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46 シュート

本日もよろしくお願いします

長く開いてしまい、お待たせをいたしました

 採取依頼を出してから20日程で「キラープラントの蔓が納品された」と冒険者ギルドから連絡が入ったので、早速ギルドへ行って受け取って来た。

 キラープラントの蔦は人の腕程の太さがあるのだけど、細く削いていくことができるんだ。かなり細くしても耐久性が強くそうそう切れない上に僅かに伸縮性がある。これを使って網目状に組んで庭に設置していくよ。

 脩人に調べて貰った方法で網を組んで、『鉱物加工』で作った金具で固定していく。広い庭にくまなく設置するのには10日程かかったよ。次に『雷痺』が蔦を伝わるようにした。これは“監視の魔道具”に連動して侵入者に対して発動するように設定した。


《漸く、外回りの防衛・迎撃システムが完成したな。次は屋敷内部にも着手して行こうか》


「そっちは脩人の壮大な妄・・空想を具現化するのに大変そうだから保留ね。新しい円環術式を開発しなきゃできない事も多いみたいだし。

 とりあえずは現行の、侵入者があったら音と光で知らせて貰って、自分で対処するよ」


《いま、妄想って言おうとせーへんかったか?》


「と、言う事で次は“位置情報発信受信装置”を作っていくよ!

 受信側は『解析』でやれるとして、発信側はどんな魔術を応用すれば良いかな?」


《シュートもスルースキルに磨きがかかったな。まぁ、ええわ。

 魔力で情報を発信するんは、屋敷の監視システムにシュートの個体認識信号を発信するやつと(おんな)じで()えん(ちゃ)うん?》


「あれは僕の魔力紋を放出して監視の魔道具に認識させているから、販売するのには使えないよ」


《そっか。汎用性があって、しかもひとつひとつ違う信号を発信せなあかんもんな。じゃあ通し番号とか振って、それを発信するか?》


「通し番号?」


《うん。製造番号って呼んでも()えかな。発信機に製造順に全部違う番号を付けて、その情報を発信し続けるねん。受信側はそれをキャッチすると。そうすれば違う番号の発信情報を間違って拾う事ないやろ?》


「数字の情報を送るのか・・・どんな方法があるだろう?」


《数字だけじゃなく、文章も送れる様になったらさぁ、僕の世界のメールみたいな事できるんと(ちゃ)う?》


「そうだ!離れてても連絡が取れるって羨ましいと常々思ってたんだ!文字情報を送れるようにするのかぁ・・・これは本腰知れて研究しないといけないなぁ・・・

 ところで、脩人の世界のめえるはどうやって情報を送っているの?」


《コンピューターは0と1のビット列で情報を送ってるで》


「0と1?それでどうやって文字を作るの?」


《変換表を使うんや。ビット列と文字の対応関係を決めた一覧表を作っといて、送信側と受信側で同じ表を持っとくねん。この一覧表を文字コードって言うんや。文字コードは扱う文字の種類や用途によっていくつか種類があるで。英数字や記号用に初期に作られたんが、ASCIIアスキーコード。ASCIIコードは1文字当たりに7ビットのビット列を割りててる。例えば,「A」は「1000001」、「a」は「1100001」って具合やな。ASCIIコードは7ビットやから2の7乗、つまり128種類までの文字しか扱えん。漢字もある日本語を扱うには、種類が少なすぎる。せやから日本語を扱う文字コードでは、1文字をもっと長いビット列に割り当てなあかんくて、16ビットが多いかな》


「う、うん・・・何か、よく分かんないけど、分かった」


《あと、モールス信号って方法もあるな。モールスさんが開発した通信方法で、トントンツーや。

「・-」が「A」、「ー・・・」が「B」、「ー・-・」が「C」って具合に、これもトンツーと文字の対応関係を決めた変換表を作っとくねん》


「つまり?魔力の発信を間欠的にして、しかも長短付けて、その組み合わせで識別すれば良いって事かな?それなら作れそうだよ!」


《どれくらいの距離まで魔力を飛ばせれそう?》


「う~~ん、込める魔力量によると思うけど、遠くに飛ばすにはそれなりの魔力量が必要なんじゃないかなぁ」


《取り合えず作ってみて、検証作業が必要って事やな》


 作っては、試し、作っては試しをして、1ヶ月程かかって何とか完成したよ!

 魔力の放出する時間の長短を制御するのは特に難しくなかった。

 トンツーをこちらの数字に対応させていく作業は面倒だけどまぁ何とか変換表も作った。

 それを受信して発信機を識別するのも問題なかった。

 でも、それを文字に戻して表示させるなんて高度な処理をさせるには、僕の円環術式を作る知識が足りないし、魔道具に使用する素材も思いつかなかった。

 つまり、“位置情報発信受信装置”は作れたけど、“手紙送受信機”を作るのは今回は断念せざるをえなかった。

 そして発信機が魔力を飛ばす距離は、3段階に調節できるようにした。

 身の回りの小物を探す。

 屋敷や職場などある程度広い場所の中から探す。

 盗難にあった時に追跡する。

 と言う具合。一番短い距離の物だと、ゴブリン程度の魔石で1年は使える。追跡のための一番距離が長い物だと、馬車で2日の距離まで範囲に入れる事ができて使用期間は10日だ。大きい魔石を使用すれば勿論その期間は伸びる。だけど距離に関しては大きい魔石に変えても殆ど伸びない。魔力の減衰性質上これが限界だった。


「これは、相当高価な物を輸送する時とか、王侯貴族が使用するとか、かなり使用者が限定されるね」


《貴族や大商人で金に糸目を付けへんやつなんて、なんぼでもおるやろ?スルホンさんに見せたらびっくりしはるん(ちゃ)う?ほんで的確な顧客を見極めて売ってくれるやろ》


「だね!早速もって行こうか」


 最近、タークミィ商会は本店以外に支店を出した。本店は今まで通り庶民向けの店舗を続けていて、貴族街に貴族向けの店舗を出したんだよ。その支店の方にスルホンさんはいた。


「スルホンさん、こんにちは」


「ああシュートさんこんにちは。暫くぶりですね。“乾燥携帯食”の売れ行きが伸びてそろそろ今の工場では捌ききれなくなっています。工場を拡張しようかと思っていますので、製造の魔道具を追加で作って頂きたいと思っていたんです。そして魔道具の方は『加温』製品各種の売れ行きが順調ですよ。特に『加温』の毛布は女性やお年寄りを中心に爆発的に売れています」


「“魔竈(まそう)”や“魔燈(まとう)”はある程度飽和したので発注数が減りましたね」


「“草刈り”の魔道具や“刈り草掃除機”は庭師を中心に静かに売れ行きを伸ばし始めていますよ」


「それでも、“魔竈(まそう)”や“魔燈(まとう)”程は売れないでしょうね。それでですねぇ、新しい魔道具を作ってみたんですよ」


「・・・やはりですか。何となくそんな気がしていました。見せていただけますか?」


「“位置情報発信受信装置”です。発信機を“無くしては困る物”に取り付けておきます。で、受信機は手元に持っておく。発信機は常に自分の位置を発信していて、受信機はその位置を知ることができます」


「!?・・・つまり?」


「鍵などの身近な物を探すのにも使えますし、盗賊に荷物を盗まれたときに捜索する事もできます」


「な、なんと!何という発想力。それは壁や山などの自然の地形による遮蔽物があっても大丈夫なのですか?」


「ええ、検証済みです。最大で馬車で2日の距離まで届きます」


 距離の切り替えや魔石の消耗量、発信機の情報が交錯しない仕組みなどを説明したら、スルホンさんは口を開けて呆けた後、険しい表情になって懸念を伝えてきた。


「これは一般に販売する前に、騎士団に相談が必要だと思います。その魔道具を預からせて頂いて宜しいですか?」


「え?僕、そんなまずい物を作っちゃいましたか?お預けするのは問題ありませんが・・・罰せられるとか、無いですよね?」


「それは無いでしょうが、一般には情報を出さない様に契約を結ばされる位はあるかも知れません」


「な、何か大ごとになりそうですね。それ、そっと仕舞っておいた方が良いですか?」


「いえ、後からバレると余計に面倒です」


「わ、分かりました。宜しくお願いします。ご面倒をおかけします」


「いえ、シュートさんと組んだ時点である程度は覚悟していましたから。私に任せてください」


《これは、屋敷の迎撃システムとか喋ったら絶対アカンやつやな》


(脩人は物騒な物ばっかり思いつくよね)


《僕だけのせい(ちゃ)うやろ?ふたりは共同開発者やで?》


(『転移』魔術も暫くは開発中止ね)


《まじか・・・作るだけやったら()えん(ちゃ)うん?外に出さへんかったら()えんやし》


(だめだめだめ。僕、処刑されたくない)


《いまは様子見な仕方(しゃー)ないな。諦めるか》


 脩人と言い合いをしながら帰宅して、“乾燥携帯食”製造用の魔道具を粛々と作り始めたのだった。



じわじわ更新中


更新ペースが一定でなくて申し訳ない

次のお話の準備も始めているので、早く今作を完結させたいのですが、

如何せん能力が・・・生みの苦しみに陥っています


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