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34 シュート

本日もよろしくお願いします

 今夜も真っ黒な空間を歩き続けている。

 眠りについて、この空間に来た事に気づいてから直ぐに歩き始めた。

 

 僕は諦めない。


「脩人ーーー!!」


 時々叫んでみる。

 脩人はこの空間のどこかに必ず居る筈だと信じて歩き続ける。

 昨日の様に走ったりしないで、真直ぐ前だけを見て。


「脩人ーーー!!」


 行けども、行けども、真っ黒な空間。

 体は疲れない。

 空腹感も、口渇感ない。

 寒さも、暑さもない。

 不思議な空間だ。


「脩人ーーー!!」


 脩人は何処にいるのだろう?

 歩き続ける。

 立ち止まるって言う選択肢はない。

 このどこかに脩人が居るんだ。


「脩人ーーー!!」 


 時々、叫ぶ。

 ひたすら歩き続ける。

 それでも真っ黒空間は続く。

 ただ、ただ、歩く。


「脩人ーーー!」


 



▲▽▲▽▲▽


「脩人ーーー!!」


 宿のベッドで目覚めた。

 昨夜も脩人は見つからなかった。

 でも、諦めるものか!

 見つかるまで何日かかっても、毎晩、探し続けるだけだ。

 

 昼間はただ、チアミルに向けて歩を進めていく。

 乗合馬車は、故郷の町シャルパンティからアテロールへの移動の時と同じく、1泊2日や、2泊3日の行程が多い。

 王都と主要都市を繋ぐ街道には宿場町が多く整備されていて、野営が必要になる事は全くない。毎晩、宿の個室で眠れるのは助かる。野営だと、僕の寝言やうなされる声が周囲に聞こえちゃうだろうからね。脩人を呼ぶ叫び声は宿の壁を通して隣には聞こえちゃってるかも知れないけどね。いまのところ苦情は出てないから、大丈夫だろう。

 アテロールから王都への人や物の移動が多いのだろう。僕の乗る乗合馬車の前後も、同じような乗合馬車や、荷物を満載した荷馬車が走っている。昼の休憩時はそれらの馬車や荷馬車が集まって、休憩を取る。盗賊対策だろう。明らかに値の張る荷物や、お金を持った人が居るんだ。盗賊が狙いたくなるのは当然だろう。

 また、街道はたびたび森の中を抜けるので魔獣にも気を付けなくてはいけない。王都周辺の魔獣が駆逐された分、魔獣は地方に移動して数を増やしているのじゃないかとも言われている。

 ほら、今も僕らの後方、ちょっと距離の離れてしまっていた荷馬車にゴブリンが襲い掛かってきた。護衛の冒険者たちが応戦している。僕の乗る馬車の護衛も数名、応援に走って行った。

 そんな光景を眺めながらも、僕は今夜の宿で眠る時の事だけを考えていた。


(脩人、今夜こそ見つけてやる!)


 僕が(ひそ)かに決意を固めていると、ゴブリンの討伐が終わった様だ。護衛達が戻って来て、馬車は再出発した。

 同乗している客たちが一様に安堵のため息を吐いて、口々に「危険な事にならずに済んで良かったですねぇ」とか「ゴブリン程度で良かったですね」とか会話している。僕は同乗者と会話する気分じゃないので、軽い隠密をかけているので、僕に話しかけて来る人はいない。

 僕はただ只管、脩人の事を案じて車窓の景色を睨みつけるのだった。

 

 今夜こそ、脩人を見つける。

 でも、その夜も僕は脩人を見つける事はできなかった。






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