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49 シュート

お、お久しぶりです

またずいぶん空いてしまいました

 スルホンさんと相談して、長期休暇を取った僕は、素材採取の旅に出かけた。


 スルホンさんも僕の働き方を心配していたみたい。主に健康面で。さらには工房や店舗の従業員の待遇も考慮して、仕事を制限するのに賛同してくれた。

 “携帯魔燈(まとう)”、“携帯魔竈(まそう)”の類似品はポツポツ出てきているみたい。ただし、威力は僕の作った物よりも数段落ちるらしい。主に庶民や貧乏冒険者が、その安さに釣られて購入し、威力の低さにがっかりして悪評を流すと言う現象が広がってるらしい。

 頑張れ!魔道具技師達!


 “『加温』外套”や“『冷却』外套”はまだ真似できていないみたい。魔術の『付与』が全く為されていない偽物が出回っては摘発されてって事が散発しているらしい。

 詐欺行為は許せないな!


 “湯供給魔道具”は今のところ後発品の気配はない。

 やはり温度を変化させる魔術の構築がまだ誰もできないんだね。これから出てくるかな?


 “冷風機”と“温風機”に関しては『加温』や『冷却』が付与されていない、ただの“送風機”の類似品が発売されている。あ、厳密に言うと、風属性の魔術効果の魔道具は以前からあったらしい。でも、羽を回転させる構造にしたことで「魔石の消費量が格段に減って実用的になった」と言う事で、真似をされた訳。

 『冷却』が付与されてなくても、風に吹かれたらある程度涼しくなるから良いんじゃないかな?『冷却』が付与されている物よりも、本体価格も安いし、魔石の消費量も少ないし。


 “草刈り機”や“刈り草掃除機”は構造が単純だから後発品が直ぐに出るかと思ったけど、需要自体が“携帯魔燈(まとう)”、“携帯魔竈(まそう)”に比べて少ないからか、あまり目に付かない。


 “位置情報発信受信装置”に関しては、スルホンさんが先日言っていた通り、国に構造と円環術式の情報を売って、“秘匿契約”と“無断使用不可の契約”を結ぶようにと勅令が来た。これは国王からの命令だから断れない。

 この契約を結ぶと、僕は“位置情報発信受信装置”を二度と作れない。尤も、僕に文句はない。僕が作って国に納めるよりもずっと良い。これ以上、仕事を抱え込みたくないからね。情報料の報酬がかなりの額だったから、寧ろ納得の取引だ。旅に出る前に魔術契約書を交わしてきた。




▲▽▲▽▲▽


 って事で、旅をする時間が(なんと、30日も!)確保できた僕は南行きの乗合馬車で出発した。この旅の目的地はパミドロルの南方、レチノルト。旧レチノール国の王都だった街だよ。

 パミドロル国が旧レチノール国を併合した後の不安定な時期に、旧レチノール国内で魔獣がかなり増えてしまったんだって。今は定期的に討伐が入っているから、数自体はダルベート大陸の北方面と同じ程度に落ちついているけれど、北ではあまり見かけない南方特有の討伐難易度の高い魔獣が棲息している。

 その代表格が、ハーピー、バジリスク、マンティコアだ。


 ハーピーは顔から胸までが人間で翼と下半身が鳥の姿を持つ。かぎ爪は猛禽類のように鋭い。人間部分の容姿は醜く青白い女性の顔をしている。食欲旺盛で常に空腹を抱えていて、目にする物は食べ物であっても人でも魔獣でも仲間の遺骸でさえも、全てを貪り、残飯の上に汚物をまき散らしていくらしい。独特の悪臭を放ち、終始耳障りな声で騒ぎ立てるという、非常に不快感を与える魔獣との事だ。

 また、ハーピーは群れで行動する。獲物を見つけると急降下してきて、その鋭いかぎ爪で傷つけ、あるいは掴んでそのまま上昇して高所から落とす。近接攻撃の届く高度に殆ど留まらないので遠距離攻撃手段を持つ者が数多くいないと討伐は難しい。


バジリスクは蛇の様に長細く、頭部の部分だけが丸く平たい形をしている。頭には王冠を彷彿とさせる白い模様がある。蛇の様に体をくねらせず、上半身を持ち上げて進む。その毒は非常に強力で、息だけで草を枯らし、獲物を弱らせる。噛みつけば、瞬時に肉が腐り全身に広がる。また視線が合うと相手を石化させる事ができる。


 マンティコアは顔が人間、胴体は獅子、コウモリの翼とサソリの尾を持つ。力が強く、巨体に似合わない俊敏性も持ち、尾からは毒針を射出してくる。さらには火系統の魔術を扱う事ができる。外皮は魔力にも物理攻撃にも耐性が高く、攻撃が入りにくい。


 うん、どれもかなり討伐難易度が高い。でも、その分その素材は貴重で、希少性があり、有益だ。


 ハーピーは、利用できる素材は羽根だけだ。人間部分も鳥の部分も肉は臭くて不味い。骨は空を飛ぶためか薄く軽いので脆い。かぎ爪も鋭いだけで脆い。しかし羽根だけは非常に良い素材になる。魔力を多く含むので様々な物に加工される。中でも風切羽(かざきりばね)は、見る角度によって色合いが変わるために“ハーピーの虹色羽根”と呼ばれて貴族の装飾品として珍重される。


 バジリスクの素材は外皮と毒袋と瞳。肉は有毒で食べられない。外皮は物理的にも魔術に対しても非常に耐性が高く、魔力も多く含むのでバジリスクの皮から作った皮革製品は非常に高価だ。そして、バジリスクによる石化を解除させる魔薬を作る素材に毒袋の毒と瞳が必須なのだそうだ。


 マンティコアは首から下は全て素材として利用される。肉は美食家達を唸らせ、外皮は非常に丈夫で様々な製品に加工される。爪や骨、尾に収納されている毒針は頑丈で武器に加工される。


 

 今はチアミルを出発して1日目の夜、クロピドと言う王都の南の街の宿の部屋で寛いでいるところ。僕は今やちょっとした金持ちだからね、部屋にお風呂が付いている良い宿を取ったよ。防犯の意味もある。念のためチアミルの自宅を出る時に『隠密』を発動してきたから尾行は付いてきていないと思うけどね。

 途中経由した王都とクロピドに到着した時に“魔手紙”を発動して送った。自宅に残してきた“受信箱”に届いている筈だ。


「ふぅ。久しぶりの移動だからか、ちょっと疲れたよ」


《お疲れ~、シュート。疲れたやろうけど、楽しくもあるよな?》


「うん、楽しい。ずっと屋敷に籠って『付与』とか円環術式の書き込みばかりしていたから、こうやって風に吹かれながらのんびりと馬車に揺られていると心が洗われるよ。もっと南に行けば、自然も増えて更に気持ちよくなるよ!」


《せやな!ところで、この旅の間にハーピー、バジリスク、マンティコア全部狩るのは難しいやろ?まずどれを狙いたい?》


「休みが30日あると言っても、チアミルとレチノルト間の移動に往復で16日くらいかかるからね、余裕をもってチアミルに帰還するつもりだし、討伐に使える日数は10日間ちょいだよ。だから「どれを狙うのか」じゃなくて、発見できたものから順にって感じじゃない?」


《それはそうやろうけど、希望順位ってあるやろ?因みに、僕としてはバジリスク、マンティコア、ハーピーの順やな》


「僕はマンティコア、バジリスク、ハーピーの順かな?脩人は何故、バジリスクが1位なの?」


《バジリスクもマンティコアも外皮が魔力と物理両方の耐性が高いやろ?シーサーペントの外皮も耐久性は高いけど、物理耐性や防水性、柔軟性に特化してたやん?せやけど、バジリスクとマンティコアは魔力耐性と物理耐性に特化してるって情報やった。ほんでマンティコアよりもバジリスクの方が体がデカいから取れる外皮の面積が広いやん?で、この外皮を使って作る新たな魔道具のアイデアがあるねん!》


「え!? ちょっと、また何か思いついたの?物騒な物は止めてよね?」


《心配ナッスィング!物騒やないで。超~便利な物やで!今はまだ内緒な。今夜のシュートの夢で公表するから楽しみにしてて。

 で?シュートはマンティコアが何で1位なん?》


「うん、ハーピーとバジリスクは食べられないけど、マンティコアは肉が絶品だって話だし・・・」


《出た!食いしんぼぅかよ?》


「美食を求める精神は、脩人から学んだつもりだけど?」


《わはは、まぁそこは否定せーへんわ》


「・・・明日に備えて、もう寝るよ。脩人も勉強頑張ってね」


《僕もあと数日通ったら春休みやから、そしたらのんびり過ごせる様になるで!お休みぃー》




じわじわ更新中

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