パクッとな
その途端、ふと何かがよぎった。
何をやっても、ダメな僕なんか、父さんと母さんは、いらない。むしろ、ホッとするはずだ。
そうか……。
僕は、ここで、いなくなってしまえばいいのか……。
「颯真! 早くしなさい!」
ドンドンと扉を激しく叩く音が聞こえる。
――あちらには、もう行けない。
くるりと向きを変え、ベランダへ出る。眼下には、東京の密集したビル群、せっせと動く車や電車、そして、スタスタと歩く人たちが見えた。
僕も、今から、あの中の1人になるのか。
そう思って、ベランダから身を乗り出した時――。
ドォォォン!
僕の視線の先に、古びた白い扉が出現した。空中でふわふわと楽しそうに飛んでいる。
「え……」
扉は、僕を歓迎するように、パカッと開く。そして、きらきらと輝き始めた。
なんだろう……この木製の扉……。
時折、ひゅうっと吹き込む風が、僕を呼んでいるような気がしてならなかった。扉を覗き込むと、風はどんどん強くなっていく。
「な、何……!?」
だんだん、ベランダの風の強さが台風並みになってきた。もう立ってなんかいられない。まるで、風に足をすくわれたように、ふわっと体が宙に浮いた。
「うわあああ!」
しまった! このままでは、街に落ちる。通行人にぶつからないようにしなきゃ……なんて、思ったのも、束の間。
吹っ飛ばされた僕を、扉がパクッと飲み込んだ。
僕は、どこへ行くんだろう……。
その瞬間、目の前が、真っ暗になった。




