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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

〔ミザリー → コメディー〕に変えたからって、俺は責任を負いかねるっ!

作者: まにぃ
掲載日:2024/08/11

久々に投稿したかったので、ふと思いついた話を書いてみました。

楽しんで頂けると幸いです。

 ……あれっ? おかしいな……。

 確か私、トラックにかれそうになってて……。

 ……そうよ!

 青信号で横断歩道を渡ってた女の子を、信号無視で突っ込んで来たトラックから守ろうとして、

 女の子の腕をガッと掴んで、歩道の方へ投げたのは良いけど、

 その反動で、道に倒れ込んじゃったのよね。

 だからてっきり、これで死ぬのかと思ってた。

 でも今は……宙を飛んでる!?

 誰かにお姫様抱っこされて!?

 何て恥ずかしい、知ってる人に見られたらどうしよう……。

 それにしてもやけに静かね、聞こえるのは女の子の鳴き声位。

 ……良く見たら、周りが全部止まってる?

 時が動いていないかの様だわ、どうしちゃったのかしら。

 空中をゆっくりと動いてる、不思議な感覚。

 ふんわりと浮いて、ふんわりと落ちる。

 そして私を抱いていた誰かは、ガードレールをコンッと蹴って、

 歩道の真ん中にストッと着地した。

 私はゆっくりと歩道に下ろされ、その人は声を掛けて来た。


「大丈夫か?」


「え、ええ。」


 咄嗟にそれ位の言葉しか返せなかった。だってビックリしたまんまだったから。

 その人は顔を見た限り、同い年と思える少年だった。

 少年は続けて、私に話し掛ける。


「災難だったな。でも、どうにか助けられて良かったよ。」


「そんな事は無いでしょ。現に私は……。」


 そう言いかけて道路の方を見やると、未だにみんな止まってる。

 トラックも他の車も、歩道を歩いていた人達も。

 そんな中、私が助けたであろう女の子だけは、

 歩道の隅っこで涙を流していた。


「痛いよう、痛いよう。」


 ペタンと座り込んでいるその姿に、私は申し訳無く思う。

 もっときちんと助けられたかも知れない、でもあの時はこれが限界。

『ごめんね』と心の中で謝る私、それを差し置いて、

 少年は女の子の前まで進むと、スッとしゃがみ込んだ。

 そして女の子の頭を右てのひらで撫でながら、優しい口調で言う。


「僕が何とかしてあげる。だから泣かないで。」


「……どうやって?」


 女の子は少し泣き止み、不思議そうに少年の顔を覗く。

 少年はニコッと女の子に笑いかけると、今度は右掌をゆっくりと動かし、

 痛みの原因であろう、擦りむいた右ひざの当たりへと持って行く。

 少年の右手がポウッと光ったかと思うと、続けて叫ぶ。


「痛いの痛いの、飛んでけーっ!」


 ヒュッと左から右へ、かざしていた右手を振り抜いた後、

 少年は再び、女の子に話し掛ける。


「もう痛く無いだろ?」


「ホントだ! ありがとう!」


 涙をグイッとぬぐって、嬉しそうに笑う女の子。

 女の子の足は、傷1つ無く綺麗な物だった。

 まるで、さっきまでの出来事が無かったかのように。

 それを見た私は、ホッとしたのか。

 さっきまでの状況を思い出して、背筋がゾッとし。

 心が恐怖で埋め尽くされていた。

 それを感じ取ったのか、少年は。

 女の子と一緒に立ち上がると、私の方へと連れて来る。


「このお姉ちゃんが、君を助けてくれたんだよ。ちゃんとお礼を言おうね。」


「お姉ちゃん、ありがとう!」


 女の子は満面の笑みを浮かべて、私に向かってペコリと頭を下げる。

 私はつい恐縮して、女の子に言葉を返す。


「当たり前の事をしただけよ。無事で安心したわ。」


「えへへー。」


 照れ笑いする女の子、小学校低学年くらいだろうか。

 そのあどけなさが、私の心を軽くする。

 恐怖心もすっかりとやわらいでいた。

 まるでそうするのが当たり前かの様に、「じゃあ」とその場を立ち去ろうとする少年。

 私は慌てて、それを制する。


「ちょっと! どう言う事か、説明してよ!」


「何が?」


 ひょう々とした態度を変えない少年に、私は続けて。


「周りが止まってるんですけど! それに君、どこから来たのよ!」


「どこって、反対側からだけど?」


「ここって、片側2車線の道路よ! それをどうやって……!」


「一っ飛びで。」


 どうやら少年は、まともに取り合うつもりは無いらしい。

 私はほほをぷくーっと膨らませて不満そうにする、最大限の抗議。

 そして残念そうにうなだれ、「じゃあ、これだけ」と前置きした後に。


「どうして私を助けてくれたの?」


 すると意外にも、少年の答えはこうだった。


る奴に頼まれた、ただそれだけだよ。」


「それじゃあ」と私達に軽く手を振ると、少年はタタタと道を横切り。

 歩道まで進むと、勢い良く向こうへと駆けて行った。

「バイバーイ!」と元気に手を振り返す女の子、それを見て。

「まあ良いか」と、私は思ってしまう。

 少年の姿が見えなくなる頃、急に周りが騒がしくなり、

『ガシャーン!』と大きな音がする。

 どうやら時が動き出したらしい、トラックが向こう側の中央分離帯に衝突していた。

 奇跡的にも、運転手は無事で。

 道を走っていた他の車にも被害は特に無く、大した事の無い交通事故で終わった。

 女の子は、慌てて駆け寄った母親らしき女性と抱きしめ合い、

「ありがとうございます! ありがとうございます!」と、女性は私に何度も頭を下げた。

「いえいえ」とこたえながらも、私の心の中は複雑だった。

 確かにトラックから女の子を引き離したのは私、でもあれは少年の手柄。

 私を助けたのも女の子の怪我を直したのも、全てあの少年なのだから。

 しかも事故は最小限の被害だった、これもきっと少年の仕業だろう。

 少年は手柄を私に押し付けたのだ、何と歯がゆい事か。

 次に会った時は、きちんとお礼を言って、

 何をどうやったのか、今度こそ追及してやろう。

 幸いにも、私と同じ高校の制服だったし、

 校内をグルッと回って行けば、ぐに見つけられるだろう。

 そう思いながら私は、慌てて学校へと向かう。

 これが、高校の入学式当日の朝の出来事だった。





「……なーんて、あのは思ってるだろうな。」


『お疲れ様。良くやってくれたね。』


「ホント、疲れたよ。」


 教室の机にしながら、独り言のように吐き捨てる俺。

 実際、そうだった。

 俺が会話しているのは、所謂いわゆる【神様】。

 見える訳が無い者を相手にしてるんだ。

 周りからしたら、ブツブツと不気味な事だろう。

 だるそうに、俺は続けて。


「これで本当に、解放されるんだよな?」


『そりゃ、勿論もちろん。これからは、自由に生きて良いよ。』


「これ以上は勘弁だよ……。」


『ボクとはいつでも自由にしゃべれるから、困った時は話し掛けてよ。じゃあね。』


「既定路線みたいに言うな。」


 ここで、神様と俺の会話は終わった。

 何とも面倒臭い、俺と神様との関係。

 どうしてこうなったかと言うと……。





 元々俺は、その辺りに居る一般的な男子そのものだった。

 それを神様が強引に、あちこちへと連れ回したんだ。

 しかも、【異世界】に。

 最初は、剣と魔法の中世風ファンタジー。

 次に、近未来の電脳SF。

 後は超古代文明での超能力バトルに、銀河を股に掛けたスペースオペラ。

 俺は結局、7つの異世界に転移させられ。

 それぞれの世界で、勇者や救世主に祭り上げられた。

 こっちは、たらい回しにされた気分だったけど。

 充実感が無かったかと言ったら嘘になる、それなりに達成感は有った。

 ラブロマンスも中々だったし、悪い気はしなかった。

 目的を達成した後こっそりと去らなきゃならなかったのが、唯一の心残りだけど。

 とにかく、それぞれの世界でチート級の能力を授かって。

 仲間と共に敵と戦い、勝利をもぎ取った。

 そうやって世界を渡り歩き、元の世界に戻って来た。

 そこでようやく神様が、俺を連れ回した本当の目的を話したんだ。

 それは、《俺が居るこの世界を変える事》。

 神様にとってこの世界は、【とある物語の世界】らしい。

 その内容とは、こんな感じだった。





 ヒロインは、〔フィールドの妖精〕と呼ばれる美少女アスリート。

 将来はオリンピックで金メダル確実と目される程、この時点から能力はズバ抜けていた。

 しかし高校の入学式を迎える朝、登校途中に。

 トラックにねられそうになる女の子を助けようとして、逆に轢かれてしまい。

 両足とも膝から下を切断すると言う、途方も無い悲劇に見舞われる。

 すっかり落ち込んでしまい、生きる気力すら無くなってしまうヒロイン。

 それを知った主人公の少年、ヒロインとは幼馴染おさななじみで。

 サッカーで全国大会に出場した事のある実力の持ち主にも係わらず、高校で止めようとしていた。

 理由は色々と有るらしいが、作品内では語られないようだ。

 だがその少年は、ヒロインを勇気づける為に、

 心を奮い立たせて、サッカーを続ける事にした。

 そしてヒロインに宣言する、「俺が国立競技場に連れて行ってやる」と。

 毎日必死にサッカーに打ち込む少年、その姿を見て。

 ヒロインも前へ進もうと決心し、パラアスリートを目指す。

 月日は過ぎ、高校3年生となった少年。

 約束通りヒロインを、全国大会決勝戦へと連れて行く。

 そして、物語は……。

 と言った、ありふれた感動話だそうだ。





 しかし神様は、異を唱える。

 こんな話、何が面白いの?

 ヒロインを苦しめて、何がしたいの?

 展開が詰まんなさ過ぎる、ボクの管轄する物語は楽しくなくっちゃあ。

 そう、神様は反旗をひるがえしたのだ。

 神様の我がままと言ってしまえばそれまでだが、どうしても創造主の考えが許せなかったらしい。

 ちなみに、ここで言う〔創造主〕は。

 〔作者〕や〔編集者〕の事を指すそうだ。

 だけど当然ながら、流石の神様も創造主には逆らえない。

 そこで神様は、《とある者にチート級の能力を与えて、物語を改変させる》と言う、

 強引な手に打って出た。

 しくも俺は、その役目に選ばれてしまったと言う訳だ。

 この世界にようやく戻って来れた俺は、神様からそれを聞かされ。

 あきれと怒りが入り交じる中、渋々神様に従った。

 しかし何度、ヒロインを救おうとしても。

 トラックから助けた後に、別の車が突っ込んで来たり。

 通学途中で、謎の爆発に巻き込まれたりと。

 何が何でも悲劇のヒロインに仕立て上げようとする、強力な見えない力に邪魔をされた。

 ここで神様は、最後の手段を使う。

 俺の存在を脇役からモブまで格下げし、気配を薄くして。

 創造主の居る世界に、俺を送り付けたのだ。

 ここまで悲劇にしたがる原因が、破滅の美学を強く信奉する編集者に有ると知った俺は、

 編集者の目をあざむき、直接作者と交渉。

 作者も、今書いているこの話の展開にはうんざりしていたので。

 作者が編集長へ直訴じきそし、俺のお膳立ての甲斐も有って作品は方針転換。

 元凶となった編集者を作者担当から外す事に成功した。

 残念ながら既に、ヒロインがトラックに撥ねられる直前で終わっている1話目が掲載されていた。

 これは流石に変えようが無かったので、そこから強引に軌道修正。

 俺が割って入る流れへと持って行く事に。

「必ずヒロインを助ける」と約束した俺は、作者と別れて作品内へと帰還。

 冒頭の通り、見事ヒロインを救ったのだった。

 これで役目を果たした、もう物語の本筋に絡む事は無い。

 これからはチート能力をセーブして、勝手気ままに生きるぞー。

 そう俺は、意気込んでいたんだけど……。





「ねえねえ、ここを教えて欲しいんだけど。」


「そっちの方が頭は良いだろ? どうして俺に聞きに来る?」


「気にしない気にしない。それでさぁ……。」


「もう授業が始まるぞ? さっさと自分の教室に戻れよ。」


「ちぇーっ。じゃあ、またね。」


 ヒロインは残念そうにそう言うと、隣の教室へと戻って行った。

 ……どうしてこうなった?

 俺はもう、お役御免じゃ無かったのか?

 悲劇は回避した筈、なのにどうして……。

 ムスッとしたまま俺は、おずおずと席に着く。

 そして何事も無く、授業が始まった。

 あの日から半月ほど経った後、〔とある事〕が有って。

 それ以来ヒロインは、隣である俺の教室にたび々顔を出すようになった。

 それまでは神様もちゃんと、主人公とヒロインがくっつくように仕向けていた。

 2人を同じクラスにし、しかもイケメン美少女グループの一員にした。

 そのメンバー6人の中で、様々な出来事を経験し。

 2人は恋人同士になる、そんな筋書きだったらしい。

 ここで、神様も予想していなかった事態が。

 何と作者が、感謝の心からか悪戯いたずらごころからか。

 俺を主人公にしたラブコメを、続きとして書き始めたのだ。

「迷惑千万、平和に過ごさせてくれ」と、神様を通して俺は作者に抗議したのだが。

「まあまあ」となだめられて、結局なすがままに。

 主人公はこりごりなのになあ、そんなつぶやきもヒロインには届かない。

 こうして俺はまた、物語の中心に祭り上げられてしまったのだった。





 悲劇ミザリーを回避したら、喜劇コメディーが始まった。

 俺が関わらないのなら、それでも良かったんだけど。

 これからどんな展開になって行くのか、知らないし知りたくも無い。

 ヒロインの恋模様なんてどうでも良い、ただ平穏に過ごしたいだけ。

 でももし読者の皆さんが、この先を知りたいと望むなら。

 少しは、張り切ってやっても良いかなぁ。

いかがだったでしょうか。

旧主人公とヒロイン、そして祭り上げられた真の主人公。

その行く末が気になる人がいらっしゃるなら、続きを書いてみようかなと思っています。

その時はどうか、よろしくお願いします。

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