第27話 〜1人〜
貴族の女性は俺に手をかざしてきた。そして、手から緑色のオーラが出てきた。
やはり、異世界でも回復系統の色は緑なんだなと俺は思った。
女性の手と俺との間に魔法陣のようなものが出来上がっていく。
構築された魔法陣は、俺の方へと向かっていき、体内に入っていく。
俺の体内にその魔法陣が埋め込まれたような感覚だった。
なんだか暖かいような、冷たいような…
例えるなら、そうだな…みんなは温泉で[不感湯]に入ったことはあるだろうか。それだ。
そんな違和感を感じたのは一瞬で、体内から魔法陣らしき[異物]が溶けて全身に巡る感覚と共に、その違和感は消えてしまった。
そんなことを考えて、ふと自分の傷跡を見たら、消えていた。
跡形もなく、すっかり健康体であった。
そんな俺が驚いている様子を見て貴族の女性が言った。
「内側から治癒の魔力を流し込んで傷口に浸透させるのよ」
なるほどな。血小板のような感じなのかもしれない。
とりあえずお礼くらいは言った方が良いか。
「治療ありがとうございます」
「お礼なんて良いわよ…これが私の仕事なんだから」
女性が言うことにも一理ある。
さて、治療も終わったし、リアさんの所に…
[ズキッ]
…あれ?まだ傷口が痛むな…
「言ったでしょう、治癒魔法ってそんなに便利な魔法じゃないのよ」
俺の様子を見ていた貴族さんはそう言った。
そして続けて言う。
「もう少しは安静にしておきなさい、私は休むわ」
そう言い残すと、貴族の女性は別の部屋へと姿を消した。
「ハヤト?何があったの?」
アオイさんが俺にそう話しかけてきた。
とりあえず、アオイさんが意識を失ってからの出来事を話した。
「そっか、治癒魔法だったのね」
そう言うと、アオイさんはベッドから起き上がった。
俺はアオイさんに聞く。
「アオイ、体はもう大丈夫なのか?」
「えぇ、もう問題ないわ」
意外とすぐに体調が良くなるのか。全然便利な魔法じゃないか。
そう思いながら、俺はアオイさんに言う。
「そいえば、ここは…」
「治療室でしょ?なんとなく聞こえてたから」
「なんだ、それなら話が早い、ここから出た先にリアさんがいるから、俺が来るまでそこで待っててくれ」
「…?」
不思議そうな顔をしてどうしたのだろうか。
あれ?リアって誰のことか言うのを忘れていたか?
「リアって俺たちを助けてくれたあの人だよ!」
「いや、そうじゃなくて…」
え?それじゃないのか。それ以外で何か変なことがあったのか?
そう思うと、アオイさんは言う。
「待つわよ、ハヤトが回復するまで」
なんだ。突然の優しさか。
逆に怖いな。申し訳無いけど恐怖を感じた。
「良いですよ先に行ってて、リアさんをひとりで待たせるのも可哀想だし、早く感謝してこい」
そう言うと、アオイは、[分かった]とだけ行って行ってしまった。
…今俺は1人だ。俺は色々と考え事をした。
暇だからというのもあるが、色々と思うところがあったのだ。
ドラゴンと戦った時の、あの一瞬の出来事…
俺が瞬きした間に、事は終わっていた。
そもそも、あれは俺が出したという根拠もないのだ。
ステータスだって、俺の速度の項目の数値は…
…あれ?
思い返してみる。俺の速度の数値が思い出せない。序盤に書いていたはずだ。
…というか、本当に数値、書いてあったか…?




