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星の子と魔眼の王子

狂ったクリスティーナに残っていたのは本能だけだった。


飢えれば、山の動植物を貪った。

隕石に汚染されたそれらは、彼女の思考をさらに混濁させた。


孤独になれば、山に現れた半人半獣の種族と交わり、子を産もうとした。


畸形の子が生まれた。

だがその大半は、この土地の空気すら代謝できず、生まれて一分も生きられなかった。


残った子も、飢えに狂う母から逃れられなかった。

死んだ兄弟と一緒に、母の口から再び母の体内へ戻された。


そんな中で生まれたのが、レイだった。


最初、クリスティーナはレイの誕生に気づかなかった。

それは幼体というより、隕石の「物質」のようだった。


産道を出たあと、レイは変形した。

身体を分裂させ、環境に適応した。


クリスティーナがそれに戸惑った隙に、レイは逃げ、隠れた。


やがて母は眠りについた。


レイは六つの乳房から乳を吸い、父たちを真似て、新しい手足と牙で獲物を裂いて食べることを覚えた。


時折、クリスティーナは正気を取り戻した。


四本の腕で子を抱き上げ、長い尾の上に乗せ、人間の歌を曖昧に歌った。


旅人の荷物から拾った本や道具も、レイの洞窟に集めた。


そうしてレイは育った。


だがその人間の遺物は、別の結果を生んだ。


レイは人間として生きてみたいと思うようになった。


本に描かれた世界を見たい。

彫像の実物を見たい。


子供のころ、人間の村に紛れ込んだこともあった。

だが数ヶ月もすれば、必ず正体が露見した。


思春期になると、望みはさらに明確になった。


人間が欲しかった。

正確には――会話ができ、自分の身体の一部と結合できる番が。


だが人間は、レイの真の姿を見ると狂った。



星が特に明るい夜、レイは山頂で祈った。

本に書かれていたように、空へ祈った。


遠い虚空で、欠片の源である古き神が、夢の中でその祈りを聞いたのかもしれない。



ある日、森で一人の少年に出会った。

目隠しをし、杖を持ち、仲間とはぐれたらしい少年。


レイは母のように無差別に殺さない。

茂みの中から声をかけ、道を示した。


少年はティムと名乗った。

黒髪と、新芽のような碧い瞳を持つ、美しい少年だった。


レイは、彼が盲目だと思った。

だから背後を歩きながら、夢中で話し続けた。

だが突然、ティムは振り向いた。レイは隠れなかった。


ティムは目隠しを外し、彼女を見た。

恐怖も狂気もなかった。

ただ顔を赤くした。

それは、男が恋する女を見るときの顔だった。


こうして二人は出会い、離れられなくなった。


そのことはエリカに「魔霊眼」の存在意義を疑わせることになるが、レイにとってはどうでもよかった。


レイにとって重要なのは、自分の小さな家族だけだった。


自分。

ティム。

そして生まれた子。

これから生まれる子ら。


それに囲まれていれば、レイはもう怪物ではない。


もし誰かがその幸福を邪魔するなら――


レイはそれを滅ぼす。



レイと子どもたちの傍らでは、ティムもまた金色の毛皮にもたれ、静かに眠っていた。


エリカとダグは、入手できる限りの文献を調べ尽くしたが、このような組み合わせで子が生まれたという記録は、どこにも見つからなかった。


そのため、レイが産卵した後も、子どもたちがどのような姿で生まれるのかは分からなかった。

なにしろクリスティーナの子どもたちの中で、成長できたのはレイただ一人だったのだから。


やがてティムはレイに告げた。

三つの卵の中に、人間の形をした存在が見える、と。

それら三つの卵こそ、レイが生命の気配を感じ取っていたものだった。


最初の卵が孵る時に備えて、ティムは多くの手間をかけ、レイの洞穴を人間が暮らせるほど快適な場所へ整えていた。

自宅から柔らかな毛布や掛け布団を運び込み、さらにダグが作った魔法道具も持ち込んだ。

それらによって洞穴の湿気は取り除かれ、いつでも暖かく心地よい空間が保たれている。


三つの卵がすべて孵った後には、彼らは領地の領主館へ戻って暮らす予定だった。


インスタ領では、レイは人間が直視できる分裂体だけを使って行動している。

インスタ伯の館の使用人たちは、エリカたちの出入りについても沈黙を守っており、たとえ時が経ってレイの異質さに気づいたとしても、それを口にすることはないだろう。


巣穴の中で、ティムとレイは、静かに自分たちの夢を紡ぎ続けていた。

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