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30 シュート①

本日もよろしくお願いします

2話に分けました

 スルホンさんと僕とで共同で“タクーミィ商会”を立ち上げてから、早くも半年が経過した。商会の名前はスルホンさんに考えて欲しかったのだけど、「シュートさんが決めるべきですよ」とやんわりと断られてしまって脩人のファミリーネームから一字を貰う事にした。「巧みな技」とか「職人」とかって意味があるらしいからピッタリだと思ったんだよね。

 “タクーミィ商会”は今のところ、“乾燥携帯食”の製造と卸しかしていない。

 調理の従業員は20人雇った。彼らは交代勤務で毎日4~6人が出勤して、午前中に調理をする。勤務は午前中だけ。午後、彼らと入れ替わりで僕が出勤して、料理を“乾燥携帯食”に加工する。日が暮れる直前にスルホン商会から職員が来るので“乾燥携帯食”を卸す。毎日500食程が売れるんだ。

 最初は冒険者を中心に売れていたんだけど、屋外で働く職人さんや、独居の高齢者にも広まった。脩人の提案で、冒険者や職人さん向けには濃い味付けの物を、高齢者向けには薄味の物を作ったら、かなり喜ばれて更に売り上げが伸びたんだよ。


 魔海獣の素材の件はスルホンさんと相談して、半年間は水揚げを待つことにした。水揚げされたらスルホンさんの商会が必要な素材を買い取って回してくれる約束だったんだけど・・・結局、未だに水揚げは無い。

 魔道具を作って、使ってみて、不具合を修正して、従業員の人に使い方を教えてと、王都に移動するまでにやらなきゃいけない事が沢山ある。そろそろ素材を手に入れないと間に合わないって事で、スルホンさんの商会から討伐採取依頼を出して貰う事にした。討伐隊には僕も参加させてもらう予定。


 この半年間、魔海獣に関して何もやってこなかった訳ではない。下準備をずっとやってきた。10日に1度程度、漁師に同行させて貰って海に出ていた。海中の『索敵』精度を確認したり、巨大な魔海獣が出た時は護衛の冒険者達の動きを観察した。

 結果、住処の深海に潜っている魔海獣を『索敵』で発見するのは不可能だった。ある程度浅い部分に出てきて初めて感知できる。

 魔海獣は僕が海に出た2回に1回くらいの頻度で遭遇した。遠くに存在を確認できただけの時もあれば、襲いかかって来て冒険者達が追い返す事もあった。冒険者たちは魔海獣を深追いする事は無かった。討伐するのはリスクがあり、追い払おうとしても諦めず襲って来る時だけ決死の覚悟で討伐するそうだ。勝率は半々らしい。

 魔海獣からの攻撃や冒険者たちの迎撃を何度も観察して、攻略方法を脩人と一緒に考案した。シーサーペントもクラーケンも頑丈な外皮がネックだ。なら、内側は?「体内で魔術を発動する事が出来れば、いけんじゃね?」とは脩人の言だ。もしくは、眼を狙う。魔力伝導力の高い素材で作った(もり)を深く刺して、魔術を流し込めば脳を破壊できるかも。僕の『魔術誘導』を使えば、何とかやれそうじゃない?と言っても、できるだけ目立ちたくないから、基本的に冒険者たちに頑張って貰って、危ないときに手を出すつもりだよ。

 それから問題は討伐した後の魔海獣の回収だ。脩人は「『引寄』と『収納』でええやん」って簡単に言うけど、あそこまで巨大な物は引き寄せられないからね?回収は冒険者たちの力を借りないといけない。だから、人の目があるから雷系統の魔術は封印だ。って宣言していたら、「海でそんなん使ったら、全員仲良く感電死やから当然や!」って叱られちゃった。




▲▽▲▽▲▽


 そして、いよいよ今日がその討伐作戦の初日だ。10日間活動して討伐できなければ諦めて、他の素材を探す予定になっている。

 う~~~ん・・・何とか獲れたら良いんだけど。魔海獣がダメなら素材探しの旅に出なきゃだね。


 港には冒険者30人と船を操舵する漁師10人が集まった。そして5艘の船に分かれて乗り込み出航した。僕は冒険者達の指揮を務めるトニンと言う男の乗る船に便乗した。トニンとその他の29人の冒険者達は、この半年間の下準備活動の間に全員顔見知りになっている。

 最初は邪険にされていたんだけど、“乾燥携帯食”の開発者だと分かると一転すごく感謝されて、食事を振舞うと船に乗る度に魚介類のお土産を大量に持たせてくれるようになった。 

 今日も「おう!シュート坊。10日間の食事、期待してるぜぇ!」と言って、背中をバンバン叩かれた。

 うぅ~痛い。期待されているのが戦闘能力ではなく、食事だけとは。ま、今まで戦闘には加わってこなかったので当然なんだけどね。


 魔海獣は武装船と漁船を見分けている様子なので、今回も4艘は漁船だ。そして普通に漁業を行う。いつも魚が集まる漁獲地点に来て網を降ろす。空は穏やか、海は凪。肉食の鳥が一羽、空を飛んで行った。暫く弾いていた網を引き揚げるが、今日はあまり釣果は良くない様だ。パラパラと入っていた魚を回収して、次の地点に移動する。そうやっていくつかの操業地点を回って、何の問題も無く帰港した。

 今日は空振りだったなぁ。僕の『索敵』にも何も引っかからなかった。また、明日だなぁなんて考えていたのだけど・・・その後5日目まで空振りの日々が続き、6日目は天候が荒れて中止になった。


 そして7日目、まだ波は高かったが、航行には問題ないとのトニンの判断で出航した。最初の漁獲地点に到着した直後、やつは襲ってきた。


「真下からだ!」


 僕の『索敵』が真下から急速に迫ってくる巨大な魔獣を感知したのと、『索敵』能力持ちの他の冒険者が叫んだのは同時だった。

 次の瞬間、ドッバァーン!!という轟音とともに海が盛り上がり、僕たちの船は散り散りに吹き飛ばされたのだった!



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