夢を夢で終わらせないために
戻ってきた場所は、西洋ファンタジー系のRPGに出てきそうな豪華な調度品に囲まれた場所だった。
売ったら、高そうだな……じゃなくて!
「え!?」
びっくりして、ガバッと勢いよく起き上がる。
僕、さっきまで、魔王城にいたよね!?
なんで、天蓋つきベッドで寝てるの!?
そして、来るすごい速さのハイヒールの音……こ、これは……!
「わ~! 起きた~!」
フリフリのドレスを着たユイナが僕に抱きつく。抱きつくっていうか、首絞めてる……!
「ユイナ……! ここ……どこ……」
「私の王宮だよ~っ!」
「ま、魔王と魔王城は……?」
「フーマが帰ってきたと同時にぜ~んぶ、消えちゃったよ~。無事に倒したんだね~」
「そ、そうなんだ……」
だいたい状況はわかった。
そうか……この世界で、僕は、ちゃんと使命を果たしたんだな……。
「それにしても、よかったよ~!」
「な、何がっ……」
女王様らしいボリュームのあるドレスになった分、ユイナの首を絞める威力が倍増!
やばい!このままじゃ、息の根、止められちゃう……!
「フーマが、魔王に食べられなくてさ~!」
「いろんな意味で、問題発言だよっ!」
14歳の男子中学生は、まだ、大人の世界に行けないのっ!
……っていうか、食べられそうになっても、踏みとどまった僕を褒めて!
「……ということで、魔法少女・ラブリーピース……こと、フーマ!魔王を倒した君は、君は、2つの未来を選べる」
「え……?」
どこからともなく現れたハート型のコンパクトが輝き始める。
ユイナがようやく僕から離れた。そして、寂しげな顔をする。
「1つは、ここに残る。もう1つは、もとの世界に戻る」
ハート型のコンパクトが、眩しいくらいに僕を照らす。ちょっと! そんなに、照らさなくても、僕は逃げないよっ!
「もちろん、シルベスタ王国の女王としては、ここに残ってほしい」
「ユイナ……」
「でも、これは、君の人生だから。決めるのは、君自身だよ」
ユイナがふっと微笑む。
うん。それなら、僕の答えは決まってる。
「……もとの世界に戻るよ」
「……そっか」
「ここでの生活は楽しかった。でも、僕は、もとの世界でやるべきことがあるんだ」
ユイナが俯く。どうやら、泣いているみたいだ。しまった……泣かせるつもりはなかったのに……。
「大人になったねえ……フーマ……」
「う、うん……?」
もはや、親戚おばちゃ……じゃなかった、お姉さん! それだけ、僕らは長い時をともに過ごしたんだろう。そう思うと、感慨深いな。
「じゃあ、ここで、お別れだね」
「そうだね……」
コンパクトが形を変え、白い扉になった。きっと、この向こうに、もとの世界があるんだろう。僕は、覚悟を決めて、扉のドアノブを握った。
「ここから、ず~っと、応援してるからね~っ!」
ユイナが涙を拭って、僕に笑顔で手を振る。
「ありがとう。ユイナ」
笑顔で手を振り返す。召喚してもらえて、本当によかった。
僕は、心赴くままに生きて、みんなを、自分を笑顔にする。
もとの世界でも、必ず、その夢を叶えてみせる……君のおかげで、そう思えるようになったんだ。
だから、この扉を開く。
開いた途端、優しい風と桜らしきピンクの花びらが、僕をふわっと包み込んだ。
――さあ、行こう。
夢を夢で終わらせないために。




