第26話 〜貴族の治癒魔法〜
間違いなく、アオイさんが指を指している人物は貴族であろう。
レースを来ているので、99%女性であろう。
そして恐らく20歳よりは若い。
俺はこの世界の貴族については何も知らない。さっきまでこの世界に貴族がいたということにさえ気づかなかったほどだ。
そして俺が知っている情報はたった一つ。
そう。[治癒魔法]だ。
アオイさんが意識を取り戻した理由は、恐らくこの人だろう。
この人が治癒魔法をアオイさんに使った以外に考えられなかった。
貴族なのに、なぜ最初からアオイさんを助けなかったのだろう。焼灼止血なんてする必要なかったじゃないか。
ここまで考えたが、そもそもあの女性が貴族なのかもあくまで俺が思っているだけなのだ。
たまたまあの女性が治癒玉か何か、回復道具を持っていて、それを使って回復させた可能性もある。
極わずかの可能性だけどな。
仮説から考えても拉致があかない。そう思った俺は、女性に聞いてみることにした。
貴族への礼儀?14歳なんだし許容してくれるだろ。
「…あなたは貴族ですか?」
「…えぇ」
「なぜ最初から治癒魔法を使わなかったのですか?」
「…あなた、治癒魔法のこと何も知らないの?」
あれ?貴族特有のお嬢様言葉じゃない…?
こっちの世界にはそんなものないのか?
いや、そんなことはどうでも良かったな。
治癒魔法についてか。確かに大したことは全然知らないな。
そう思った俺は、正直に言う。
「貴族や王族の人間にしか扱えない魔法…ということしか知りません」
「…魔力の消費が大きいのよ」
「…なるほど、そういうことですか」
[魔力]…確かステータスにそんなことが書いてあったような気がした…
あれって、[魔力量]を表しているのか…?
そんなことを考えていると、貴族の女性は俺に話しかけてきた。
「治癒魔法ってそんなに便利じゃないのよ…使うのに時間かかるし、魔力も半分くらい消費しちゃうし、魔力の回復もかなり時間かかるし、その上貴族や王族にしか使えないんだもの」
すごい愚痴を言っているなこの貴族さん。
そんなことを思っていたら、貴族の女性がまた俺に話しかける。
「ていうか、その傷、早く治療しないと傷跡一生残るわよ。早く隣のベッドで寝なさい」
「…いや、でも治癒魔法は、」
「魔力消費は半分って言ったでしょ?さっきそこの女性に使ったばっかりだから、あと1回使えるのよ」
「あぁ、そっか…それじゃあお願いします」
「ねぇハヤト、さっきから治癒魔法とか…」
ここでアオイさんが話しかけてきた。
「まぁ、詳しいことは治療が終わった後に言うから」
そう言うと、俺は近くのベッドで横になる。
そして、貴族の女性は言う。
「治療、初めていくわよ」




