スペシャルオーロラタイム!
白い羽でふわりと浮かび上がる。
さて、まずは、どこに行こうかな。
「わあああい!」
振り向くと、スライムたちが全員集合していた。みんなが、ポヨォォォンとしていて、とっても可愛い。
「君たちも一緒に来てくれるんだね」
スライムたちが、返事をする代わりに、思いっきり飛びはねる。
そして、僕を導くように、進み始めた。
「いいよ。僕は、どこにでもついていくから」
街の大通りで滑り、公園で子どもたちと戯れ、屋根で猫とちょっぴりケンカする。
街の人たちと滑るたび、氷のラインが光に変わり、雪を溶かしていった。冷たさではなく、春の訪れのようなぬくもりが人々の心にも届いているのを感じる。
「ラブリーピース……なんて、美しいのでしょう……」
司会者がうっとりとする実況が聞こえてくる。
「ありがとうございまあああす!」
その横を、スライムたちと一緒にイナバウアーをしながら、通りすぎる。
「ハッハッハ。アンタ、いいノリしてるねえ」
「度胸もあるわねえ~」
怖いと思っていた蛍光色カラーのおばあちゃんたちが、僕の滑りを見ながら、豪快に笑う。
「一緒に踊りましょう!」
「そうね。それが、いいわ」
僕の声を聞いたおばあちゃんたちが、リンクに立ち、くるくると回り始める。足元が心もとないぞ。
ちょっぴり心配だけど……楽しそうだから、いいか。あとは、自己責任でお願いしま~す!
そこに、スライムたちが混じって、ポヨポヨとジャンプする。
「アンタたち、よく頑張ったね」
アナスタシアが、優しい笑顔で、スライムたちを褒める。
「わあああい!」
スライムたちが、嬉しそうに飛びはねる。
すごい……! これが、真のスポーツマンシップだ……! 感動して、泣きそう。
「くっ……! この私が負けるだなんて……」
魔王が、アナスタシアとスライムたちの横でゴニョゴニョ言っている。
「魔王。楽しく踊りましょう」
今という時は、今しか訪れない。
見かねて、手を差し伸べた。
「ラブリーピース……!」
魔王が僕の手に自分の手を重ねようとした瞬間――。
「いぇ~い!」
ユイナが割って入った。魔王の頬に拳が決まる。
「ぐはあっ……!」
魔王がよろめく。痛そう……。
でも、ユイナにその自覚はないんだろうな。
「寒かったけど、ようやっと暖まってきた~!」
いつの間にか、ユイナの隣には、大きなストーブが置いてある。相変わらず、ちゃっかりしてるな。
「みんな、楽しそうでよかったよ」
街の人々たちの表情が、涙や笑顔で少しずつ解けていくのがわかる。
……これが、僕の力……なのか。
「わあああい! わあああい!」
リンクにいたスライムたちが僕のところへ戻ってきた。よく見ると、小さな光の玉のようになって、消えかけていた。
「よし。最後まで、美しく決めるよ」
スライムたちと一緒に、大空に羽を広げて、舞い上がる。
「ラブリーピース☆スペシャルオーロラタイム!」
光の粒が街全体に降り注ぎ、オーロラのような美しい光景が広がる。街の人たちは、胸に手を当てて、みんな穏やかに、優しく笑っていた。
「ばいばあああい!」
その光景を見たスライムたちが、星のようにきらきらと輝く。
「うん。ばいばい」
そして、流れ星のように、消えていった。
素敵な演出をありがとう。
僕は、スライムの想いを胸に、地上へ降り立った。
「ううっ……泣けてきた~っ!」
「世界には、こんなにも優しくて、温かい光があるということなんだよ」
ユイナの目も、アナスタシアの目も潤んでいる。満足してもらえたみたいで、よかった。
「くだらぬ希望の光だ……だが、それが、お前の魅力でもあることを、私はそろそろ認めねばならぬようだ」
魔王が、僕を睨み付ける。
でも、僕は、怯まない。
もう、可愛いだけのラブリーピースじゃないから。
「また会おう。ラブリーピース」
魔王は捨てゼリフを吐いて、去っていった。
「ちょっ……! 魔王……!」
ユイナが追いかけようとした時、魔法の靴が光り輝き、コンパクトの中に収まった。これで、4つの力が全部揃ったぞ。
――だから、僕にはわかるんだ。
「追いかける必要はないよ」
4つの力が集まり、目の前に、魔王城への扉が開かれた。
「僕が、直接、彼と話をしてくるから」
「よっしゃあ! じゃあ、私も一緒に行くよ!」
「ユイナ……!」
「大丈夫! お話してる時は、大人しくしとくからさ」
「……ありがとう」
これが、最後の戦いだ。
僕とユイナは、魔王城へと足を踏み入れた。
「頑張ってなあああ!」
アナスタシアと街の人たちの声援を、一身に、受けながら。
――大丈夫。必ず、やり遂げるから。




