レイド戦
「はぁぁぁ〜 」
京都楽しみにしてたのに、一気に行きたくなくなった……
あからさまに敵意を向けられている相手と、どうやって二晩も過ごせばいいっていうんだ。
『別にそんなに落ち込まなくても〜』
帰り道
うなだれながら帰る僕にマホが言う。
最近はマホとのやり取りも、さほど気にならなくなっている。慣れってすごい……
「マホは何も知らないからそんなふうに簡単に言うんだよ。僕は……佳奈ちゃんと将吾君のせいで……」
ダメだ。思い出して、また暗い気持ちになってしまう。
こんなしょうもないことマホにぶつけたって、僕のトラウマが消えるわけでもないのに
宿題を終わらせたあと、僕は僕のもう一つの居場所、[ファシフォー]の世界へダイブした。
……まぁ、現実逃避というやつだ。
しかしここは良い
思った通りのことがほとんど叶うんだから……
『……現実逃避だね』
「うるさいなッ!そんなこと分かってるよ!」
僕は忙しいんだ。マホを無視して画面に集中しよう。
そろそろボディ用装備を新調したい。大概の装備は自分で作ることができるから、あとは素材さえあれば。
僕が作製したいと思っている防具の素材は、手に入れるのが難しい。
レイドボスが低確率でドロップするアイテム。
ひとりで挑戦するのはちょっと骨が折れるけど、不可能ではないかな。
と、
ちょうどそこへ
【ZENNさん こんばんは!】
【おお。10さん!こんばんは〜】
10さんとはここ最近、ダンジョン攻略とかでお手伝いすることも増えていて、少しだけ砕けた会話ができるようになってきていた。
始めの淡白なやり取りから見れば、随分とテンさんも成長したもんだ。
【ZENNさん今日はどこか行くんですか?】
【今日はね、素材目当てで過去のレイドボス[バンダースナッチ]の討伐に行こうかなって思ってるんだ】
【えぇ![バンダースナッチ]ってパーティでしか討伐できないんじゃないの?】
【レベル帯によってはね。でも僕のレベルだったら時間はかかるかもしれないけど不可能じゃないよ】
【そうなんだ〜】
【よかったら10さんも一緒に行きましょうよ!】
【え?!私なんかが行ったら足手まといにならない?】
【大丈夫!レベリングにもなるし、僕一人よりも効率良く周回できると思うんだ】
【じゃぁ同行しちゃおうかな】
【ぜひぜひ!】
【私まだ[アーチャー]しかできないからこのままでいくね】
【じゃぁ僕のジョブは[パラディン]でいきます。攻撃力は低めだけど、防御力は高いからタンク役ができるし、少しだけど回復魔法も使える】
そんなこんなで。
いつものようにゆるいやり取りで、テンさんとレイド戦に挑むことになった。
*
【バリア発動!今です!】
レイドボス、[バンダースナッチ]を攻略するには、いくつかの重要なギミック処理をしなければならない。
その中でも一番怖い攻撃は[フルミオウス・クロウス]。パーティメンバーに対する全体攻撃だ。
レベルをカンストしている僕でもHP1/3くらいもっていかれる。しかもHPが徐々に減るデバフもついてくる。
でも、この攻撃はフロアに現れる妖精に語りかけてバリアが張られるというギミックを処理できれば、少ないダメージで済む。
ただし、妖精さんはお二人。
同時にインタラクトしないとバリアは発動しないし、タイミングを外すと意味がない。これがソロ攻略を難しくさせていた。
先にテンさんにタイミングを教えていたから僕たちは難なく[フルミオウス・クロウス]の直撃を免れることができた。
あとはゴリ押しで叩けば、[バンダースナッチ]を倒すことができるだろう。
――
ふ〜
これでちょうど10周目。
やっぱり簡単にはドロップしないかぁ〜
時計を見ると日付が変わろうとしていた。
【10さん良い時間ですしここまでにしましょうか】
【そうですね】
【付き合ってもらってありがとうございました】
【いえいえ!私もいいレベリングになったし】
そうだ。
前々から言おうとしてなかなか言えなかったことがあったんだった。
【10さん、今さらなんだけどフレンド登録してもいいですか?】
【え?!いいの?】
【もちろん!】
【やったー!初フレンドだ!】
僕としても初心者さん支援はいろいろボーナスあっておいしいしね。
っていうか、初フレンドなんだ。
【最近[ファシフォー]が楽しすぎてヤバい】
【それは何より^^】
【リアルでいろいろあっても、こっちで元気もらえてる】
――僕も同じだ。
共感できる人がいる。それだけでこんなに嬉しい気持ちになれるんだ……
本当にテンさんにはシンパシーを感じる。
【これからもいろいろ教えてねZENNさん】
【こちらこそ!いろいろ連れ回すから】
どこの誰かも分からない人と繋がる関係。
ネット上の関係っていろいろ問題があったりするのは分かってるけど、こういうのがあるからこのゲームはやめられない。
お読みくださりありがとうございます!
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