だって、時代は令和だし
青いスライムたちの視線の先には、赤いスライムたちがいた。
魔王の前に、きっちり横一列で並んでいる。
「お前たち! いいか!」
「はいっ!」
赤いスライムたちがキビキビと答える。
そして――
魔王が、黒いロングコートを脱いだ――!
中から現れたのは、練習用の黒タイツ。
首から下、完全装備。マジで、ガチなやつだ。
「スケートとは根性! 限界を突破するものだ!」
「はいっ!」
魔王がリンク中央に立つ。
赤いスライムたちが、その周囲を同じ間隔で囲む。
「さあ! 回れるだけ回るのだ! 華麗に! そして速く!」
「はい……っ!」
くるくる……くるくる……!
見ているだけで目が回りそうだ。
一匹、また一匹と倒れていく。
それでも魔王は止まらない。
「立つんだスライム! 我らの団結力を見せつけるのだああ!」
「は、はいっ……!」
ボロボロになりながら、再び回り始めるスライムたち。
……うわ。僕なら速攻で訴えるね。
「スパルタだねえ……」
ユイナがしみじみと言う。
いや、これ練習じゃなくて修行。
指導じゃなくて……体罰だよ?
青いスライムたちも、げんなりしてる。
……なら、僕らは――
「……逆をやろう」
だって、時代は令和だし。
……ここが、どの時代かは知らないけど。
「え?」
ユイナが目をぱちくりさせる。
まさか、体罰やるつもりだったの?
「楽しく、平和に踊るんだ。指導じゃなくて、協力してもらうんだよ」
青いスライムたちの表情がぱあっと明るくなる。
「わああああい!」
そして、いつもよりも高く飛ぶ。
ちょっと、青空と同化してるよ!
「なるほど~。そういうことなら、私の出番だね」
ユイナがにやりと笑う。
「……何するつもり?」
嫌な予感しかしない。
だって、この人、めちゃくちゃ体育会系だし。
「かわいくなるように、モリモリにデコっちゃお~」
珍しく平和な方向性の答えが返ってきた。
「う、うん……?」
一応うなずいたけど、たぶん平和じゃない。
「……ってことで、材料買いに行ってきま~す!」
ユイナが爆速で街へ走っていく。
あ~あ……行っちゃった。
「……ラブリーピース?」
ため息をつくと、スライムたちがきゅるんとした瞳でこちらを見る。かわいい……。
「みんな、一緒に頑張ろうね」
「わあああい!」
僕は意を決して、スケートリンクに立った。
ポヨォォォンと跳ねるスライムたちとともに――。




