永遠に……?
気がつくと、僕は、湖の上に浮かぶ小舟に、魔王と向かい合って、座っていた。さっきとは打ってかわって、青空が広がっていて、周りには紅葉した色とりどりの木々が葉を揺らす豊かな森がある。
「ここは……」
魔王がゆっくりとオールを漕ぎながら、微笑む。日差しがスポットライトのように当たっているせいか、いつも以上に輝いて見えた。
「私とラブリーピースの終の棲家だ」
耳をすませば、風で木々が揺れる音がして、鳥のさえずりが聞こえる。水面を覗き込むと、魚たちが悠々と楽しそうに泳いでる。そんな穏やかな場所を、僕と魔王は、小舟でたゆたっているようだ。
「あなたは、ずっと、こういう生活を夢見ていたのですか?」
「そうだ。愛する人と自然の中で、穏やかに、悠久の時を生きる……それが、私の望みなのだ」
「魔王……」
これが、魔王の真の姿……RPGのラスボスでいう、第2形態ってやつだろう。思ってたのと違いすぎて、拍子抜けする。
むしろ、僕だけ、仮初めの姿のままでいいんだろうか……。
「……どうした? 浮かない顔だな」
「いえ……なんでも……」
魔王のキラキラとした瞳で、まっすぐに見つめられて、思わず、視線をそらす。図星すぎて、直視できない。
「ふむ……だが、その瞳は嘘をつけないようだな」
魔王が僕の手に自分の手を重ねる。その温かさで、胸の奥が、きゅっと締め付けられた。
「僕は、あなたが想うような人間じゃないんです」
魔王が真の姿を見せてくれるほどに、自分が仮面をつけている事実が苦しい。苦しくて、涙が出てくる。拭っても、拭っても、頬を伝う。そんな僕を魔王はそっと抱きしめた。
「……ならば、私が、守ってやろう」
「あ……」
「私とお前はどこか似ている。だからこそ、お互いに惹かれ合うのだ」
魔王と過ごす穏やかな時間は、夢のように甘く、優しい。でも、その甘さが、逆に逃げ場をなくしていく。
僕は……霧生颯真だ。魔法少女ラブリーピースじゃない。
心の中で繰り返すたび、胸が熱くなる。一度、溢れ始めた涙は止まらなかった。
「ラブリーピース。私だけを見ろ」
「え?」
はっと我に返り、魔王を見る。
「そうすれば、何もかも忘れられる……」
魔王に見つめられるうちに、霧生颯真だった記憶が徐々に薄れていく。
「ここで、ともに生きよう。永遠に……な」
魔王の手が僕の頬に触れる。
永遠……か……。それも悪くないな。
めでたし、めでた……くなくない!?




