着せ替え人形のフーマくん
小舟で移動して、たどり着いたのは、ひっそりとした湾の奥にある小さな個人商店だった。
外観はごく普通なのに――なぜか店内は、水着だけが異様に充実している。ビキニ、スクール風、競技用……棚という棚がカラフルな布で埋め尽くされていた。
「よっしゃあ! これなんて、どうだ?」
ジャンがきらきらした目で、真っ赤なビキニをひらひらと掲げた。
上も下も、布面積が……小さすぎる!
「攻めてるね……」
魔法少女の戦わせ方、なんかおかしくない? なんでこうなっちゃうのかな。
「こういうのはね、思いきりが必要なんだよ」
ユイナが手にしているのも、白いフリルが山ほどついた超際どい水着だった。
ビキニじゃなければいいってものじゃない!
「はあ……」
「そりゃあ、もう崖から飛び降りるような気持ちでさ!」
女王が女王なら、精霊も精霊だな。
……この国、大丈夫だろうか。
「これなら、どうだ?」
ジャンが次に持ってきたのは、大きな花柄のビキニ。
いや、だから布の面積が小さいってば!
「これなら、パラオもあるから! 大丈夫!」
ユイナが同じ柄の長い布――スカートのようなもの――を持ってきた。
……っていうか、この布、どうやって使うの!?
「なるほど……ヒラヒラで見えそうで見えないところを誘惑するんだな」
ジャンが興味深そうにパラオをまじまじと見つめる。
「そゆこと~! ってことで、これでいい?」
ユイナがにこっと笑って僕に差し出してきた。
「うん……」
ダメだ。この2人、変なところで意気投合してる。
突っ込むのも疲れたので、僕は悟りを開くことにした。
お会計を済ませて店を出ても、このテンションは続く。
「うおおお! 俺、燃えてきた~!」
「次は、何にする~?」
「アクセサリーもいいよな」
「いいね~!」
ジャンもユイナも楽しそうで、なんだか羨ましい。
……いや、僕、着せ替え人形じゃないんだけどな~。




