20 シュート
本日も宜しくお願いします
脩人、風邪は大丈夫かい?そっちは魔術が無い代わりに、医療技術が発達しているし栄養状態も良いから、大事にはならないとは思うけど、気をつけなよ?心配だなぁ。
そうだね。こっちの庶民の病気での致死率は、脩人の世界と比べて高いかもね。ちゃんと調べられている訳じゃないから感覚で、だけど。
そこで、髪を乾かす魔道具ね。うん、ハニービーを狩って来たからその素材でちょっと作ってみようか?大切なのは、風量、温度、重量、髪の健康ね。
ここ数日の僕は、魔獣討伐にせいを出していたんだ。脩人が昆虫系魔獣の討伐方法を提案してくれたから、言われた通りにやってみた。まず、ソルジャーアントとハニービーのハグレを見つけて、『雷撃』や『雷痺』が効く事を確認した。脩人の言う通り、問題なく攻撃が通じたよ。
次にハニービーの巣を探した。巣探しは、中々に大変だったよ。闇雲に森を歩いてみても見つからない。最終的にはハニービーの群れを見つけて、『隠密』と『索敵』で後をつけていって、巣に辿り着いたよ。半日もハニービーの後を付いてまわる破目になって、大変だったけどね。山を登ったり下りたり、谷川を渡ったり。漸く巣に辿り着いた時には日が暮れてきてしまっていて、山の中で野営をする事になってしまった。巣の攻略は翌日に持ち越した。
翌日は日の出前から下準備を始めた。巣から逃走する経路を予め決めておき、そこに『付着』を付与した蜘蛛糸を枝にたくさんぶら下げておいた。100歩ほどの距離の間にだいたい50本ほど。予測されないように、不均等に設置したよ。
まず、巣を攻撃して、巣からハニービーが一度にたくさん出てきたら、罠を仕掛けた逃走経路を走り抜ける。全部とはいかなくても、蜘蛛糸に絡まって数を減らしてくれたら、後は個別に討伐していけば良いって作戦だよ。
よし、準備は整った。『隠密』を発動し直して慎重に巣に接近して、藪の陰から観察する。巣は崖にへばり付く様に形成されている。よく見ると、崖には巨大な岩棚があって、巣はそこに沿うように作られている。岩棚の奥行きは10歩程度の様だ。そして巣の幅、高さも10歩程の大きさだ。
巣の周りには、6匹のハニービーがいる。3匹は巣に止まっているが、残りの3匹は周囲を警戒する様に飛び回っている。
僕は、慎重に5つの高威力『水弾』を手元に発動し、更に『索敵』によって誘導できるよう準備した。ハニービーがこちらの魔術に気づく前に射出する。
5つの『水弾』がそれぞれ真っ直ぐにハニービーに飛んで行き、巣に止まっている3匹に直撃。残りの2つは飛んでいるハニービーを追尾して、これも撃墜した。
すると、生き残った1匹のハニービーが威嚇の「ギシギシギシギシ」といった音を出し始めた。それに呼応したのか、それとも巣に止まっていたハニービーを仕留めた魔術の音と振動に反応したのか、巣から大量のハニービーが吐き出されてきた。その数は百までは行かなさそうだが、かなりの数だ。
ハニービーが僕に狙いを定めたのを確認してから、予定していた逃走経路を走り出した。『身体強化』をかけて全力で走る僕の後を、大量のハニービーが追尾してくる。ハニービーの飛ぶ羽音が「ブンブン」と五月蝿い。音が大きいから、僕の直ぐ後ろにまで迫っている様に感じるけど、『索敵』で確認すると、彼我の距離は30歩ほどは空いている。大回りして側面から仕掛けようとする個体もいる様だけど、僕の走る速度が速いからか追い付けず、今のところ問題ない。
程なく罠地帯に到達した。『索敵』を前面にも集中して、僕自身が引っ掛からない様に気をつけてながらジグザグに走る。すると、ハニービーが次々と蜘蛛糸に絡まって行く!よしっ!
僕はハニービーに罠を見破られない様に、罠のある場所とない場所を不規則に選んで走り続けた。
2時間くらい、走ったり戦ったり走ったりして、漸く一息つけた。ふぅー疲れたよ。
罠には無数のハニービーが掛かっている。60匹は下らないと思う。罠から逃れようとブンブンと羽音を鳴らしながら、未だに藻掻いているハニービーも数匹いるが、しかし、藻掻けば藻掻くほど蜘蛛糸は絡まり、既に羽ばたけないものが殆どだ。
地面には、僕の『雷撃』で黒焦げになったハニービーが散らばっている。生き残ったものは居ない様だ。これから罠に掛かったハニービーの討伐と、それから巣を確認しにいかなくてはいけない。
罠に掛かっているハニービーは逃れようもない。まずは、巣を確認すべきだろう。必死に走った巣までの道を戻った。
巨大な巣を前にちょっと途方に暮れる。どこから手をつければいいんだ?蜂蜜を損失しないように解体しなくてはいけないし、『索敵』で探ると、中心部に大きな魔獣が1匹と小さな魔獣が10匹ほど確認できる。
色々と考えて、結局、外側から少しずつ『飛斬』で切り刻んで、『引寄』で岩から剥がして回収していった。蜂蜜が垂れる前に素早く『収納』に回収する。そうして、漸く小さな魔獣が固まっている場所に到達した。果たして、その小さな魔獣はハニービーの幼体だった。真っ白な体は軟らかく、うにうにと動くだけで飛翔能力も攻撃能力もなく、簡単に討伐できた。そして遂に大きな魔獣に到達した。それはハニービーの上位種だった!
上位種を囲っていた巣を剥がした瞬間、ゴォー!! と、物凄い勢いでこちらへ飛んできた。
僕は冷静に、予め発動準備していた『雷撃』で撃ち落とした。
ふぅ、発動準備していなかったら危なかったよ。普通のハニービーの飛翔とは比べ物にならない位に速かった。
そこからは、もう単純作業の繰り返しだった。残りの巣を回収して、罠に掛かっているハニービーを一匹ずつ討伐、回収して、全てを終わらせた時には日が暮れてきて、またしても野営をする事になってしまった。
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一昨日の昼頃に自宅に帰りついて、その日の午後と昨日とで、ハニービーの解体作業を終わらせたよ。数は多かったけど、魔石、眼、針、羽根、外骨格を採取するだけで、皮を剥いだり、肉を切り分けたりって作業が無いから、1匹ごとの作業時間が短いからね。
巣から採取した蜂蜜の処理はまた明日だな。
今日は、脩人からの課題のドライヤァって言ってたかな?髪を乾かす魔道具を作ってみるよ。まず、ハニービーの脚の外骨格を適当な長さに切って、この魔道具の本体にするよ。使った脚は片手でしっかり握れる太さの物を選んだよ。ハニービーは素早く飛翔するために、外骨格が丈夫かつ、軽くできているんだ。これで重量の問題は解決だよ。
次に外骨格の内側に、風の魔術の円環術式、『加温』の魔術の術式、2つの術式を関連付ける術式を書いていく。風速は脩人の世界のドライヤァを参考にしたよ。『加温』は高温と低温の2種類の術式を書いた。
そして外骨格に長細い穴を開けて、ホーンラビットの骨を削って作った釦を嵌めた。この釦には、本体に書いた円環術式を起動させるための円環術式を書いてある。穴には4ヶ所に凹凸を付けて、釦が4段階に動くようにした。すなわち、本体内部の円環術式に触れない位置、『加温』無しの位置、低温の円環術式の位置、高温の円環術式の位置だ。釦の起動の術式が、接触している円環術式を起動させるんだよ。
最後に、魔道具を動かすための燃料になる魔石を入れる場所を作る。そこから、釦の円環術式に魔力を供給する道筋を作って、完成だ。
「よっし、完成した!“髪乾燥機”って命名。さぁ、試験運転をするかな」
僕は庭に出て、“髪乾燥機”を起動した。
ブォ~~~ッって温風が出てきた!髪に当てると、バサバサと髪が煽られる。うん、だいたいこんな感じだよね。
その後、風量や温度の微調整を繰り返して、1日かけて“髪乾燥機”を完成させたよ。
最後に、風の取り込み口と、吹き出し口にカバーを付けた。取り込み口は、ハニービーの羽に穴を沢山空けた物を張り付けた。吹き出し口は、ハニービーの外骨格を切ったり削ったりして、縦に先細りになった形の物を作ったよ。それから、短く切った外骨格に側面に触覚を沢山差し込んで、髪を梳かすブラシの形にした物も作った。最後に、カバーを無理やり剥がしたら、内部の円環術式が破壊される仕掛けを施して完成だ!
暫く使ってみて、問題なければ量産するかな。一番良いのは、髪の長い女性に使ってもらって感想を訊く事なんだけど、僕はまだ魔道具技師として登録していないから、他人に渡すのは駄目なんだよね。
あと、以前作った『産水』『乾燥』一台二役の魔道具も量産するよ。ハニービーの外骨格が沢山あるからね。
さぁ、暫く忙しくなるかな。




