14 シュート
本日も宜しくお願いします
男同士の性行的な表現が出てくるので、ご注意ください
僕は涙を流しながら目を覚ました。
「脩人、素敵な贈り物をありがとう。それから、誕生日おめでとう」
うん、楽しかったよ。間違いなく、思い出に残る特別な日だ。今日は僕がこっちで誕生日の1日を過ごすよ。
ベッドから出て、身支度を整えてから朝食を取りに行く。今日は冒険者の格好ではなく、実家で身に付けていた貴族の子弟らしい服装にしたよ。
食堂に足を踏み入れると暖炉に火が入っており、その暖かさにほっこりする。壁には沢山の灯りの魔道具が点っている。テーブルは10組ほどあり、十分な空間を空けて配置されている。テーブルの天板は鮮やかな飴色の木肌が美しい。暖炉の脇にある柱時計が、ボーン、ボーン、ボーン・・・と時刻を知らせた。時計の針は8時を示している。
席に案内されて座ると、殆ど待つことなく朝食が運ばれてきた。高級な宿の朝食は柔らかいパンと野菜スープ、腸詰め肉のソテーだ。飲み物には香り高い紅茶が出た。とっても美味しく、贅沢な気分になれた。
さて、今日はこの街、カルボを見て回るよ。まずは教会を目指す。パミドロルで信仰されているのはサルース教と言う一神教の宗教だ。唯一神の名はヒュギエイア。ヒュギエイア様もしくは女神様と呼んでいる。僕は脩人の影響か、幼少に虐げられた影響か、思考は無神論的だ。まぁ、僕と脩人の不思議な状況を鑑みるに超越的な存在は感じるけど、ヒュギエイアが本当に神として存在するかどうかは懐疑的だ。
だから、今まであんまり教会に行かなかったんだけど、教会の建物ってどの世界でも美術的な観点では見学する価値があると思うんだよね。
カルボの街のサルース教の教会は石造りで、2本の尖塔がそびえ立っており、建物本体の壁にはステンドグラスが填め込まれた窓が複数並んでいるのが見える。教会の前には前庭があり、中央に泉が配置されている。
教会の入り口の扉の手前部分にある、玄関廊を潜り抜けて教会内部に入ると、ベンチが並んだ広い空間、祈りの間が目に飛び込んでくる。窓が小さく少ないため室内は暗めで、厳かな空間を創り出している。
重い天井と壁を支えるために、半円アーチが多用され巨大な石の柱が縦に列をなして並んでいる。列柱と壁との間に側廊と呼ぶ空間が両側にある。側廊は祈りの間よりも天井が低めだ。
入り口を背に立つと、祈りの間の突き当りにある半円形の空間に自然と視線が向く。そこには祭壇が設置されている。祭壇の間の天井は半ドーム状になっており、宗教の逸話をテーマにした画が描かれている。
僕は左側の側廊をゆっくりと、窓に填められたステンドグラスをひとつひとつ眺めながら歩いて、祭壇の間に辿り着く。祭壇の間は2段高くなっている。幾何学模様の石の床、金ぴかの祭壇、祭壇に祭られた真っ白な女神像。女神像の背景はコバルトブルーに塗られていて、コントラストで女神像が際立って見える。そして一際緻密なステンドグラスの填まった窓、半ドーム状の天井の宗教画。長い時間眺めたあと、反対側の側廊を歩き、入り口に戻ってきた。
教会を後にした僕が次に向かったのは、街の南側にある美しい湖だ。乗り合い馬車で30分ほど移動した先にその湖はあった。藍色とも群青色とも例えようのない美しい色の水を湛えており、背景に鎮座している山が湖に映り込んでとても綺麗だ。湖の美しさに感動した女神様が沐浴したと言う逸話が神話に残っているそうだ。
湖畔をしばらく散策した後、昼食は湖畔に立つ高級なレストランに入った。柔らかい白パン、湖で獲れる魚や蟹、森で獲れる魔獣の肉、地元で収穫した野菜などをふんだんに使った料理が出てきた。脩人の世界の料理も美味しいけど、こっちの物も負けてないよ。
次は、街中に戻って、冒険者向けの雑貨屋と武器屋に行く。買い物の予定はない。商品調査と、脩人を楽しませるためだ。流石、大きい街なだけあって、僕の家のあった町の店よりも品揃えが良い様だ。旅の道具類は僕が作った魔道具を越える様なものは無かった。えっへん!
そして最後に冒険者ギルドへ立ち寄った。夕刻に合わせて立ち寄ったので、依頼達成の報告に来ている冒険者がたくさんいる。併設の酒場では祝杯を上げている集団もいて、非常に賑やかだ。その中に昨日まで僕の乗った乗り合い馬車の護衛をしてくれていた冒険者の集団もいた。纏っている軽い『隠密』のせいで彼らには僕の顔は分からないだろう。掲示板を見るために入っていくと、突然、首根っこを捕まれた。
「えっ!?」
「おう、お綺麗な格好した坊主、良いとこの坊っちゃんか?ここは坊主の様なガキの来るとこじゃねぇぞ!」
顔だけで何とか振り返って見れば、大男が僕の襟首を掴んでいる。完全に吊り上げられた僕は両足をバタバタさせながら訴えた。
(『隠密』が効いてない!? 魔力持ちかな?)
「す・・・す、す、す、すいません、すいませんっ。放して下さい!」
「ここには大人になってから来るんだな!」
「ぼ、ぼ、ぼ、僕は、きょ、今日、成人したんで、き、記念に立ち寄っただけです。す、直ぐに帰ります」
「はぁ!? そんなちっこい体で成人かよ?目出度ぇじゃねぇかぁ。祝杯上げなきゃな!よしっ俺が一杯奢ってやるよ!」
「えっ!? えっえっ!? あ、放して、放して、放してぇ!」
大男は僕の訴えなど無視して、ずんずんと酒場の方へ歩いていく。大男に抱えあげられている僕に成す術は無かった。大男の向かったテーブルには冒険者が3人いた。
「ダナゾールぅ!お前ぇ、そんな趣味あったんかぁ?」
「未成年はヤバいっしょー!?」
「そんな小さな体のケツ穴にお前ぇのデカぶつ突っ込んだら流血だべや!」
「うるせぇ!俺の好みは熟女だわ!ケツ大きめの安産体型にそそられるわ!俺ぁこいつの成人祝いに一杯奢るだけだぜぇ!」
「熟女かぁ?女は若い方が良いっしょ!生娘最高!」
「そんな事ばっかやってぇーと、いつか生娘の父親に刺されるぞ!?」
「麦酒!麦酒持ってこい!5杯だ!」
「あ、あ、あ、あのっ!ぼ、僕、帰ります」
「あぁん!? 俺の酒が飲めねぇってのか!? いい度胸じゃねぇかー?」
「君、素直に奢られときなよ。ダナゾールが言い出したら煩いよ?」
「そうそう。成人した夜は、皆、酒飲むっしょー。ま、俺は成人前から酒は飲んでたけどなっ」
「朝まで飲もうぜっ!」
僕は仕方なく、一杯だけ奢られる事にした。初めて飲んだ麦酒は苦くて、苦くて、何でこんな物を、あんなに旨そうに飲むんだろうかと、信じられない気持ちだった。何とか一杯だけ飲み干したけど、頭はくらくらするし、げっぷが出るし、口の中も気持ち悪い。
皆がよそ見している瞬間を狙って『隠密』を深くかけ直して、そそくさとその場を後にした。
その後、どうやって宿に帰りついたのか、いまいち覚えてない。気がついたら、翌朝になっていて、宿の僕の部屋のベッドの上だった。服も靴もちゃんと脱いでいたのは不思議だ。
僕はお酒が飲めない体質らしい。
もう二度と!絶対に!お酒なんか!飲むものか!!
旅は続きます
ヒュギエイアはギリシア神話に登場する女神で、健康の維持や衛生を司るのだそうです
ローマ神話ではサルースの名で呼ばれるそうです
薬名前繋がりで、名前を借りました
シュートの世界で医療に関係するような設定はしていません




