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血肉の胎の地獄

※警告※

本章には非常に強い暴力描写、流血・人体損壊表現、グロテスクな描写、およびクトゥルフ的恐怖表現が含まれます。

閲覧の際はご注意ください。


ついにマリアンは、すべてが始まった議事堂へと辿り着いた。


五年前。

父が宰相になったばかりの頃、この場所で国王と契約が結ばれたのだ。

彼女とエドワードの婚約契約。

議会の前で二人は署名し、どちらも恥ずかしそうに頬を赤くしていた。ついにマリアンは、すべてが始まった議事堂へと辿り着いた。


だが今――

議事堂の庭園は、まるで別の世界のように変わり果てていた。



蔦を絡ませていた赤い薔薇は、すべて消えている。それだけではない。

花も、草も、木々も。生命と呼べるものは何一つ残っていない。

地面を覆っているのは、赤黒く粘る液体だった。腐敗とも血臭ともつかない、鼻腔を刺す匂いが漂っている。


地面には何かが引きずられた跡が残っていた。

大小さまざまだ。

最も大きいものは、屈強な成人男性ほどの大きさ。

最も小さいものは、生まれたばかりの赤子ほどだった。


議事堂の扉は開いたままだった。


中にいた官僚たちは、すでに全員死んでいるらしい。目を見開いたまま、体は引き裂かれ、肉片となって散らばっていた。


そして――

そこには、何かがいた。

それは巨大だった。重い肉の塊が床を擦る音と共に、低く呻きながら、荒い息を吐き、ゆっくりと動いている。それは生きていた。


マリアンは理解していた。覗いてはいけない。

それでも彼女の足は止まらなかった。

彼女は扉へと近づき、そっと中を覗いた。


ブラウンティ公爵が、娘を見ていた。


いや――

「見ていた」という言葉は、もはや正しくない。


彼の眼窩には、もう眼球がなかった。

黒い空洞の中で、引きちぎられた眼筋が散らばり、白濁した組織液と血が頬を伝っていた。。

胸は大きく切り裂かれている。

露出した骨は粉々に砕かれていた。中央の胸骨は完全に砕け、左右の肋骨は何かの力によって無理やり押し広げられ、裂けた胸壁の筋肉の外へと突き出していた。


だが。

その奥で。

心臓だけは、まだ動いていた。


どくん。

どくん。


公爵の下半身は、巨大な肉体と結合していた。

規則的に痙攣している。

骨盤から下の脚は、その巨大な肉色の物体の中へ深く突き込まれていた。

腿より下は、もはや見えない。

二つは、ほとんど一体化していた。

二つの肉体は、すでに境界を失っていた。


公爵の下半身と結合しているその肉色の物体は、彼の十倍ほどの大きさだった。

蒼白な人間の皮膚に覆われている。

だが皮膚は限界まで引き伸ばされ、内側から何かが膨れ上がっているのがわかる。まるで人間を過剰に膨らませた風船のようだった。


背面には楕円形の穴があり、そこに公爵の下半身が接続されている。


前面には、口のような構造があった。

そこから漏れていたのは、マリアンが外で聞いた、あの呼吸音だった。

苦痛とも、

歓喜ともつかない音。


その肉塊はマリアンの存在に気づいたらしい。

重たい体をゆっくり動かし、その正面を、マリアンへ向けた。


彼女は声にならない悲鳴を上げた。。

そこにあった顔を、彼女は理解することができなかった。

その場に崩れ落ちる。


座った瞬間、身体の下で何かが潰れた。

ぬるりとした感触。水袋のようなものが破裂する。

しかしマリアンは気づかなかった。

自分の体の下に、無数の柔らかい袋状の物体が蠢いていることにも。


彼女はただ、その顔を見ていた。


そして、再び悲鳴をあげた。

それは――

ジェの顔だった。


かつて柔らかく美しかったジェの顔は、完全に歪んでいた。皮膚は極端に引き伸ばされ、まるで何人もの人間が四方から彼の顔を引っ張ったかのようだった。

目も鼻も口も、すべて外側へ引き裂かれている。

それでも、紫色の瞳と、顔の上に垂れる銀色の長髪だけが、彼の正体を示していた。

その目も正常ではなかった。白目は血走り、紫色の瞳孔は三つに裂け、それぞれ別の方向へ回転している。


その巨大に引き伸ばされた顔の下には、先ほど見えた巨大な肉球の身体が続いていた。

もはや人間の形も四肢もない。

ただ巨大な球体の胴体。

背面には公爵と接続する穴。

公爵が腰を動かすたび、ジェの身体も揺れ、歓喜にも似た叫び声をあげた。


やがてその丸い身体の下部が露わになる。そこにはもう一つ裂け目があった。

その奥から、次々と肉塊が生み出されていた。

よく見ると、それらは赤子の顔を持っていた。

母体と同じく、顔だけは人間に近い。


だが身体は完全に異形だった。

子供が粘土を握り潰し、床へ叩きつけたような形。


歪み、ねじれ、ほとんど形を成していない。

それらの歪んだ赤子たちは床を這い回る。

あるものはジェや公爵の体へ這い上がり、あるものは床を彷徨い、口を開いて肉を吸い始める。

両親の体を。あるいは床に転がる死体を。


マリアンは、先ほど自分が潰したものを思い出した。

床を見た瞬間、彼女は激しく嘔吐した。


「助けてくれ……殺してくれ……」

ジェの声は、ほとんど空気の震えに近かった。


議事堂の反対側で、何かが這ってくる音がした。

それが動くたび、死体が踏み潰され、床に蠢く歪んだ赤子たちをも踏み砕いた。



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