世界は自分を中心に回ってる?
スライムだけでなく、蛍光色おばあちゃん……ことアナスタシアまで、壁にハメてしまった。
粘土まみれの怒り心頭の顔で、アナスタシアが近づいてくる。
「アンタ、どうしてくれるんだいっ!? この洋服のスパンコール、1粒でも、高いんだよ!?」
「す、すみま……」
「謝ってる暇があったら、さっさと弁償しな! 私しゃ、気が短いんだよっ!」
うわあ! ステレオタイプのクレーマーだ!
絶対、自分を中心に世界が回ってると思ってるでしょ!
……と、気の小さい僕は言えない。しょぼん。
「ラブリーピースは、悪くないよ」
ユイナが堂々とアナスタシアに言い放つ。
「はあ!? なんだって……!」
「だって、爆走する方が悪いに決まってるじゃん!」
「アンタに、私の何がわかるっていうんだい!?」
「な~んにも、わかりませ~んっ☆」
開き直ったああああ!
蛍光色おばあちゃんにいい!?
「ふん。相変わらず、肝が据わってるね。ユイナ」
「と~ぜんっしょ! それより、スライム相手に激おこしちゃうなんて、どうしたの?」
え? いがみ合いしてたと思ったら、普通の会話になってる! この人たちのコミュ力、どうなってんの!?
「あいつらは、私の魔法の靴で、街の周りを滑ってんだよ」
アナスタシアが舌打ちしながら、僕を睨み付ける。今こそ、ラブリーピースとして、戦う時だよね?
「そうなの?」
「ああ。御者や旅人の通行の邪魔をするせいで、物流が滞って大変なのさ」
「じゃあ、靴を取り返して、なんとかできたら、弁償しなくていい?」
「ああ。やれるもんなら、やってみな」
――交渉成立!
カランコローン……。
街の平和な鐘の音が、聞こえる。いや、この音は、ゴングだ……!
「……それで? スライムは、いつ、どこに出るの?」
ユイナがにっこりと笑う。
いつもみたいに、ぶっ飛ばすとか言わない分、なお、怖い。
「1時間おきに、あの湖で滑ってるよ。待っていれば、そのうち、出るはずさ」
アナスタシアの指差す方に、豆粒大の木々と湖がある。はあ……この雪道をまだ歩くのか……。
「わかった! この魔法少女・ラブリーピースがちゃちゃちゃっと解決してくる!」
「えっ……!?」
ユイナがポンと僕の肩の上に手を置く。
結局、僕に丸投げなの!?
……っていうか、ユイナが「ちゃ」と言うたび、僕の寿命は縮まってる気がするんだけど!
「ふん。せいぜい、あがきな」
アナスタシアが鼻で笑って、去っていく。
「あの人、本当に、味方なんだよね……?」
魔王よりも、貫禄があるけど……。
むしろ、黒幕ってヤツなんじゃ……。
「うん。実力がないと、味方と認めないタイプだけどね~」
「僕たち、見下されてるの……!?」
「そういうこと。だから、堂々と勝負で認めさせちゃえばいいんだよ~!」
「ポジティブ……!」
「ラブリーピースが、どうしても、あのゴテゴテの服の弁償がしたいっていうなら、別だけど」
「それだけは、勘弁してっ……!」
「じゃあ、行くしかないね~!」
ユイナがキャッキャと楽しそうに笑う。はあ……僕は全然楽しくないんだけどなあ……。




