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胃袋を掴め!

熱狂している人たちをかき分けながら、ユイナのもとへ進んでいく。


「ユイナ……!」


ステージとなる舞台には、机と持ち運び用のガスコンロ、調理道具がきっちり並べられていた。

その隣には、恐らくモンスターだったであろう肉塊や骨がずらずらと並んでいる。


……これを調理するのか。迫力あるな。


「も~! 人ならざるもののご飯になったのかと思ったよ!」


ユイナがむすっとして、頬をぷくっと膨らませる。


「そんなに怒らないでよ……」


それよりも、生きてユニコーンのミルクを持って帰ってきた僕を褒めて!


「ま、これでもかぶって、頑張りな」


どこからともなく、グエルがコック帽をひょいっと差し出してきた。


「……ありがとうございます」


まずは見た目から整えないとね。

僕はコック帽をそっと頭にかぶった――その瞬間だった。


ぱあああああっ!


まぶしい光がステージ全体を包み込み、ハート型の泡とスパイスの粒子が宙に舞う。

ツインテールはお団子にまとめられ、フリルとハートがあしらわれたピンクのエプロンが身体にぴたりとフィットしていく。

帽子は、ちょこんと頭に収まり……。


「きゃ~! かわいい衣装~!」


ユイナのテンション、爆上がり。

う、う~ん……男子中学生としては、かわいすぎる。でも、今はラブリーピースだから……うん、もう、こういうことにしておこう!


「その帽子には俺の力が込められてる。これで、いつも以上にうまく料理ができるはずだ。エターナルモードって、やつな」


グエルがドヤ顔で腕を組む。

エターナルモード……。この世界、いちいち演出が凝ってるんだよな~。


「……っていうか、私の衣装は~?」


「これは、魔法少女様だけの特別仕様だ」


「なんだあ~……つまんないの~……」


ユイナが口を尖らせる。

いや、君までこんな格好したら、キャラが完全にかぶるから!


「食材と役者は揃ったようだな」


低くて落ち着いた、よく響く声。

魔王だ……!


……ということは!


「きゃ~! 魔王様~!」

「かっこい~!」


観客の黄色い声援が爆発する。

うん、あのキラキラしたカリスマオーラを見れば、納得だよね。


「うわあ……!」


魔王が僕の肩をぐいっと引き寄せた。

ちょ、ちょっと!? 近い! 近いんですけど!?

それに……いい香り。柔軟剤、高そう……!


「今から、私の未来の妻が、私のためにシルベスタ料理を作る。その光景をしかと見るように」


距離が近いだけじゃなく、声までイケボ。心臓が変な音を立てた。

……妻じゃないけど!??


「きゃ~!」


奥の方から悲鳴が上がる。見ると、オーガが腕を組んで睨んでいた。

あっ……完全に敵視されてる……!


その時――。


カツ、カツ、とハイヒールの踵がステージを響かせる。

バニーガール姿のユイナが現れた。胸元、大胆すぎる……!目のやり場に困るっ……!


「よ~し! 旦那さんの胃袋、掴んでいくよ!」


「愛しているぞ、ラブリーピース」


魔王が軽く投げキッスをして、ステージを一旦降りていった。


はあ……もうお腹いっぱい。いや、まだ始まってもいないんだけど!


でも――せっかく食材になってくれたモンスターたちのためにも、いのちだいじに。

僕はお玉をぎゅっと握りしめる。


「いのちだいじに……お料理しなくっちゃね!」


観客の歓声が波のように押し寄せ――僕はステージの真ん中へと、一歩、踏み出した!


ラブリーピース☆クッキングショー、開幕――!!

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