熱い魔法少女に、僕はなる!
空を飛ぶのって、みんなはきっと「わ〜! 気持ちいい〜!」って言うんだろう。
でも、僕は――怖い!
下を見ると、家も木々も豆粒みたいに小さい。冷たい風が顔を叩いて、体がぐらぐらと揺れるたび、胃がキュッと縮んだ。
頼むから、早く着いて……!
「着きましたよ」
祈るような気持ちでいたところに、ユニコーンの優しい声が届いた。
その瞬間、体の力がふっと抜け、胸を撫で下ろす。そろそろとユニコーンから降り立つと――。
「ありが……」
お礼を言いかけた僕は、思わずその場で固まった。
目の前に、透明な羽をきらめかせた人たちが、すでにたくさん集まっていたのだ。
彼らはふわりふわりと宙を舞い、陽光を受けてシャボン玉みたいに光を反射している。
どこから湧いてきたの、この人たち……!
「さあ~! クッキングショーの時間だよ~!!」
そんな僕の混乱をよそに、ユイナのテンション爆上がりな声が響き渡った。
ええっ!? このノリでいくの!?
心の準備、全然できてないんだけど……!
周囲の熱気に押され、僕はぎゅっと拳を握り締める。怖い。でも――。
「魔王とそのしもべたちは、欲望のままに各地で異変を起こしています。それを止められるのは、あなただけです」
ユニコーンが、いかにもそれっぽい神聖な声で言った。
いや、そんな簡単に言われても……!
「……僕に、できるのかなあ」
思わず弱音が漏れる。
目の前の光景は、どこまでもきらびやかで、そして異様に熱い。これを収めるなんて、どう考えても荷が重い。
「必ず、できます。仲間と力を合わせれば」
ユニコーンの瞳は、迷いなくまっすぐだった。
「……はい」
不安しかない。でも、やるしかない。
ユイナと――あの謎の食材たちが、僕を待っている!
そのとき、ユニコーンの体が眩しく光り始めた。
「ご健闘をお祈りしています」
最後にそう告げると、ユニコーンは光の粒になって、ふっと消えてしまった。
同時に、僕の手にずしっと重みがのしかかる。
恐る恐る見てみると、そこには――。
きらきらと輝く、白い液体の入った瓶が握られていた。
こ、これは……まさしく――!
ユニコーンのミルクだっ!!
胸の奥で、何かが静かに灯る。
怖いけど、逃げたくない。ここで踏ん張らなきゃ、きっと後悔する。
「よし――!」
僕は大きく息を吸い込んだ。
会場の熱気に負けないくらい、僕も熱い男……いや、魔法少女になってみせる!!




