26 脩人②
本日も宜しくお願いします
作戦、作戦
「騒がしくてすんません。で、続きなんですけど・・・」
続いて、僕は優人君の事を話した。
僕の初デートから2週間程後、バイト中に聞いた優人君の、「玲子さんと付き合う事になった」宣言と、昨日僕が遭遇した、玲子さんと仲間の男達による集団暴行と優人君から聞いた話、僕も優人君も「玲子さんとの仲を内緒」にするように言われていた事、奴らには警察に知り合いがおって訴えが揉み消される心配があって、まだ通報していない事を話した。
次に、それまで肩を震わせながら無言で話を聞いていた店長が話し始めた。
「コンビニの店長をしています。加賀と申します。妻と3歳の娘が1人います」
店長も強盗事件の後、玲子さんと急接近した。玲子さんは「強盗がまた来るんじゃないかと不安で不眠症になってしまった」と店長に相談していた。何度か相談されて、その度に励まして、怖いなら店長と同じシフトで出勤すれば「俺が守ってあげるし」って提案したりしていた。その甲斐あって玲子さんはだんだん元気になっていった。
ある時、玲子さんから励ましのお礼と称して飲みに誘われた。美人の玲子さんに誘われて、悪い気はしなかった。心は揺れたけど、でも若い子と2人で飲みに行くやなんて、奥さんにバレたら浮気を疑われて大変な事になる。だから店長は、最初は断ってた。でも、何度も誘われているうちに、「まぁ、一回くらい良ええかな?」と思って、誘いに乗って飲みに行った。
最初は酒量は控えめにしていた。けど、玲子さんに煽てられているうちに、徐々に杯を重ねていき・・・気がついたら、ホテルのベッドで寝ていた。裸で。隣には同じく裸の玲子さん。彼女は泣いていた。
慌てて起きて、何があったか訊ねたら、店長が玲子さんを無理やりホテルに連れ込んで行為に及んだと言う。その時突然、厳つい男が部屋に押し入ってきた。その男はヤクザの若頭で、玲子さんはその男の彼女なのだと言う。「俺の女を手篭めにしたな!? 慰謝料を寄越せ!200万円や!」となって殴られて、手持ちの5万円を取り上げられた。
「200万円なんてお金、妻にバレん様に準備するなんて無理ですし、取り敢えず、準備できるまで待ってくれって言うてるんです。そしたら、今日はコンビニの方に押し掛けてきて、店内の商品をいくつか盗って行かれて、脅しかけられて、俺、もうどうして良いか分からんくて。助けて下さい!」
「お話はよく分かりました。美人局は立派な犯罪行為です。恐喝罪や詐欺罪による処罰の対象となります。『1人を恐喝して財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する』となっています。それから民事上も、民法96条によって規定があって、詐欺又は強迫に基づく金銭給付として、取消しの対象となり、金銭の返還請求をすることができるんですよ。暴力や精神的苦痛を受けたとして、慰謝料も請求できます」
「そんなちゃんと決まってるんですね!心強いですわ」
「私共の方でも警察に知り合いが居りますし、弁護士を伴って正式に被害届を出せば、そう簡単に揉み消すとか無理ですから大丈夫ですよ。大方、その男達の言う警察の知り合いってのも只の脅し文句やと思いますよ」
「弁護士費用とかどうなりますか?」
「弁護士への依頼時に、着手金を一括でお支払い頂くのが原則です。ただし、特に金銭を獲得できる可能性が高いケースや、着手金の一括払いが難しい事情がある場合は、ご相談に応じる事も可能ですよ。お友達の優人君は資金が無いとの事ですが、店長さんには少しご負担を頂けるのではないですか?優人君と店長さんの場合、慰謝料を請求できる可能性が高いですから、残りの弁護士費用はそこから頂く事が可能です」
「ああ、ありがたいですわ!」
「店長さん、どこのホテルやったか、覚えてはりますか?近所の防犯カメラの映像を入手できれば、お2人がホテルに入った経緯が、無理やりやったかどうか分かりますし、こちらに有利な証拠になると思うのですが」
「ホテルって大抵、防犯カメラあるやろうしね!」
「ホテルはそのヤクザの息が掛かってるか、傘下かも知れないですから、入り口付近が映ってる近所のカメラを見つける方が良えでしょうね。手を回される危険がありますから、警察に被害届出す前に入手した方が良えですわ」
「な、なるほど」
犯罪行為が確かにあったという証拠をある程度固めてから被害届を出すのには意味があるらしい。被害届って言うのは、犯罪の被害にあった場合に、どのような被害にあったかを警察に申告するための書類で、イコール捜査開始って訳やないらしい。
被害届を出すことによって、警察に何らかの事件が起きたことは伝わる。それは捜査のきっかけにはなるんやけど、被害届の提出には捜査を開始することを義務づけるような法的効果はあらへんのやって。せやから、事件性や再犯性を強く印象付けて捜査、起訴まで上手く持っていかなあかんねん。
もし、捜査してくれへんかったり、刑事事件としては証拠が足りずに検察で不起訴処分になったりしてもうたら、民事上は不法行為が成立する可能性があるような行為であっても、“不起訴処分”というお墨付きを与えてまうことで、加害者が開き直って一切賠償を行わないという態度に出てくるかも知れんねんて。
そやから、全部終わるまでは長期間かかるって。場合によっては1年以上になるかもと言う事やった。
その後、正式な弁護士の申し込みに事務所に行く約束やら、その後の手続きの流れなんかを話し合った。
裁判になって、僕が裁判所で証言するってなった場合、保護者の同意が必要とかで、両親には話を通しておいた方が良いと薦められた。両親に話す事は店長も了承してくれた。
はぁ、これから大変やなぁ。あ、僕はあんま関係ないか。




