にだけ見えるもの
その光景を、ティムは静かに見つめていた。
むしろ、どこか嬉しそうに。
彼の視界に映っているものは、他者とは違う。
彼にとって、そこにあるのはただ――
黄金に輝く存在だった。
刺客に傷つけられ、「魔霊眼」を得て以来、ティムの世界は変わっている。
彼はもはや、外見を見ていない。
魔力の流れ。
魂の構造。
存在の密度。
そういったものだけを見ている。
形は曖昧で、輪郭はぼやける。
人も、動物も、建物すらも、ただの流れと構造に過ぎない。
だが例外がある。
エリカ。
そしてドグ。
エリカを見るとき、彼の視界にはまず、赤い花を咲かせる蔓が体内を巡る存在が映る。しかし見続ければ、その奥に、本来の姿が現れる。
ドグも同じだ。灰黒の泥の塊のような存在が、やがて傷だらけの男の姿へと収束する。
そして、レイ。
彼らだけは違う。
どれだけ見ても、どれだけ近づいても、どれだけ触れても――
ティムの視界には、ただ一人の女性しか存在しない。
黒い髪。
金色の瞳。
光を宿した肌。
それは、世界の中で最も美しい存在だった。
共に過ごす中で、違和感に気づかなかったわけではない。
同じ姿の存在が、別々に動くこと。
何もないはずの場所から現れること。
そして時折、何かを“消してしまう”こと。
彼の視界では、それらはすべて一つに重なって見えている。
だが、他の感覚は知っている。
――それは一致していないと。
だが、問題ではなかった。
最初に出会った時から、彼は理解していた。
彼らは、人ではない。
それでも構わなかった。
もし問題があるなら、山の近くに住めばいい。
会いたいときに会えればいい。
だが今、彼らは領地で受け入れられ、共に生きている。
そして――幸せそうにしている。




