表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/132

28 シュート

本日も宜しくお願いします

スルホンさんと商談です

契約とかの話って難しい

何かおかしな点があれば、ご指摘頂きたいです

 今日は朝から快晴。商談日和だね。商談は室内でするのだから天気はあまり関係ないのだけれど、晴れていると気持ちが上向きになって「やるぞ!」って気合いが入るよね。

 商談に適した上質な服を身に纏い、髪を整えた。そろそろ、髪を切った方が良いかも知れない。襟足が跳ねて上手く整え切れずに、最後は諦めた。

 スルホンさんに見せる為に魔道具を幾つか持っていく。この1週間で作った“乾燥携帯食”もね。

 荷物袋に、『冷却』の外套と『加温』の外套、“髪乾燥機”、“携帯魔燈(まとう)”、“携帯魔竈(まそう)”と、“乾燥携帯食”各種を入れた。

 

 先週は、スルホンさんを待たせてしまったから、今日は早目に行って僕が待つ位にしようと思う。 

 よし、行くぞ!

 先週と同じく、『移動』の魔術で商業ギルド近くの路地まで飛んで、そこから歩いて行った。


「いらっしゃいませ、シュート様。お待ちしておりました」

「こんにちは。今日もお世話になります」

「こちらこそ、宜しくお願いいたします。スルホン様はまだお見えになっておりません。会議室でお待ちになられますか?」


(よし、間に合った)


「はい。会議室に先に入らせて頂きます」

「ではご案内させて頂きますね。こちらへどうぞ」

「はい。ありがとうございます」


 会議室に入ると、案内してくれたドーランさんが部屋の隅の台にお茶のセットを置いて退室した。

僕は取り敢えず自分の分のお茶を入れて、ソファーに座って待つことにした。

 熱々のお茶をフーフーしながら飲む。馥郁(ふくいく)とした香りが鼻に抜けていく。ほんのりと甘くさっぱりとした味のお茶だ。


 それほど待たされることなく、スルホンさんがやって来た。今日は息子さんはおらず、お1人だった。


「お待たせ致しました。シュートさん、1週間ぶりです。お変わりありませんか?」

「おかげさまで。スルホンさんもお元気そうで良かったです」


 僕はスルホンさんにお茶を入れて自分の茶器にも足してから、言葉を続けた。


「今日は僕の作った魔道具を幾つか持って来ていますので、契約の話の後にお見せしますね。あと、“乾燥携帯食”もまた作ってきてあります」

「おお!おお!それはありがたい!是非にシュートさんの魔道具を見てみたいですし、“乾燥携帯食”も飛ぶように売れていますので、卸して頂けるのは助かります」


 早速とばかりに、スルホンさんは契約形態についての案を話し始めた。

 ⎯ まず、スルホンさんとシュートで新しい商会を立ち上げる。これに2人が同額を出資する(シュートの資金が足りなければ、スルホンさんから融資してもらう)。これは2人の権利も義務も等しく同じ共同経営者となる為だ。この商会は“乾燥携帯食”と魔道具を主に扱う商品とする。

 ⎯ 売上から経費・人件費を引いた純利益の内、1割を内部留保に、3割を設備投資に、残りの6割をスルホンさんとシュートで等分配当とする。

 ⎯ 業務は、シュートが開発・製造部門を担当し、スルホンさんが組織や工場・店舗の立ち上げと販売を担当する。この業務は責任者と言う事であって、専任ではない。必要に応じてお互いに補いあう。

 ⎯ “乾燥携帯食”の製造の為に、ここアテロールに工場を建て、従業員を雇う。

 ⎯ スルホンさんの商店から信頼のおける従業員を1人、引き抜いて工場長に据える。

 ⎯ “乾燥携帯食”の調理までは従業員が手作りで行い、料理を乾燥処理する所からは、シュートが専用の魔道具を作成して、それによって処理する事で技術が洩れないようにする(魔道具を販売せず、自分の工場で稼働する分には、魔道具技師として未登録でも問題ない)。

 ⎯ 商品の売り上げの状況に合わせて、アテロールの工場を拡張するなり、他の街で増設するなりする。

 ⎯ スルホンさんは一般的な魔道具を扱う店を王都もしくは近郊で開店し、足掛かりを作っておく。できればシュートの登録に必要な、魔道具技師の推薦人の当たりもスルホンさんが付けておく。そこまでの準備に1~2年は必要と思われる。

 ⎯ シュートが開発した魔道具はシュートが王都で登録が済み次第、販売を開始する。

 ⎯ それまでシュートは“乾燥携帯食”作りと販売に専念し、商会の資産を増やしておき、王都の魔道具店の資金に回す。

 ⎯ 製造した“乾燥携帯食”は、全てスルホンさんの息子さんのフィンさんに卸せば、小売りは全てフィンさんがやってくれる。

 ⎯ フィンさんが売れ行きの動向や購入者の感想などを分析し、シュートに還元してくれるので、料理の品目をより求められる物へと更新していく。

 ⎯ シュートは1年間を目標に“乾燥携帯食”の工場を安定させて、完全に任せられる状況にして、王都に移動する。

 ⎯ アテロールの工場は、スルホンさんの息子さんに時々様子を覗いて貰って、さらに商業ギルドに年4回の監査を委託する。

 ⎯ この内容を本日は持ち帰り、お互いが検討する。

 ⎯ 問題なければ次回(来週)、契約を交わす。契約時には、商業ギルドに公証人を立てて頂き、証文を発行してもらう。契約書には魔術契約書を使用する。

 

 以上だ。

 何だか難しくって、情報量も多すぎて、今すぐには理解しきれないのだけど、問題ない気がする。

 ただし、「何となく大丈夫だろう」で契約してはいけない事は、僕にだって解る。魔術契約書を用いての契約にはそれ自体に強制力があるし、公証人を立てての契約を破ることは信頼を著しく損なう事になり、その街では二度と商取引が出来ないといった事態に陥る可能性があるのだ。

 スルホンさんの配慮で、1週間の猶予が貰えたから商業ギルドの人や脩人とも相談できるし、今日のところはこれで良いんじゃないかな?


「最初の出資金はいくらになりそうですか?」

「それぞれ大金貨5枚ずつ、合わせて白金貨1枚を予定しています」

「はぁ、それほどしますかぁ。僕は大金貨1枚しか出せません。残りをお借りする事になりますが、大丈夫ですか?」

「大丈夫ですよ。全額ご融資になる事を想定して準備しておりました。失礼致しました。私の想定よりも資金をお持ちだったのですね。勿論、ご融資は無利子でお貸し致しますよ」

「はは・・助かります。商会が失敗しないように頑張ります」

「大丈夫ですよ。シュートさんの魔道具は絶対に売れます。その魔道具を如何に世間に広めるか、利益を出すか。これは私の腕の見せ所です。さて、このお話しは今日のところは終了して、魔道具を見せて頂きたいのですが、宜しいですかな?」 

「はい、けっこうです。では、帰りに1週間後の同じ時間で、会議室と公証人の予約を取りましょう」

「ありがとうございます。後から何か疑問点などが出てきましたら、いつでも店の方にいらして下さいませ。ご納得頂けるまで説明させていただきますので」


 商会立ち上げの話しを終えた僕は、説明を加えながら順番に魔道具を取り出した。

 最初に取り出したのが『冷却』の外套と『加温』の外套。


「これは外套に『冷却』効果を付与した物と、『加温』効果を付与した物です。外套以外にも、手袋、服、寝具など、幅広く応用できます。貴族の方々は勿論、騎士、衛兵、冒険者、馬車の御者など屋外で仕事をする方々にも喜ばれる逸品です」

「おお!かなり需要がありそうですね。私も欲しいです」


 次に取り出したのが、“髪乾燥機”。


「これは温風を出す魔道具です。髪の毛を乾かす為に開発したので、“髪乾燥機”と名付けました。髪の毛を濡れたままにしていると、体が冷えて風邪を引きやすいですし、髪の毛が傷んだり、頭皮が痒くなったりします。貴族の方々に喜ばれる逸品です。できれば、魔力の消費量を抑えた物を開発して、庶民の方々にも手に入る商品にしたいと思っています。それと、髪の毛を乾かす以外にも、濡れた靴や服を乾かす事もできますから、冒険者の方々にも喜ばれるでしょうね」

「何と言う発想力。はぁ。あなたはやはり天才だ。あなたと巡り合わせてくれたヒュギエイア様のお導きに感謝いたします」


 そして、“携帯魔燈(まとう)”。


「これは携帯できるように小型化した魔燈(まとう)で、“携帯魔燈(まとう)”と名付けました」


 点灯すると、スルホンさんが思わず目を瞑りたくなるほどの光量だった。


「おお!眩しい!こんな小型でこれほど明るいのですか!?」

「これの設置型の大型の物も作りましたが、そちらはもっと明るいです。これだけ明るくても、従来の灯りよりも魔石の消費量はやや少ない位です」

「まさか、そんな!従来品よりも魔石の消費量が少ないだなんて、信じられません!いや、シュートさんの魔道具なら、あり得るのか?」


 最後に、“携帯魔竈(まそう)”を出す。


「これは、初めてご一緒した野営の時にお見せした、“携帯魔竈(まそう)”です」

「ああ!これ、これ!これも小型なのに強い炎を出していましたね。何故、こんなにも威力の強い魔道具を産み出すことができるのか、そのからくりを是非に教えていただきたいものです」

「それは、商会が上手く軌道に乗って魔道具の販売が現実になってきた頃にでも、お話ししますよ」

「そうですね、私たちはまだ契約も交わしてないですからね。当然です。ちょっと興奮して我を忘れかけてしまいました」

「ふふっ。他にもまだ魔道具はあるのですが、取り合えず今日は以上です。最後に、この1週間で作った“乾燥携帯食”を卸しますね。金額は前回と同じです。新しい料理もありますよ」


 僕は荷物袋から“乾燥携帯食”各種を出した。新しい料理も含めて、全部で200食程ある。


「何と、まだ他にも作っているのですか。はぁ~、あなたの発想力・開発力は無尽蔵ですね。“乾燥携帯食”をありがとうございます。代金は商業ギルドの口座の方にお振込させて頂きますね」


 その後、会議室の予約時間一杯まで世間話をしてから、2人はギルドを後にした。



 

ヒュギエイア様はサルース教の唯一神の名



仕事の関係で、次回更新が2週間以上先になるかも知れません

あしからず

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ