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 帰り道、さおりの右側にはさっき村中先生に質問した芦原梓あしわらあずさ左側には近藤彩花がいる。それぞれの家が近いので大抵この三人で帰る。さおりは、それぞれ親友の関係にあると思っている。


 梓は、クラスで、いや、学年で一番成績の良い子でこの四月から私立の超がつく難関中学に進学する。理知的な顔立ちで、背が高く、ボーイッシュな髪形をしている。

「あずさ」「さおり」とふたりは呼び合う。


 彩花は、恥ずかしがり屋でおっとりした性格で、バレーを習っている。五年生まで、私立中学を受験するつもりで、さおりと同じ進学塾に通っていたが、「中学受験は、私には向いてない、と言ってこの四月からは地元の市立中学に通うことになっている。こちらは、呼び捨てでなく「さおりちゃん」「あやちゃん」と呼び合う。


「秘密の特技会なんて誰が言ったんだろう?」

 彩花が言った。 

「やっぱり、矢内でしょう」

 すぐさま、梓が、答える。

 矢内先生は、五十代も半ばの六年三組の担任である。いつも乗りがいいというか、他のクラスの子達にも「いよっ」と声をかける先生だ。

「確かに、確かに」

 さおりは、同調する。


 秘密の特技会なんて、どこか、古めかしい言葉を考えるなんて矢内先生っぽい。

「彩ちゃん、やれば」

 さおりの頭の中には、バレリーナの近藤彩花がいる。


 去年、近くの文化会館でお披露目会があり、白鳥の湖を踊るのをさおりと梓は、招待券を彩花からもらって観たのだ。ひな人形みたいな顔だちの彩花が、西洋的なバレーの世界で踊っている。それが、とても、自然で美しく感じられた。


「やるものなんてないよ」

「あるじゃない、バレーが」

「そうだよ。彩ちゃんのバレー決定」

 梓が続いた。


「やだ、踊らない。男子にバレーを踊る姿なんて絶対見せたくない」

 彩ちゃんは、頬を膨らませる。

「まあね。男子達に彩ちゃんのバレー姿はもったいないね。さおり、君だって、あるじゃない」

 梓が、おどけて言った。


「何?」

「トランプのマジック」

「無理。私、トランプのマジック、ふたつ位しか出来ないし、歌なら一曲きれいな声で歌えばいいけど、マジックだと、五つか六つは、披露しなくちゃいけないと思うんだよね。そんなに出来ないわよ」

「マジック、見たい、見たい」

 彩花が割って入る。梓には見せたことがあるけど、彩花には見せたことがなかった。


「私がやるとすれば、アシスタントに彩ちゃん指名するわよ」

「エエッ、私?体育館の舞台の上でやるわけでしょう。助手は、梓ちゃんでいいじゃない」

「私が、さおりのアシスタントだったら、さおりより目立つからダメ」

「どういう意味よ。梓は、フルートの演奏するんでしょ?」

 梓は、県内の音楽コンクールでジュニアの優秀賞をとったことがあるのだ。五年生の時だ。


「西原にアピールするには、フルートはかなり効果的だと思う」

 彩花が、ぐさりと来る言葉を梓に投げる。


 彩ちゃん、ナイス。さおりは、心の中で叫んだ。


「そうそう、アピール度満点」

 さおりも彩花の言葉に乗っかった。

「西原、何で西原の名前が出て来るのよ。関係ないでしょう」

 梓の顔は、赤くなっている。


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