく頭を下げた。

「柴田さんには今日から彼のマネージャーをしてもらいたい」

…はい?

「何人か会わせてみたんだけど、海君が気に入らなかったらしくて」

「いや…だからって…」

正直勘弁して欲しい。

「この人だったらどうだい、海君?」

「うん、この人がいい」

何を根拠に?

私は半ば強制的にこの坊やのマネージメントを担当させられる事になった。


「いいねぇ…そうそう、その目コッチに頂戴!うん、最高!!」

男性カメラマンが坊や相手に興奮していた。

「君、色気あるね〜ぞくぞくするよ」

カメラマンの顔は何故か赤い。

どうやら“そっち”の人らしい。

この業界はそんなのが多いので別に珍しくもないし、興味もなければ差別的な目を向ける事もない。

そういう人達が増えてきたなぁとは思うけど…。

坊やときたら全くの無関心。

笑いもしない。

車の中での沈黙も結構しんどい。

撮影を終えると同時に控え室に向かい、さっさと着替えてメイクを落とし、車に向かう。

この坊やと同行し始めて既に2ヵ月。

この子が楽しそうに仕事をしているのを見た事がない。

いつも淡々と、ただ事務的に仕事をこなすだけって気がする。

相変わらず何故私がいいと言ったのか分からないままだし…。

この坊やはなんと望月建設社長の息子。

経済関連に弱い私ですらその大手建設会社は知っている。

社長の顔とかって言われるとサッパリ分からないけど。

つまりはお坊ちゃまな訳。

多分何の不自由もなく暮らしてるんじゃないかしら。

だから何でモデルを始めたのかも不明。

う〜ん…分からない事ばかりだわ。

「ねぇ、何で私をマネージャーにしたの?」

ある日、車内の沈黙を破るように海に尋ねた。

「柴田さんだけだったんだよね」

何が?

「僕の事いやらしい目で見なかったの」

「はぁ?!」

相手はまだ中学生だってのに何を考えてたのよ…。

私は呆れて溜め息を吐いた。

「皆僕の顔見て凄くいやらしい顔したんだ。何て言うのかな…食われそうな感じ?」

何とも分かりやすい説明だ。

まぁ…あの子達の気持ちも分からなくもないけど…。

「なるほどね…」

「柴田さんだけが僕を見てうわって顔したんだ。僕のマネージャーやりたくないって顔」

バ…バレてる…。

「だから柴田さんがいいって言ったんだよ」

そう言う坊やの顔はどこか寂しげだった。

「海君は…」

「海でいいよ。君付けなんて鬱陶しいから」

「海は…何でモデルなんてやろうと思ったの?」

「スカウトされたから何となく。深い意味なんかないよ」

とてもそうは見えないんだけど…。

「早く自立したいとか?」

ルームミラーで坊やの顔を見ると図星だと分かるほどあからさまに驚いている。

「嫌な人だね柴田さんって」

「それはどうも。最高の褒め言葉だわ」

彼が早く自立したいと思う理由はすぐに身をもって知ることになる。


「柴田さん、いつも海がお世話になってるようで…今度よろしかったらお食事でもいかがですか?」

ある日の夜、海を送り届けると玄関から笑顔の男性が出てきて私の手の甲に唇を落とした。

坊やのお祖父さんかしら?

あまりにも自然な仕草で抗う隙もなかった。

おそらく、この男性にとっては単なる挨拶なのだろう。

いやらしさも嫌悪感も感じない。

「父さん、やめてよ」

と…父さん?

この人が望月建設の社長…?!

随分お年を召してからの子供なのね…。

「時子さんっ早く父さん連れてってよ!」

何故か珍しく坊やが苛立っている。

「はいはい」

やって来た女性は私と同じくらいのように思える。

お母様かしら?

私は坊やの家族を眺めながら勝手に家族構成などを考えていた。

「綺麗なお母様ね」

「姉さん」

はい?

「今のは姉さん。僕の家には母親なんかいない」

…もしかしてさっきのお父様が原因…?

「柴田さんも気を付けた方がいいよ。父さん女の人大好きだから、気を抜いてるとあっという間にベッドの中だよ」

とんでもない環境で育った坊やらしい。

「ありがとう、忠告はありがたく聞いておくわ」

私だってちゃんと旦那様がいるんだもの、金があるからって靡いたりするわけないじゃない。

私は20%の好奇心と80%の面倒臭さを抱えながら家路についた。


「お帰り、美奈子」

玄関を開けると愛しい旦那様が顔を覗かせた。

「久しぶり。1ヵ月ぶりね」

私は旦那で俳優の猪俣達郎の広げる腕の中に身体を埋めた。

「愛しい人、その顔をよく見せてくれ」

彼と結婚して10年以上経つけれどなかなかゆっくりと過ごす事は出来ない。

仕方ないと分かってはいるけれど最初はそれが嫌で離婚話をよくしていた。

「また来週から暫く帰れない。いつも寂しい思いをさせてすまない」

私を抱きしめる彼の腕は優しい。

「仕方ないじゃない、仕事なんだもの。それに私も面倒な仕事を引き受けちゃったから暇はしないと思うし」

「面倒な仕事?」

「そう、とある会社社長のご子息が事務所に入って来てマネージメントを任されてるの」

達郎さんの顔が曇った。

「子息って事は男?」

「そう14歳のね」

達郎さんは顔を顰めた。

「14歳でも男だろ?」

「どっちかって言うと男の子よ。まだ中学生だし」

「中学生なんてそういう事に興味を持ち始める年齢だ。美奈子は若いし綺麗だから心配だ」

達郎さんが何の心配をしているのかは聞くまでもない。

「あの子から見たら私なんかおばさんよ。あの子だってそういう眼で見てないって言い切れるし」

あの子は私に言ったんだもの。

“柴田さんだけが僕を見てうわって顔したんだ。僕のマネージャーやりたくないって顔”

「何で言い切れる?」

「あの子何人もマネージャー候補を却下したの。何でだと思う?」

「…分かる訳ないだろ、そんなの。でも、事務所に入ったばかりでそんな事いえるその子は大物だな」

確かにね。

「あの子…私が勘弁してよって顔をしてたからってマネージャーに決めたのよ。他の人はいやらしい目であの子を見てたんですって」

おそらくそういう目で見られ続けてたんだろう。

あんな綺麗な子だもの。

「それでも心配だ」

達郎さんが私の額に口付けながら抱きしめる腕に力を込めた。

「大丈夫よ、私には貴方だけだもの」

私は彼の頬を両手で挟んで口付けた。


彼の通う中学校の前で私は車を停めて待っていた。

あの子は目立つ。

下校時間で同じ制服の子がたくさん出てくるのに一目で分かる。

「柴田さん、迎えに来てくれたの?」

海が私を見つけて近付いて来た。

女子中学生の殺気を含んだ視線が私に向けられたのは言うまでもない。

だからってガキの視線ごときでビビる私ではない。

「えぇ、このほうがラクでしょ?」

「ありがとう」

海は笑顔で礼を言ってシ○ックの後部座席に乗り込んだ。

「この車柴田さんの?」

「えぇ、そうよ。燃料代は会社持ちだけどね」

「へぇ…このブルーメタリック綺麗だよね」

「私も色で決めたのよ」

車なんて乗れればいいと思ってるから、形や色くらいしか見てない。

海とは随分と話すようになった。

学校での出来事や仕事の愚痴、世間話など、それは海が打ち解けてきた証拠だと思う。

「今日もあの雑誌の仕事でしょ?」

海の表情が冴えない。

「そうよ、どうして?」

「あのカメラマンの女の人…なんか苦手なんだよね僕」

玖珂くがさやか。

最近腕がいいと評判の若手女カメラマンだ。

「あの人腕がいいって人気あるのよ?」

「確かに綺麗に撮ってくれるけど…カメラの前に立ってると犯されてるみたいな気分になるんだよね」

犯されてるって…。

私は返す言葉に詰まった。

「あの人の眼を見るとさ…催眠術掛けられたみたいに逆らえないんだよね」

面白い表現じゃない。

私は苦笑した。

「嫌いな訳じゃないんだけどさ、苦手なんだよね。あぁいう女の人」

って言うよりもいやらしい目つきの女が嫌いって事じゃないのかしら?

マネージャーを決めるときの事もそうだし…。

この子はそういう眼に敏感なんじゃないのかしら…?

私はその後話を変えて海の気分を持ち上げる事に終始した。


「素敵よ海、そうそう。手で喉仏を撫でながら流し目頂戴…そうイイわ」

何ともいやらしい声だ。

「自分お好きなように動いてみて、海は色気があるからそのままで充分に感じそう…」

カメラを持つと被写体以外全く眼中にないらしい。

それはいいんだけど…。

「あぁイイ…素敵、濡れちゃう・・・」

濡れちゃうって…。

私は玖珂 さやかの声に1人赤面していた。

海はいつものように澄ました顔で彼女の声に従っている。

他のカメラマンよりも海の色気を出すのが上手いとは思うけど、中学生に掛ける言葉ではない気がする…。

「あぁん!イイっ」

まるでアダルトビデオの音声だわね。

居心地が悪いったらない。

「好きな女抱いてるような顔頂戴」

玖珂 さやかの声に海の動きが止まった。

「…それってどんな顔さ?僕には分からないよ」

玖珂 さやかに向けられた目は冷めた感情のない目だった。

「女抱いた事ないの?」

「ないよ」

「あら、勿体ない」

何が勿体ないのよ?

「ねぇ海君、今日食事でもどう?」

それは明らかに海を食おうとしてるんじゃ…?

海だって彼女の言葉の意味くらいは分かっただろう。

「柴田さん、今日もう仕事ないでしょ?」

海が私に尋ねた。

「えぇ、ないけど…それがどうしたの?」

「いいよ、付き合うよ」

海の言葉に私は耳を疑った。

「海?!」

「柴田さんは黙ってて。僕が誘われたんだから僕が決める事でしょ?」

海だってその意味は分かってる筈だ。

なのに、その誘いを受けるなんて…。

何を考えてるの、海?

私はその後2時間、海の姿を見つめながら考えたがあの子の考えている事など理解出来なかった。



ごらん頂きありがとうございます。


なぜか今、長崎にいます。

ホテルのロビーにあるパソコンから投稿してます。

何で私はここにいるんだろう・・・?

今日中に帰れるのかなぁ・・・?


取り敢えず・・・また明日会いましょう♪

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