心の赴くままに、舞い踊ろう!
司会者が魔法おばあちゃんたちから、審査表を持って、素早く計算している。
その間も、じとっとした圧が伝わってくる。
「素晴らしかったぞ。ラブリーピース」
寒いのか、地味コート姿に戻った魔王が話しかけてきた。手には、ホットワインが入ったグラスを持っている。
「あ、ありがとうございます……」
「……だが、勝つのは、この私だ」
魔王が髪をかきあげる。すでに勝ったみたいな余裕のある顔をしている。
いや、待って!その自信、どこから来るの!?
あんなに失敗してたのに!
「それでは、結果を発表します!」
あ。計算が終わったみたいだ。おばあちゃんたちが、互いに頷き合っている。
「審査員は、勝者と思われる組の札を上げなあああっ!」
アナスタシアの号令のもと、蛍光色カラーのおばあちゃんたちが、手元の札を上げていく。
その結果……。
「5人全員がラブリーピース……!」
どこからともなく、クラッカーが鳴る音が聞こえる。街は、祝福ムードに包まれた。
「やったああああ!」
思わず、ガッツポーズしちゃった。
努力が報われたんだ……!
そんな余韻に浸る間もなく、足音が近づく。
「すごいよ! ラブリーピース!」
ユイナが人混みをかき分けて、僕に抱きついた! いや、これは……抱きついているっていうか……。
「ユイナ! 首を絞めないで!」
僕は、もう、死にたくないよ!
だって、1人でも多くの誰かを笑顔にしたいから!
「わあああい!」
――ポヨォォォン!
その上から青いスライムたちが降ってきた!
「ぎゃあああ!」
さすがに立っていられず、僕は、尻餅をついた。はあ……道が凍ってるから、体にダイレクトに響くなあ……。
「審査が不公正だ!」
そんな祝福ムードの中、珍しく、魔王が怒鳴った。いやいや。試合は、スポーツマンシップに乗っ取ってやろうよ。
アナスタシアが魔王を睨みつける。
「アンタ、私の審査にケチつけるっていうのかい?」
「……ならば、審査表を見せろ!」
アナスタシアが鼻で笑って、魔王に審査表を突き付けた。
「そんな……」
魔王が力なく座り込んだ。赤いスライムたちが、しょんぼりしている。よっぽど、悪かったみたいだ。
「これが証拠さ。私たちは、公平に審査を行っただろう?」
蛍光色カラーのおばあちゃんたちが、そうだ、そうだと加勢する。密集して、抗議すると壮観だな。
でも、魔王も負けてない。
「贔屓だ!この私がもう1度、踊ってみせよう」
スタスタと1人でリンクへ向かっていく。
ちょっ……! 勝手にエキシビションしないでよ!
そう言おうとした時――。
「ダメええええ!」
赤いスライムたちと青いスライムたちが、ほぼ同時に魔王にアタックした。
「ぐはあっ……!」
スライムはポヨォォォンとしているとはいえ、数が揃えば強い。合体してなくても、威力は抜群だ。魔王がその場に倒れ込む。
その隙に、アナスタシアが手際よく、スケート靴を履き替えさせた。
え、もしかして、この人、魔法の靴で踊ってたの……! ?
あなたのスポーツマンシップって、何……!?
「ラブリーピース。これで、もう1曲頼むよ」
アナスタシアが笑顔で魔法の靴を差し出す。
「ありがとうございます」
魔法の靴を受け取り、その場で履き替える。
靴を履いた途端に、僕の体は温かい光に包まれた。そして、再び、地面に降り立った時には、背中に、白い羽が生えていた。
「エターナル・フィギュアスケーター!」
この姿になって、やること……それは、街の人を巻き込んで、笑顔で楽しく舞うことだ。
氷の上だけでなく、屋根の上でも、通りの角でも、笑顔が弾けるように。
「魔法少女様のエキシビション、開幕~っ!」
「……うん!」
さあ!みんなで踊ろう! 心の赴くままに!




