魔法少女のお約束
ユイナの槍がしなやかに空を切る。
「じゃ、ガンガン行っちゃお~!」
音もないのに、狼がスパッと切れる。
クゥンとか、言う暇もないね……。
狼がかわいそうになってきた……。
「すごい……」
見惚れていたら、1匹の狼が近寄ってきた。
他の狼よりも、ふた回りくらい、大きい!
「あ……!」
しかも、激オコ!
岩が真っ二つに割れちゃう~!
「や、やめてえええ!」
岩が割れたら、一貫の終わりだ。
渾身の叫び。
その瞬間、僕の手元に、ハートのコンパクトが現れた。
「えっ……!?」
何なの! このアイテム!
朝の女児向けアニメ番組みたいじゃん!
僕、男子なのに~っ!
「おっ……! これは……!」
ユイナの声が遠くに聞こえる。
コンパクトが開いて、僕は光に包まれた。
「お約束の……!」
……変身シーン!
「変身シーンの尺は、長めに取ろ~」
「うん。よい子のためにもね~……じゃないっ!」
手袋とブーツ。
白いブラウス、紺のスカート。
金髪ツインテール、赤いリボン。
メイクはナチュラル。
もちろん、アクセサリーも忘れずに!
「あなたに、愛を。この国に、平和を」
も~……こうなったら、やるしかないっ!
ピースでちょっぴり顔を隠して、
「魔法少女・ラブリーピース!」
きらきら~ん☆ウインク!
決まったああああ!
「名前、ダサ~っ!」
「ウインクしてる横で興ざめしないで!」
目の前の巨大狼が、首を傾げてる。
「わ、ワウ……?」
これ……マジで呆れてるやつじゃん。
「ご、ごめん……スカート、短すぎるよね……」
膝上丈のスカートを掴んで、必死に伸ばす。
すいません、すいません……。
って、僕、誰に、謝ってんのおおお!?




