お断りしたつもりなんだけど
この世の終わりのような地鳴りが聞こえる。
そんな中、筆を持ち、祭壇の前の地面に立った。
書く場所も、文字も、わかってる。
この筆が……導いてくれる……!
「一筆入魂! 愛と平和をしたためる!」
筆の先から、黒と虹色の墨が混ざったような光が放たれる。
ひとつ、ひとつ、丁寧に。
みんなを守る……!
想いを込めて……!
書けた!
「エターナル一文字――『絆』っ!」
巨大な墨文字が地面から浮かび上がり、遺跡を覆うように広がっていく。
崩れかけた壁や天井を、その「絆」の力が糸で縫うように支え直していった。
「文字が、遺跡をつなぎ止めている……!」
サラサが、これは世紀の大発見だ……と言わんばかりの顔をしている。
確かに、あんなに響いていた地鳴りが止まってる。崩壊したところも、修復されて、元通りになっていた。
「すごい!筆の力とラブリーピースの思いが一体化したんだね!」
ユイナがキャッキャと笑う。
はあ……とりあえず、生きてるからいいけど。
「……その棒、そうやって、使うんスね」
振り向くと、チンピラゴーレムの体が光に包まれている。
「棒じゃなくて、筆だからな」
サラサがスパッと言い切る。棒だと思われてたんだ……この筆……。
「勉強になったっス……」
「わかる~! 私も、賢くなった~!」
ユイナがキャッキャと笑う。
「また会いましょう……姉さんたち……」
チンピラゴーレムは、満足げに、すうっと消えていった。
……やれやれ。
「ふっ。私の大いなる愛も、真なる友情の前には霞む……か」
魔王が髪をかきあげる。白いシャツの隙間から胸襟がチラ見えするスタイルだからか、いつも以上に色っぽい。
「はあ……」
どこに視線を合わせたらよくわからないな。
……っていうか、そんな服、着てこないで!
「次は、より強き愛の詩を携えて挑もう」
「わかりました。その時には、全力でお応えします」
否あああああ……ってね。
「ああ……私の最高傑作の詩を目にした時の反応が、楽しみでたまらないよ」
魔王がうっとりとした目で、僕を見つめる。
……もしかして、また、肯定的に捉えられてる!? この人、どんだけ、ポジティブなの!?
「あ、あの……」
愛の詩、いりませんと言おうとした時――。
魔王がざざっと祭壇を奥へ押し込んだ。
そこから出てきたのは……!
隠し通路……!
「ええっ……!?」
そんなカラクリ、どこで、知ったの!? びっくりだよ!
「また会おう!ラブリーピース!」
魔王が颯爽と去っていく。
……じゃなくて!
お断り、言いそびれちゃったよ!
「よ~し! これにて、一件落着ぅ~!」
「……ということは、宴ですね!」
ユイナとサラサがウキウキしている。普段のテンションは正反対なのに、こういう時は、気が合うんだな……。
虹色の光をまとった筆をコンパクトにしまいながら、ため息をつく。まあ、いいか。これで、3つ目の力が集まったし。
「フーマ!ご飯と笛、よろしく~!」
「ついでに、会場につける垂れ幕も準備しておいてくれ」
「……はい?」
この人たち、いったい、どこで宴会するつもりなんだろう……。
はあ……魔法少女に平穏は訪れそうにないなあ。




