表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/33

               8

 すごい。やさしくは、ないだろう。でも、体育館の舞台で、自分が、やると決まれば、絶対「透明になるコイン」のマジックをやろうとさおりは思った。

「お次は、トランプのマジックでございます」

 おじいちゃんは、テーブルの上のトランプを持ち上げた。

 

 普通のトランプよりひと回り大きなトランプだった。 

「そこのお嬢様、こちらにいらしてください」

 おじいちゃんがさおりに手招きをして台のそばに呼び寄せる。

「それでは、どれでもいいですから、お好きな一枚を選んでください」

 

 さおりは、一枚を選んだ。スペードの3、マークと数字をしっかり頭の中に入れる。

 

 おじいちゃんは、そのカードを一番上に乗せる。そうして、トランプを切ってさおりが選んだスペードの3をあてた。

 

 おじいちゃんがしたトランプのマジックは、種明かしをすれば、さおりと全く同じだった。

 でも、「お客様の選んだカードは、これですね」というまでの動きがとても自然なのだった。

 カードをあてる時も、すべてのカードの中から「これ」と言うのではなくて、十数枚ずつ扇型に広げ、「この中にはありません」などと言ってお客様の方に絵柄を見せていく。

 おじいちゃんは、三度目に作った扇型からさおりの選んだスペードの3をあててみせた。


 トランプの次はスカーフのマジックだった。

 さおりがやると結び目が出来るのに、おじいちゃんがやると結び目を作ったはずなのに出来てない。赤と黄色のつないだスカーフを魔法をかけて引っ張るとさっと赤と黄色のスカーフがばらけてしまう。


「それでは、マジシャン相島のマジックショーを終わりたいと思います。ありがとうございました。トランプを選んでくださったお嬢さん、ささやかな私からのプレゼントをお受け取りください」

 さっと手が動き、差し出された手には、先ほど消えた造花の花束が握られていたのだった。


「すごい、すごい。ねえ、おばあちゃん、マジシャン相島は健在だよ」

 さおりは、本棚の上に飾られた「アチラの世界」にいるおばあちゃんの写真に向かって言った。

 おばあちゃんは、写真の中で笑っている。「そうね、さおりのいう通りね」とでも言っているみたいだ。


「健在?マジシャン相島は、まだまだ衰え知らずだよ」

 おじいちゃんは、笑った。


              


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ