それは、イエスかノーか
コンクリートロードを無事に通過!
再び、ガンガン行こうぜ女子たちが、ゴーレムと魔王に迫っていく。
「魔王!もう逃がさないんだからね!」
ユイナが槍を構える。魔王すら、叩き落としそうな勢いだ。でも、魔王も負けてない。
「それでは、この筆で、愛を記そう」
魔王がズボンのポケットから魔法の筆と便箋を出す。
な、何を書くつもりなの……!?
「ヒュー、ヒュー! 激アツっすね!ボス!」
チンピラゴーレム、うるさい!
みんな、サラサの筆をなんだと思ってるんだ……!
「我が愛の筆跡に溺れるがいい!ラブレター・ストーム!」
魔王が唱えると、空中にくずし字の手紙が空から降ってきた。手紙の形は、赤いハート。僕たちの目の前に、どんどん積まれていく。気づけば、サラマンダー姿のサラサと同じくらいの高さになっていた。
もう……愛が重いんだからっ……!
「これ……どうするんだ?」
ユイナが、そのうちの1枚を開く。
「……なんか、内容がやばいんだけど!」
僕も、適当に、手に取ってみる。
「初めて出会った時から、君の瞳に恋してる」
手元から手紙が消える。
……これ、全部読まないとダメなの?
「永遠に愛してる、今夜会おうだって」
ユイナが読んでも消えない。つまり、この量を、僕が1人で読めと……。
「う、う~ん……」
このままじゃ、結婚式、終わっちゃうよ……魔王……。
「いっそのこと、返事を書いたらどうだ?」
サラサが冷静に提案する。
確かに、それ、いいかも。
「あなたの愛は、いりませ~んって?」
ユイナがあっかんべえする。
いや。それだと、逆ギレされて、刺されるような気がするな……。
「じゃあ、どうする? また引き離されるぞ」
気づけば、魔王とゴーレムは、豆粒のような大きさになっている。まずい……! 結婚式へのカウントダウンが始まる……!
「仕方ないなあ……たまには、僕もひと肌脱ぐよ……」
「え? ここで、脱ぐの?」
「違~う!」
はあ……ユイナに戦闘以外のことをやらせちゃいけないな……。
僕は、覚悟して、深呼吸をした。
「ラブリーピース☆ビッグ!スピーカー!」
魔王とゴーレムの前に巨大なスピーカーが立ちふさがる! 僕は、手にマイクを持った。
「魔王様あああああっ!」
最大音量で、腹の底から叫ぶっ……!
キュイイイイ――――ン!
マイクとスピーカーが向き合った時に、出てしまう、あの不快音が、遺跡中に響き渡った。
「ぐおおおお!」
ゴーレムが怯んでいる。
もしかして、意外と繊細な子だった?
でも、もうちょっと、頑張って!
僕も、頑張るから……!
「私なんかを、こんなに想っていただき、ありがとうございまあああす!」
屋上から想いを叫ぶテレビ企画。
まさか、こんなところで、やることになるとは……。でも、盛り上がること、間違いなし……。
シィ――――ン。
あれ? 盛り下がってる?
「それは、イエスなんだ? ノーなんだ?」
サラサが冷ややかな目で僕を見ている。
「文脈的には、ノーが続くやつだよね?」
ユイナが首を傾げる。
そうなんだけど……。
「おお! ありがとう!ラブリーピースううう!」
魔王の明るい返事が聞こえる。
「あらら~。カップル成立しちゃったね~!」
ユイナがキャッキャと楽しそうに笑う。
誰にも、伝わってないっ……!詰んだあああああ!




