修学旅行 その2
修学旅行1日目は班クラスごとの集団行動。
金閣寺から始まって八坂神社、二条城と津々がなくすすんでいく。
そして、今日の予定の最終場所、三十三間堂。
堂内には1001体の菩薩像が並び、すべての仏像が国宝に指定されている。その景観は圧巻の一言……
班行動ではないので、僕はひとりイヤホンをつけて孤独を謳歌しようと思っていたけど……
『へぇ〜……ふぅーん……すっげ』
イヤホンからはマホの声しか聞こえてこない。
いつの間にやら、マホと僕のワイヤレスイヤホンが繋がってしまったようだ。もちろん仕組みは分からない。
「マホ、楽しい?」
『ユッキーは楽しくないの?あ、そうか。ボッチだもんねー!』
いちいち嫌味を……
「大丈夫。僕はひとりが好きなんだ」
『強がっちゃってぇ。ボッチでもアタシが話し相手になってあげるからね』
「マホが話の相手ほしいだけでしょ」
マホは僕の話なんか無視して楽しそうだ。
『ねぇ、ユッキー知ってる?三十三間堂にある仏像って、この中に会いたい人の顔があるとか、自分に似た顔があるっていう言伝えがあるんだよ』
「自分に似た、ねぇ。確かに一体ずつ少し違った顔に見えるけど」
『よーく見てごらんなさい。ほぉら。誰かの顔に見えてこない?ユッキーが今一番会いたい人。いつも近くの席に座っている……』
「どうだか。どっちかって言ったら僕は自分に似た仏像を見てみたいよ。それにマホの顔の方が気になる。マホの顔に似ている仏像はどれ?」
『アタシは……いいよ。アタシの顔なんて。ユッキーはアタシの顔を見てみたいの?』
「そうだね。興味はあるよ」
『そ、そういうことはさ、好きな人とかに言いなよ』
「じゃぁマホの会いたい人の顔、あった?」
『だからアタシはいいんだってそういうのは。アタシは……もう……』
「……そうかい」
急に暗くなっちったよ。
まぁいいや。
それ以上この話は掘り下げないようにしよう。
それにしてもホテルの同室、将吾君と何を話せばいいんだろうか。普段から負の視線しか感じないし明らかに僕のことを嫌っている。
佳奈ちゃんと将吾君から心無い言葉を聞いてしまったとき、あの頃は少なくとも将吾君は今のようにあからさまに僕のことを嫌っているような態度とかはしてこなかった。
僕の記憶が正しければ、将吾君に対して睨まれるようなことは何もしていない。はず。
いや……急に僕が2人を避けるような態度を取るようになったから、だろうな。
さっきは部屋で将吾君との会話がなかった。
さっさと部屋を出て行ったこともあるけど、本当に先が思いやられる。
夕食と入浴を終えて部屋に帰ろうとした時だった。
憂鬱な気持ちを抱えたまま廊下を歩いていると、
「あ」
藍川さんだった。
少し髪の毛が濡れているからお風呂だったのかな。
……やましいことなんか何もしてないのに、なぜか視線をそらさなきゃいけないような気がした。
それにしても、どうして藍川さんは男子の部屋があるこの階にいるんだろう。女子の部屋はもう一つ上の階なのに。散歩かな?
ヴヴヴッ
またマホだ!
なんで藍川さんと相対した時だけ僕をけしかけてくるんだ?!
「藍川さん、どうしたの?ここ、男子の部屋の階だよ」
「うん。そうなんだけど……ま、迷っちゃって……」
迷ったんだ……
「た、たしかにこのホテルちょっと入り組んでいるよね。僕、階段のところまで案内するよ」
「あ、ありがと」
古くからの旅館をホテルのように改築、増築して建てられたからなのか、通路は入り組んでいて初見だと混乱してしまうかもしれない。
藍川さんは少し恥ずかしそうにしながら僕の後についてきた。
ここの角を曲がれば上階に行く階段がある。
僕たちは沈黙したまま通路を歩いていた。
というより、マホが余計なことをしないかヒヤヒヤしながらだったから藍川さんのことを気にかけていられない……
「明日なんだけど……」
「えッ?!」
唐突に藍川さんが話しかけてきた。ちょっと驚いちゃったじゃないか……
「明日の自由行動、沙希が愛善君も一緒にどうかって」
な、なにー?!!
「そ、そ、そそんな悪いよッ!ぼ僕なんかが。邪魔しちゃうだけだよ」
「そんなことないよ。沙希、ゲームの話してる時すごく楽しそうだし」
どういうことだ?何かの罰ゲームか何かで僕を陥れようとしているのか?!
「じゃ、そういうことだからよろしくね」
それだけ言い残して藍川さんは階段を駆け上っていった。
僕、返事してないんだけど……
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