魔王城のお約束を蹴っ飛ばす!
ユイナと降り立った場所。
それは、どんよりとした空に浮かぶ城の前……。
石造りの頑丈な城は、RPGで、最後に出てくる城そのものだった。
「これが魔王城か……」
ごくりと唾を飲む。
ピシャ―――ン!
時折、雷が派手に鳴り響く。
重厚な黒い鉄の扉を前にして思う。
ついに、この時が来た……。
生きて帰れればいいけど……。
はあ……今さらながら、心配になってきた。
「よっしゃあ! テンション上げていこ~!」
ユイナが鉄の扉を蹴破った!
しかも、満面の笑みを浮かべている!
「ひっ……!」
思わず、声にならない悲鳴を上げる。
魔王より鋼の女の方が、よっぽど怖い……!
「ようこそ。私の城へ」
鉄の扉を蹴破るやいなや、魔王の声が聞こえてきた。でも、姿は見えない。
「魔王……!」
城の中は、か細い松明が灯されている。でも、古い調度品が転がっているだけで、モンスターもいない。
彼は、いったい、どこにいるんだろう。
「ついに、私の真の姿を見せる時が来た。その体で、その心で、私の想いを感じるがよい」
ふっと松明が消える。
辺りは暗闇に包まれた。
「ちょっ……!」
「あ~あ。行っちゃったね~」
ユイナが口を尖らせる。
魔王は、私の本当の姿を見せる時が来た……って、言ってた。
あれは、どういう意味なんだろう……。
なんだか妙な胸騒ぎがする。
「ラブリーピース! あそこ見て!」
雷が派手な音を立てる。
でも、そのおかげで、一瞬、光が差した。
そこにいたのは――!
「魔王……!」
でも、様子が変だ。虚ろな目でぼうっと壁を見つめている。
「う……うがあああ!」
そして、一心不乱に石の壁を食べ始めた!
そんなところを食べたら、崩れるよっ!
「うがあああ!」
魔王が叫ぶと、小さいモンスターが上から下から押し寄せてきた! でも、使えそうなやつも混じってる。これは、チャンスだ。
「エターナル・シェフ!」
ピンクのエプロン姿に変身だ!
腹ペコ魔王をお腹いっぱいにしよう!
「ユイナ! モンスターを料理の材料にしてくれる!?」
「おっけ~! そういうの、任せてよね!」
「ラブリーピース☆モンスターチャイニーズフード!」
頭の中で、イメージしたレシピが本になって、ユイナの手に渡る。
「なるほど、なるほど~」
「どうかな?」
「いいね~!」
ユイナが的確に必要なモンスターを料理の材料にしていく。そして、間で出てくるいらないヤツはぶったぎる!
「じゃ、まず、これね~!」
ぽいっと渡されたのは、海藻のモンスターだったもの。そして、ゼリー状の物体。これ、何のモンスターだったのかな……もはや、誰にもわからないよ!
「ラブリーピース☆クッキング!」
目の前に、IHクッキングヒーターと調理器具がひと通り揃った。これなら、いけるぞ!
まず、ゼリー状の物体を鍋に入れて、だしとして煮出す。そして、海藻のモンスターだったものを刻み、煮込む。よし……完成だ!
「わかめスープ!」
お盆の上にわかめスープが置かれる。
魔王らしき人物が壁を食べるのをやめた。
「じゃあ、次に行ってみよ~!」
小麦粉をボフっと渡され、皮を作る。そこに、ウルフの肉(ミンチになってる!)を入れて、包み込む! そして、フライパンでパリッと焼いたら、出来上がり!
「餃子!」
お盆の中心に餃子が置かれる。
魔王らしき人物がこちらに近寄ってきた。
ちょっ……もう少し、待って!
「はい! ラスト~!」
ダチョウサイズのでかい卵をフライパンに入れる!そして、ご飯と何の肉かよくわからないベーコンを入れて、パラパラっと炒める!
「チャーハン!」
炒飯がお盆の上に置かれた。でも、魔王よりも先に、小さな虫型モンスターが寄ってきた。
「君じゃなああああい!」
久しぶりに、勢いで拳が出た!
虫さん、ノックアウト!
「うがあああ!」
腹ペコ魔王に、箸とスプーンを持たせる。
「いただき……ます……」
腹ペコ魔王がモグモグする。
あれ……もしかして、泣いてる……?
「うま……い……」
魔王は微笑み、すうっと消えていった。
その途端に、床がゴゴゴゴと動き出す。
「ゆ、床が動いてる……!?」
そして、上に向かって勢いよく飛び出した!
「ぎゃああああ!」
「お約束な感じだね!」
ユイナは、めっちゃ楽しそう!
でも、僕は、高所恐怖症なんだよおお!




