32 シュート
本日もよろしくお願いします
脩人が居なくなったら、シュートはどうなるのか?
「脩人-------!!」
僕は叫び声を上げながらがばっと上半身を起こした。見渡すと、宿のベッドの上だった。そうだった。僕は昨日、アテロールを旅立ったんだった。
目が覚める直前の映像が目に蘇る。
脩人の後ろから迫る音と影。
空中に放り出される脩人の体。
回転するように見える周囲の景色。
そして、地面に叩きつけられた。
顔面の出血が右目に入って、瞑った。
胸がドキドキしている。脩人は大丈夫だろうか?体が痛みを感じないって、やばいよね?死んじゃうんじゃないかと不安が募る。
助けに行きたいけど、行けない。脩人の為に何もできない状況に、焦燥感に苛まれる。
「はぁ~。今の僕にできる事が脩人の無事を祈る事だけだなんて、辛すぎる」
それにしても、玲子の一味って結構大きな組織なんだね。主だった者は牢屋に入れられたんだと思ってたけど、他にも仲間がいたんだね。店長や優人達の周りで不審な事件が続いてたけど、直接的に命の狙われたりしなかった。なのに、前触れなく脩人の命を狙って来るなんて、予想してなかったよ。何でなんだ!何で脩人なんだ!
手が震える。
震える手で、脩人が最後に目に焼き付けてた板の文字を思い出して紙に書く。
“木口 呆 300 ∋ 08‐93”
たぶん、こんな感じだったと思う。
脩人の世界の文字は難しくて、ちゃんと書けなくて、悔しい。
こんな事なら、脩人が勉学している時に、一緒にちゃんと聞いておくのだった。
脩人・・・
脩人っ
脩人!
早く今夜が来てくれ。早く脩人の無事を確認したい。
早く夜に。
脩人
無事でいてくれ
脩人
俺の片割れ
脩人
もうひとりの僕
脩人
何もできない僕は、一日中、乗合馬車の車窓からの眺めを睨みつけるようにしていた。
昼食は喉を通らなかった。
夕方、次の街に到着した馬車から飛び出す勢いで降りて、急いで宿を探し、夕食も取らずに布団の中に潜り込んだ。
でも、気持ちが高ぶって中々寝付けない。
(眠れ、眠れ、眠れ!)
焦れば焦るほど眠れなかった。
仕方なく宿の食堂に降りて夕食を摂り、麦酒を煽った。
酒が入った僕は再度布団に潜り込んで、漸く眠りについたのだった。




