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猫狼《びょうろう》ゲーム

作者: 青冬夏

ある日の真夜中。小さな部屋の中、八匹の猫たちが一つの灯りの下集まっていた。


「……君たちに集まって頂いたのは他でもない。この、我々の中に一匹だけ狼と繋がっているもの、つまり《ダークビャー》が潜んでいる」


髭が顎まで伸びきった、白い猫が言う。その後、他の猫たちはざわついた。


「一体誰が内通者かにゃ?」と茶と白が混じった毛色の猫が言う。

「それは……、分からん。だが、こうして君たちに集まっている以上一つ確信があるんだ」


そう言うと、白猫は尻尾を上手く使って皆に見せる。


「これは?」と黒い猫のくろ。顔を床と同じ高さにして見る。

「これは内通者が落としていった《狼の目》だ。こんなもの、猫が使うとは思えん」


「まじかいにゃ」等というどよめきが猫たちの中に響かせる。しかし、ある猫──くろだけはコホンと、人間らしく咳払いをした。


「皆さん、これは人間界で言うならば人狼ゲームです」

「人狼ゲーム?」白猫が首を捻る。

「そうです。簡単に説明するならば、ある一匹の狼が人間が住む村に紛れ込み、その狼を処刑するまで話し合いが続くゲームのことです」

「となれば、今この状況を察すれば……」

「はい。誰か一匹を処刑、或いは追放すれば僕たち猫は狼の脅威に晒されることはないでしょう」


高らかにくろが宣言するように言うと、三毛猫がこう話した。

「よしそれじゃあ早速、その《ダークビャー》を探し当てて処刑しようか」

三毛猫がそう言い、どこからか鐘の音が聞こえ、猫たちによる話し合いが始まった──。



「まずは……、一番最初に話した白猫から」

くろが白猫を視線で示す。白猫は頷いて話し始めた。


「私は《ダークビャー》ではありません。それを指し示す証拠として、三毛猫が証明してくれます」

「三毛猫?」そう言い、くろは白猫と向かい合って座っていた三毛猫に変える。

「ああ。俺はその白猫と同じ家に住んでいるんだ。同じ釜の飯を食っているし、飼い主とよく一緒に遊んでいるからそいつは《ダークビャー》じゃない」


「なるほど」くろは相槌を打つ。「それじゃ次。縞柄の猫」

そう言い、くろは自分の隣に座っていた、縞柄で片耳が削れている猫を見る。少々怯えていたものの、縞柄の猫は話した。

「ぼ、僕は……、飼い主と二人暮らしだから誰も証明できる猫はいないんだけど……。僕は《ダークビャー》じゃない」


そう言うと、彼の目の前に座っていた虎柄の猫が目を大きくして睨み付けた。元の目が大きいからか、更に目が大きくなったのを見てくろは少し怖じけついた。


「あぁ? 誰がお前なんかを信じるかよ。これを見ろ」

そう言い、大口を叩いた彼は尻尾を使ってある物を皆に見せる。タブレット端末で、そこには監視カメラだろうか、右下に日付が書かれており、真っ暗な映像が映し出されていた。


「これを見てみろ」そう言い、口を使って映像を再生させる。「この映像を見る限り、お前が狼と出会っていることが分かる。そして、何か話していることが分かるだろう? そこから、お前は狼と繋がっている、つまり《ダークビャー》ということだ」


早口で捲し立てると、皆が一斉に縞柄の猫に目線が向く。縞柄の猫は目線を泳がせて焦り始めた。


「お……? 図星か?」煽るように虎柄の猫が言う。


しかし、ある一匹の猫だけは映像に釘付けになっていた。


(……あれ、これどこかおかしい……)


そう思っていると、突然くろが「にゃー!!」と大声を出す。皆が驚き、白猫が「どうしたのかにゃ?」と首を捻った。くろは白猫に視線を向いて、こう口に出した。


「《ダークビャー》が誰か分かりました」



「《ダークビャー》が誰か分かった?」

虎柄の猫が言うと、くろは「そうです」と唇の片端をニヤッと上げた。


「誰だよ、それって。やはりそいつが《ダークビャー》じゃないのか?」

虎柄の猫が縞柄の猫を首でしゃくって言う。しかし、くろは首を横に振った。


「いいえ、それは《ダークビャー》が仕込んだミスリードでしょう。縞くんは《ダークビャー》ではありません」

くろが縞柄の猫を一瞥しながら言うと、白猫が「じゃあ、一体誰が《ダークビャー》なんだ?」と前のめりになりながら言う。くろは肉球の片足を上げ、真の《ダークビャー》に指差した。


「真の《ダークビャー》……、それはあなたです!!」


彼が指差した猫、それは縞柄の猫を《ダークビャー》扱いにした虎柄の猫だった。

「……は? なんで俺が《ダークビャー》なんだよ」


苛立ちを込めながら虎柄の猫が言う。


「ふふ。それはあなたの片目に根拠があるんですよ」

「俺の目?」

「はい。君の目は僕も含め、色が違って青色です。青色の虎柄。何だか目立ちそうですね」

「何を言って……」

「何を言っているのかよく分からんことでしょう。それでは君が示したこの映像でもう一度」


そう言い、くろはタブレット端末を加えて器用に肉球で映像を流す。皆が映像に釘付けになっているとき、一斉に猫たちが反応した。


「どうです? お分かりになりました?」

くろが見渡しながら言うと、縞柄の猫が「は、あああ!!」と気づいたように言う。

「縞くん、言ってみて」とくろ。

「あの映像に出てきて狼と話している猫、僅かながら目が青かったです!」

「ザッツライト!!」


くろが肉球で縞柄の猫を指差すと、虎柄の猫が「チッ」と舌打ちを鳴らす。

「と言うわけで、君の完全敗北です」そう言い、くろは白猫に目線を変えた。「それでは、白猫さん。ご投票を」

「これより、《ダークビャー》投票を始めます!」

白猫が高らかに宣言し、各々の猫たちを呼んでいく。そして、遂に虎柄の猫が呼ばれると、彼を覗いた猫たちが「にゃー」と鳴いた。


そして、全ての猫の投票が終わる。

「以上を持って投票を終える。投票の結果、《ダークビャー》は虎柄の猫に決まりました」


その後白猫が会の終わりを宣言し、各々の猫たちが帰っていく。

「……結果は残念だったが、これは投票だ。諦めなさい」


虎柄の猫に白猫が近寄りながら言うと、虎柄の猫は顔を下げながらその場を去って行った。

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