一般常識人と最強女王の旅
とりあえず、叫んで、スッキリした……じゃなくて! いったい、何が起きるの!?
ドドドドドド……!
物騒な音が聞こえてきた。自分で言っておきながら、血の気が引くのを感じる。
「いっけえ~!」
そんな僕に反して、ご機嫌なユイナ。その視線の先を見ると、巨大狼に、鋭い光の雨がガンガン降り注いでいた。
……パタリ。狼ワンワンが倒れた。
身動きひとつしない。完全にノックアウト。
はあ……餌にならずに済んだみたい。
「決まったね〜! ラブリーピースシャイニングなんちゃら〜!」
ぱちぱちぱち。
ユイナが楽しそうに拍手している。
――必殺技を“なんちゃら”でごまかさないで!
「すごい肉弾戦だったね……」
魔法キャラって、普通、遠距離アタッカーじゃないの?
この国も、人手不足なのかな。……いや、原因は少子高齢化じゃなさそうだけど。
「ふっふっふ。私は確信したよ。君は、この国を救ってくれる人だって」
満面の笑み。
……いや、そんな笑顔で言われても!
抵抗したら、ぶっ飛ばされそうな圧があるんですけど!? 背筋がぞわわ……。
「どうせなら、魔法使いとかにしてほしかったな……」
あの某イギリスの少年みたいなやつね。年齢も同じくらいだし。
「そうはいかないよ。だってこの国で魔法を使えるのは、魔法少女だけなんだから」
「そ、そうなの……?」
却下、早っ! もうちょっと夢と希望を持たせてよ!
「だから、私と一緒に旅に出よう。各地で精霊からアイテムを集めて、魔王を倒すんだ!」
その目的、完全に某RPG。
……でも、ちょっとワクワクしてる自分がいる。
「僕、ユイナについていけるのか……魔王なんて倒せるのか……すごく不安なんだけど」
肉弾戦とか絶対無理だし。
でも、行くあてもない。
ぶるぶる震える僕の肩に、ユイナがそっと手を置いた。
「私は、君の力を必要としてる。だから、その力を存分に発揮してほしい。それだけ」
「ユイナ……」
胸の奥がじんわり温かくなる。
優しい言葉が、心に染みた。
――もしかして、僕、ここに来てよかったのかも。
「……っていうか、倒せなかったら、それまでだし。私じゃなくて、世界が悪い」
その発想はなかった。
まあ、女王様が言うなら、そういうことにしておこう。
「よろしくね。えっと……」
「ユイナでいいよ〜」
「う、うん……。僕は――」
その時、コンパクトが光った。
「えっ!?」
「そっか〜、変身してるんだから、元に戻んないとね〜」
お約束、徹底してる……!
光が収まると、僕は元の姿に戻っていた。
このコンパクト、僕より空気読める?
「僕の名前は、フーマだ」
「了解! じゃあ、ラブリーピースことフーマ、まずは――」
ユイナは、バタンキューしていた巨大狼を担ぎ上げた。
「……ごはんを食べに行こう!」
「え、ちょ、まさか――これ食べるの!?」
血の気が引く。
ヒグマ級のサイズなんだけど! 誰が捌くの!?
「うん。近くの宿屋で台所を借りよ〜」
怪力(文字通り)で狼を担いで歩き出すユイナ。
「怪しい力」と書いて、まさに“怪力”!
「待って、ユイナ!」
慌ててその背中を追いかける。
こうして――
一般常識人の僕と最強(色んな意味で)女王ユイナの、旅が幕を開けた。




