言葉攻め
魔王が爽やかな笑みを浮かべて、手を差しのべている。
やばい……お断りしたはずなのに、できてない。
でも、返事をしたことで、手紙の山は消えた。そこは、満足してもらえた……のかな。
「よし。ラストスパートをかけるぞ」
サラサがぼそっと呟く。
「えっ!?」
このタイミングで!?
それって、お嫁に行きますって、言ってることにならない!?
「おっけ~!」
ユイナが満面の笑みで答える。
な、何が……?
僕には、さっぱり、わからないんだけど。
「ちょっと、マイク、借りるね~」
呆然としてたら、ユイナが僕からマイクをもぎ取った。何するつもりなの……!?
「こうして、魔王とラブリーピースはああああ!」
キュイイイン!
この……不快音……まだ、続くの……!?
「ぐおおおお!」
ゴーレムが、不快音に必死に耐えてる……!
その間に、こそこそとサラサが進み始めた。
「どうした!ゴーレム!」
魔王が慌てふためく。僕どころじゃないみたいだ。
サラサが、ちらりと横目で見ながら、物音なく、ひっそりと歩みを進める。
「夫婦となりいいい!」
ユイナの言葉攻めは続く。
効果はバツグンだけど、魔王と夫婦にはなりたくないよおおお!
「しっかりするんだ……!」
「む、ムリッス~! 俺、デカイ音、ダメなんスよ~!」
ゴーレムが苦しんでいる。
こんなに立派な体なのに、大きな音はダメなんだ。見た目に反して、繊細だなあ……。
「末永あああく!」
よし! 魔王とゴーレムを追い抜いた!
――その時。
魔法の筆が、魔王の手から離れ、遺跡の奥に見える、祭壇へ移動した。
「幸せに、暮らしましたとさ」
ユイナがゴーレムに向かって、かわいく投げキッスする。
ゴーレムが、ぽっと顔を赤くした。
「い、いぇ~い! め、めでたし、めでたし~ッス!」
え? ゴーレム、こんな怖いお姉さんが好みなの? もしかして、ドMなのかな……。
「まだ、めでたしではない! 行け! ゴーレム!」
魔王がムチをしならせる。ガチ怒な感じが伝わってきて、ちょっと怖い。こちらは、ドSみたいだ。
「ゴーレム、わかってる~!」
ユイナが、笑顔で、ゴーレムに手を振る。
その間に、サラサがスピードを上げる。
「フゥ~!」
ユイナに惚れたゴーレムが、全力で駆け寄ってくる。某映画にも、岩の塊から逃げるシーンは、あった。つまり、ラストスパート!
「ふっ。女も、たまには、役に立つな」
ただ、違うのは、その岩の塊の上に、某考古学者も乗ってること!
「それ、違う意味で、失礼だからね」
ユイナの言う通り、確かに、失礼。
今、全人類の女子を敵に回したね。
「スピードを上げるぞ……!」
サラサが灼熱の脚で床を蹴る!
道が赤く燃え上がる!
「しっかり掴まれ!」
その横から、魔王とゴーレムが疾走!
「まだ終わらぬ! 愛こそが力だ……!」
ゴールの祭壇が見えてきた!
筆がふわりと浮かび、光を放って「勝者」を待っている。
「筆は我が手に!」
魔王が筆に手を伸ばす。
「負けない!」
僕も、負けずと手を伸ばす。
「いけ~っ! ラブリーピース~っ!」
ユイナの声援が響き渡る中、サラサとゴーレムが祭壇に向かって、突っ込む。
そして、最後の瞬間――。
僕と魔王は、同時に、祭壇へ飛び込んだ……!




