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46 脩人

本日もよろしくお願いします

 ちょっとずつや。ちょっとずつやけど、確実に体の自由を取り戻しつつある。

事故に遭ぅてから10か月以上経った。学校復帰も近くなってきたからな。ラストスパートや。

 先週は初めて杖なしで10m歩いた。棒を穴に刺す、手のリハビリのやつは刺し終わるの早くなったし、スプーンやフォークでやったら食事もそれほど困らんくなった。箸はまだ補助具付きのやつしか無理やけどな。

 PCもキーボードをゆっくりやけど打ち込む事ができる様になった。ペンを持って製図を描くのはちょっと無理やけど、製図はPCでも作れるから大丈夫や。

 

 歩くのに不安が減ったから、午前中のリハビリの無い日は家の近所に散歩に出かける事にしてん。

 残念ながら紅葉の時期は終わりを告げて、公園の植生も街路樹もちょっと寂しい事になってる。

 杖を突きながら、ゆっくりゆっくりと街の様子を眺めながらな。

 元気な時には気にもせんと通り過ぎてたけど、ゆっくりとしか歩かれへん今やから気づける景色がある。

 小学生の頃、誕生日ケーキやクリスマスケーキを買っていた店は潰れてなくなってた。

 小学校の門に植わってる桜は高さが増して枝ぶりも少し立派になってた。

 うちの家の並びの角の古い日本家屋やった家は庭がイングリッシュガーデン風になって家屋もリフォームが入ってお洒落(っされぇ~)な家になってた。3年前まで住んではった老夫婦が施設に入ってもーて、息子家族が引っ越してきたらしい。近所のおばちゃんらが「若い人らの感覚にはついてかれへんわー」とかって噂してたんや。

 そう思いながら眺めてたら、買い物に出ていた様子の奥さんが帰って()はった。


「あの?うちに何か?」


「あ、僕、5軒向こうに住んでる大工(おおたくみ)です。交通事故の後遺症でリハビリがてら散歩してて、お宅の庭が奇麗なぁ思て」

 

「ああ、大工(おおたくみ)さんところの・・・もう大丈夫なん?車で当て逃げされたんやって?」


「はい。もうずいぶん歩けます。僕、お宅がずいぶん変わられてたの、ぜんぜん気づいてへんかったなぁと思って。ゆっくりしか歩かれへんからこそ奇麗な庭に気づけて、逆に()え事あったわ思てたんです」


「そうやね。気持ちの持ち様って事やね。若いのに()え事に気づいたんやね。うちを褒めて(もろ)て嬉しいわ」


「施設に入ったおじいさんとおばあさんはお元気なんですか?僕、小さい頃によぉー飴ちゃん(もろ)たんです」


「ええ、お陰様で。義母はちょっと認知症入ってるんやけど、薬とかで何とか進行は緩やかにできてるんよ。義父は足腰が弱ってるけど頭はしゃんとしてるねん。ふたりで同室に入れたから仲良ぉやってやるわ」


「そうなんですね。お元気でって宜しくお伝え下さい。じゃあ、僕もう帰ります」


「ありがとう。伝えとおくわ。大工(おおたくみ)君も体に気ぃ付けてね」


 うん、普通に()え人やった。

 帰宅して家に入ろうとして、ポケットを探るねんけど・・・


「あれ?鍵無い。どこ入れたんやろ?」


 今日は爺ちゃんと婆ちゃんが老人会のイベントで出かけてて家が無人やねん。

 背負ってたリュックを下ろして中を探るんやけど、無い。


《上着の腰の物入れとか懐の隠しは?》


「うん~見たけど無かった。こう言う時、キーファインダーがあると()えな思うな」


《きーふぁ?》


「物忘れ捜索機とも言うな。鍵とか大事なものに受信機をくっつけといて、探したいときに送信機のボタンを押すと、受信機が音と光で存在を知らせてくれるねん」


《それ、高価な荷物に付けておいたら、盗賊に盗まれても探せるって事?》


「お、そうやな。GPSで盗難車を追って捉まえたとかってニュース聞いた事もあるな」


《そうなんだ。魔道具で作れるかな?》


「それ、貴族とか商人とかに需要ありそうやん!()えやん!作ろうぜ!」


 で、家の鍵はって言うと・・・玄関ドアの鍵穴に刺さったまんまやった。

 そう言えば出かける時、鍵かけようとした段階で「帽子忘れたわ」(おも)て取りに戻って、そのまま出かけてしもたんやわ。


《危ないよ!脩人。僕の屋敷の防御がどうとか煩く言ってたくせに!》


「悪い、悪い。でも、現代日本は平和で安全やねん」


《あれだけ危ない目に遭ってて、よく言うよ!気を付けてよ!》


「はい、はい」





じわじわ更新中

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