表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

52/56

音のない世界

天井を突き破った先は、岩でごつごつした、何もない空間だった。空は、どんよりした厚いくもに覆われている。物音は何もしない。時折、風らしき生ぬるいものが通りすぎるだけだ。


不気味な空間だな……。


思わず、辺りを見渡し、足を止めた。


「おお!最終決戦って感じの舞台だねっ!」


「うん……」


ユイナは、槍を持って、スタスタ歩いていく。

この人、どこにいても、テンション変わらないなあ。


「私の真の姿、真の想いを打ち破るとは……さすがは、ラブリーピースだな」


低くて、落ち着いた声が響き渡る。

そこには、黒いタキシードでかっこよく決めた魔王が立っていた。


「魔王……!」


キラキラ輝く堂々としたオーラをまとっている。僕が、いつも見てきた魔王だ。一歩、また一歩と僕に近づいてくる。


「ちょっと! 離れなさ……!」


魔王が、手から黒い波動を出して、ユイナに当てる。ユイナはふらふらとその場に倒れ込んだ。


「ユイナ……!」


ユイナに駆け寄ろうとする僕を、魔王が止める。


「少し眠ってもらっただけだ。2人きりで話がしたかったのでな」


「……そうですか」


それなら、いい。だって、僕も、魔王と、まっすぐに向き合って、きちんと話をしたいと思っていたから。


僕は、覚悟を決めて、拳を握り締めた。


「なぜ、真の姿を見せてくれたのですか?」


さっきまで、見てきたのは、弱々しく、悩みに悩んで、今にも消えてしまいそうな魔王ばかりだった。僕に……ラブリーピースに、求愛するなら、そんな姿、わざわざ見せる必要なんか、ないはずなのに。


「お前なら、きっとわかってくれると思ったのだ。ラブリーピース」


「え?」


「私は、人間も、モンスターも、そのカリスマ性で圧倒してきた。しかし、その裏では、いつも怯えていたのだ」


「はい……それは、よくわかりました……」


「……だが、ラブリーピースと出会い、私は、旅をしながら、弱い自分を克服しようと考えた。しかし、お前はいつも私を超えてくる……」


魔王が僕の手を取り、熱い視線を注いでくる。今までなら、全力で逃げていた。でも、今日は、逃げちゃダメだと思った。だから、僕は、魔王を、1人の人間として、じっと見つめた。


「魔王……」


「その強さと優しさに、私は惚れたのだ」


見つめれば、見つめるほどに吸い込まれそうになる。黒くて大きな瞳……でも、どこか寂しげだ。このブラックホールの奥には、何が隠されているのだろう。胸騒ぎがしたけど、何も言い返せない。


これって、魔王の想いを受け止めてることになるのかな……。


「それでは、案内しよう。楽園へ……!」


魔王がパチンと指を鳴らす。その瞬間に、辺りが歪み始めた。


「あっ……!」


暗闇だったこの場所に、少しずつ緑が生い茂り、光が差していく。


僕らは、どこに向かうんだろう……。


音のない世界で、心臓だけがドクンドクンと脈打っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ