新たな恋の予感
ブロンティ公爵がジェイソン国王および議会の面々と賠償について協議を始めているあいだ、マリアンは二人の侍女に付き添われ、議事堂外の庭園に腰を下ろしていた。
王太子妃教育を受けるようになってから、彼女は四年にわたり王宮を訪れている。
そのたびに、王宮のいくつかの庭が、少しずつ衰えていることに気づいていた。
この議事堂前の大庭園もそうだ。
七歳のとき、初めて王宮を訪れたあの日。庭は四季の花々で満ちていた。
春夏秋冬、それぞれの季節に咲く植物は四つの美しいガラス温室に分けて展示され、訪れる者すべてを魅了していた。庭園を囲む水路は川を模して設計され、水は澄み、鮮やかな小魚と翡翠色の水草が揺れていた。
だが今、水路は干上がっている。魚は死に絶え、水は抜かれ、灰色の乾いた土が無機質に埋められていた。四つの温室は解体され、輝いていたガラスは割れた窓の補修材として使われたという。
花はまだ咲いている。だがどれもありふれた品種ばかりだ。
城下町の平民の花市のほうが、よほど珍しい花を揃えているだろう。
唯一変わらないのは、庭一面を覆う蔓薔薇。
七歳のあの日、王宮で出会った少年が、最も美しく咲いた黄色の薔薇を摘んで彼女にくれた。その花は押し花の栞となり、今も彼女の書物に挟まれている。
あの頃は赤も、黄色も、桃色も、混色もあった。
今は――赤だけ。
まるで庭の美しさは、赤以外すべて奪われたかのようだ。
エーリカ王妃が去ったあと、庭の主も消えた。
マリアンはふと思い出す。ジェイソン国王の婚礼の主花は、赤い薔薇だった。
だからだろうか。庭師たちは人手も報酬も減るなか、それでも赤い薔薇だけは必死に守り続けている。
壁にまで蔓は伸び、鮮烈な赤が石壁を侵食している。
侍女アンナが言っていた。蔓薔薇の栽培には繊細な技術が必要だと。支柱の向き、剪定の加減、日照の調整。
だが目の前の赤い薔薇は、そんな原則を嘲笑うかのように、あらゆる方向へと奔放に伸びている。
すでに春の温もりは去り、庭の隅には冷たい影が落ちている。
それでも、赤は咲いている。
凍える影の中でさえ。
ふいに、マリアンの背筋に寒気が走った。長年見慣れた王宮の薔薇が、初めて恐ろしく感じられた。
婚約破棄から三日。
はじめて、彼女は思った。
――この婚約を失ったことは、救いだったのかもしれない。
もし王妃となり、この庭を毎日見続けなければならなかったとしたら。その想像に、胸が締めつけられる。
そのとき。
庭の奥から、一人の青年が姿を現した。




