表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

53/56

永遠に……?

気がつくと、僕は、湖の上に浮かぶ小舟に、魔王と向かい合って、座っていた。さっきとは打ってかわって、青空が広がっていて、周りには紅葉した色とりどりの木々が葉を揺らす豊かな森がある。


「ここは……」


魔王がゆっくりとオールを漕ぎながら、微笑む。日差しがスポットライトのように当たっているせいか、いつも以上に輝いて見えた。


「私とラブリーピースの終の棲家だ」


耳をすませば、風で木々が揺れる音がして、鳥のさえずりが聞こえる。水面を覗き込むと、魚たちが悠々と楽しそうに泳いでる。そんな穏やかな場所を、僕と魔王は、小舟でたゆたっているようだ。


「あなたは、ずっと、こういう生活を夢見ていたのですか?」


「そうだ。愛する人と自然の中で、穏やかに、悠久の時を生きる……それが、私の望みなのだ」


「魔王……」


これが、魔王の真の姿……RPGのラスボスでいう、第2形態ってやつだろう。思ってたのと違いすぎて、拍子抜けする。


むしろ、僕だけ、仮初めの姿のままでいいんだろうか……。


「……どうした? 浮かない顔だな」


「いえ……なんでも……」


魔王のキラキラとした瞳で、まっすぐに見つめられて、思わず、視線をそらす。図星すぎて、直視できない。


「ふむ……だが、その瞳は嘘をつけないようだな」


魔王が僕の手に自分の手を重ねる。その温かさで、胸の奥が、きゅっと締め付けられた。


「僕は、あなたが想うような人間じゃないんです」


魔王が真の姿を見せてくれるほどに、自分が仮面をつけている事実が苦しい。苦しくて、涙が出てくる。拭っても、拭っても、頬を伝う。そんな僕を魔王はそっと抱きしめた。


「……ならば、私が、守ってやろう」


「あ……」


「私とお前はどこか似ている。だからこそ、お互いに惹かれ合うのだ」


魔王と過ごす穏やかな時間は、夢のように甘く、優しい。でも、その甘さが、逆に逃げ場をなくしていく。


僕は……霧生颯真だ。魔法少女ラブリーピースじゃない。


心の中で繰り返すたび、胸が熱くなる。一度、溢れ始めた涙は止まらなかった。


「ラブリーピース。私だけを見ろ」


「え?」


はっと我に返り、魔王を見る。


「そうすれば、何もかも忘れられる……」


魔王に見つめられるうちに、霧生颯真だった記憶が徐々に薄れていく。


「ここで、ともに生きよう。永遠に……な」


魔王の手が僕の頬に触れる。


永遠……か……。それも悪くないな。


めでたし、めでた……くなくない!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ