ラブリーピース☆クッキングショー!
目の前には、熱気に包まれた満員の観客。
精霊グエルの領地を賭けた一大イベント――ラブリーピース☆クッキングショーの開幕だ!
「さあ! 寄ってらっしゃい、見てらっしゃい! 魔法少女ラブリーピースのクッキングショー、始まり、始まり~っ!!」
司会を務めるユイナの派手な声に合わせて、会場は大盛り上がり。
……やばい。緊張する。へんな手の汗を握ってしまう。
でも、もう始まっちゃったものは仕方ない。
こうなったら――やってやろうじゃないか!
僕は、スライムだったであろう、ぷるぷるの塊を手に取った。
「まずは前菜、スライムのテリーヌです!」
鍋の中で、ぷるぷる震えるスライムの塊。火にかけると、透明感が増して宝石みたいになる。
刻んだエルフ茸と香草を加えて素早くかき混ぜ――型に流し込む!
「跳ねるかな……」
ピシッ! 心配していたら、冷たい感触が頬を直撃。観客席から笑いが起きる。
ユイナがノリノリで実況を入れた。
「おっと〜! 早速スライムの逆襲だ〜〜!」
……笑いも演出のうち、ってことにしておこう。
よし! 次に行くよ!
「続いては、魔眼の主・バジリスクのコンソメ!」
バジリスクは目が合うと石になる危険な魔獣……だけど、今となっては、もはや、ただの肉! ユイナ、すごい!
僕は、ありがたく、骨と肉を丁寧に大鍋へ入れる。
香味野菜と一緒にじっくり煮込むと、鍋の中が黄金色に輝き始めた。余計な脂を丁寧にすくい――完成!
「これが……黄金の一滴、バジリスクのコンソメ!」
湯気の向こう、魔王が目を細める。
観客からも、ため息が漏れた。よし、手応えアリ!
次は……サハギンだったであろう白身魚を使っていこう!
「魚料理はサハギンのポワレ! 皮目パリッと仕上げます!」
フライパンにオイルを引き、背身をのせるとジュワッと音が響く。
皮目を押さえ、黄金色になるまで焼き上げ、裏返してバターを回しかける。
「サハギンは怖い顔してるけど、身は超上品なんですよ〜!」
ユイナの実況を聞きながら、ふと考える。
あれ? そういえば、サハギンって、体はヒトじゃなかったっけ……?
いや。せっかく食材になってるんだから、細かいことは気にしないことにしよう。
気を取り直して、白ワインと深海藻でソースを作る。香ばしい香りが会場を包み、観客がざわめいた。
「こ、これは、貴族の宴でしか食べられない一品……!」
ユイナの実況が聞こえると、観客席から拍手が起こった。
さあ。ついに、メイン料理のターンだ!
鍋に、ひときわ大きな肉塊を放り込む。
そして、ガスコンロの火を強めにかけた。
「メインは、ベヒーモスの頬肉! 普通は半日煮込むところを――」
ユイナがじっと僕の方を見る。
ああ……そういうことね……。
「ラブリーピース☆ショートタイムクッキング!」
僕は、ユイナの意図を汲み取って、いつものように唱えてみた。
鍋の中で時間が圧縮され、硬い肉がみるみる柔らかくなっていく。
魔法って、こんな使い方もできるのか……。
ん……っていうことは……。
「それなら、魔法で全部、作ったらいいんじゃない……って、思った、そこのアナタ! この料理は、愛を込めることに意義があるのです!」
今の実況、明らかに僕の心の声を代弁したよね!? 魔王が得意気に笑ってるよ!
「はあ……」
スプーンを入れると、すっと切れるほどトロトロ。赤ワインと肉の香りが会場中に広がった。
観客が最高潮に盛り上がっている。それなら、まあ、いいことにしよう。
「最後はデザート! ユニコーンミルクのパンナコッタ!」
ほんのり甘く光るミルクをゼラチンと書いてある粉と合わせる。
そして、冷やし固める……ところだけど、ここには冷蔵庫がない!
それなら、やろう!
「ラブリーピース☆アイスクッキング!」
液体だったパンナコッタが一瞬で固まる。
便利だな……。助かる。
「さあ! 仕上げだよ~!」
上には虹色の果実と、ホワイトチョコで作った“角”を立てた。光の魔法を軽くかけると、皿全体がきらきらと輝く。
ユイナが叫ぶ。
「出ました〜〜!! 伝説のスイーツ、ユニコーン・パンナコッタ!!」
歓声が爆発した。僕は、ちょっとだけドヤ顔する。
全5品が出そろったテーブルは、まるで魔法のフルコース。
これが、まさか、モンスターの肉塊と骨だったなんて、誰も思わないだろう。
「それじゃ、最後に、も~っと、おいしくなるように、おまじないをしましょう!」
「えっ!?」
ユイナ! 僕、その演出は聞いてないよ!
でも、なんとなく、わかっちゃうんだよね。
この頭に乗ってるコック帽が伝えてくるんだよね。
僕は、覚悟を決めて、深呼吸した。
「エターナルデリシャスシャワー!」
ステージに、きらきら光る優しい光が降り注ぐ。その光の粒を出来上がった料理たちがぐんぐんと吸収していく。
気がつくと、目の前のシルベスタ料理が、さらに艶やかな輝きを放っていた。
その時――。
魔王がゆっくりと近づいてきた。
「さて。この私が、試食しよう」
魔王がフォークとナイフで、一口ずつ味わう――。
何を言われるんだろう。
某お料理番組の人みたいに、眉間の皺レベルMAXになったり、セット裏のゴミ箱に直行したり……しないよね。
ドキドキドキドキ……。
心臓の鼓動がだんだん速くなる。
魔王がフォークとナイフを置いた。
「……見事だ。味、香り、魔法の使い方、すべてが調和している!」
会場が拍手と歓声に包まれる。
僕の料理で、みんなが笑顔になってる!
もとの世界では、このスキル、何に使うんだろうって、思ってた。でも、今は心から思う。
今まで頑張ってきて、よかった……!
こうして、光と拍手に包まれながら、僕の異世界クッキングショーは大成功で幕を閉じた。




