いつもより、多めに回っております!
アイスダンス大会当日。
人混みをかき分けながら、僕らはアナスタシアの街の広場に着いた。
広場の中央には、大きなスケートリンク。
後ろには、アナスタシアと強面のおばあちゃんが4人。アナスタシアの蛍光イエローをはじめ、全員蛍光色カラーの服を着ている。
あの人たち、僕より魔法少女っぽいな。
いや、魔法おばあちゃんか。
司会と書かれた席に立つのは、銀縁メガネをかけた、ひょろっとした色白の中年男性。
「そ、それでは、チーム魔王とチーム魔法少女のアイスダンス大会を始めます……!」
緊張しているのか、声が裏返っている。
後ろのおばあちゃんたちの圧がやばい!
「おお。今日も、美しいぞ。ラブリーピース」
そんな中、通常運転の魔王が近寄ってきた。
さすがに、今日はスパンコールがたっぷり入った紺の衣装で、バッチリ決めている。今までで、1番魔王っぽい格好だ。
「あ、ありがとうございます……」
かくいう僕は、ミニスカサンタ。
肌色のタイツははいてるけど、やっぱり、スースーする……! 寒いよ~!
「チーム魔王は、スタンバイしてください」
司会者がなんとか声を絞り出した。
魔王と赤いスライムたちがリンクの横に集まる。そして、円陣を組んだ。
体育会系の部活でしか見たことないやつだ。
青春だな~……。
「赤のスライムたちよ!」
「はい!」
「今宵はラブリーピースと甘い夜を過ごす!」
「はいっ!」
「必ず、てっぺんを取るぞおおお!」
「はあああい!」
魔王と赤いスライムたちが、リンクへ飛び出す。
……っていうか、僕と一夜を明かす気、満々じゃん! やめてよ~!
「……ミュージックスタートです!」
司会者の声とともに、優雅な音楽が流れる。
「はああああ!」
魔王が、スライムを両腕でつかんで、高速独楽みたいに、回転させる。
「はああああ~~!!!」
ゴリゴリ……!
スライムたちが回転するたび、物騒な音が響き渡る。もはや、騒音。
「す、素晴らしい、破壊力……!」
「ふん。技術点は悪くないね」
司会者の隣で、アナスタシアがコメントする。
こ、こっちも迫力満点だ……!
「チーム魔王、スライムを投げ上げました!」
そして、その勢いで自分もジャンプ!
スライムが空中で回転しながら合流!
「これは、合体ジャンプ……です!」
チーム魔王が着地! でも、一番後ろのスライムがちょっとよろめいた。
「着氷が乱れたね。減点だ」
アナスタシアが鼻息荒く解説する。
後ろのおばあちゃんたちも、フンフン言ってる。この人たちの前世は、戦国武将に違いない。
「新しい技に入ったようです!」
魔王が、スライムを何体も縦に積んで高速スピンを始めた。すごい速さだ。
でも、遠心力でスライムがバラけてしまった。
「お~っと! これは、大変だ!」
会場から落胆する声が聞こえる。
でも、赤いスライムたちは、キビキビと動き、ちゃんと元の形に戻って整列した。
さすが、軍隊……。
「ここで、最後の大技だ……!」
再び、魔王と赤いスライムたちが全力で回り始める。
ゴリゴリ……!
え? 何の音……?
「なんということでしょう!氷が削れて模様が浮かび上がっています!」
確かに、氷上に、「スライム曼荼羅」みたいな芸術作品が完成してる。
……っていうか、こんな技、アリなの!?
「これぞ、氷上の究極美だっ……!」
「はいっ……!」
魔王とスライムたちが芸術品を囲み、ピタっと動きを止める。
いやいや、これって、反則じゃ……。
「ふん。独創性と発想力があって、いいじゃないか」
アナスタシアをはじめ、おばあちゃんたちがパチパチと拍手する。つられて、観客も拍手する。
ええっ!? いいの!?
「スケートは根性! 限界突破だ!」
「はいっ!」
魔王とスライムたちが、拍手の中、リンクを降りていく。
「チーム魔法少女、準備をお願いします」
司会の声が聞こえてきた。心臓がバクバク音を立てるせいで、近いのに、遠く感じる。
その時――。
ポヨォォォン!
青いスライムたちが目の前で跳ねた。
「ラブリーピース! 楽しもう!」
ユイナが練習の時以上に、着飾りまくったスライムたちは、ただ跳ねているだけなのに、とても楽しそうだ。見ている僕まで、ワクワクする。
「そうだね」
ここで、立ち止まるわけにはいかない。
僕は、スケートリンクへ足を踏み出した。




