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1 シュート

本日も宜しくお願いします

シュートの回です

 僕はシュート シャルパンティエ。

 突然だけど、僕はふたり分の人生を生きている。

 何を言っているのかよく分からないって?大丈夫だよ。僕も何が起こっているのか、よく分っていないんだ。


 僕はダルベート大陸にあるパミドロルと言う大国の辺境貴族の家に生まれた。家格は伯爵家だよ。うちは武門の家系で父上は騎士だ。今でこそダルベート大陸は安定しているが、祖父の代までは戦乱の世であったらしい。戦乱の時代、うちは多数の有能な騎士を輩出したらしい。父上はこの武門の家風を次代に引き継ぐべく、子供達を厳しく育てる方針だ。兄弟は4人で、大きい兄上、姉上、小さい兄上、そして僕が末っ子だ。

 ふたりの兄上は体も大きく、武術の才能があった。でも、僕は母上に似たのか、背は小さいし、力もあまり強くない。武術もあまり得意ではない。“出来の悪い息子”だ。


 僕は、5歳頃から毎日午前中に受けている武術の鍛練の時間が大嫌いだ。父上や兄上に剣で打たれて何度もぶっ飛ばされた。直ぐに立ち上がらないと、父上にもっと酷い目にあわされてしまうから、必死に立ち上がった。そうやって何年も頑張ったけど、父上の満足いく成長はしなかった。それで13歳頃には見放されてしまった。兄上達や姉上にも馬鹿にされている。母上は僕にあまり関心が無いみたい。


 それから僕は小さい頃から“頭が足りない子”って周囲から思われている。それは僕が“夢の中の自分”の話をしていたからだ。そのせいで、使用人達にも馬鹿にされている。今はこの“現象”は自分だけの特殊な事だと言うことを理解しているので、口には出さないようにしている。


 “夢の中の自分”って言うのは、僕が夜眠っている間に見る夢の内容の事だ。僕は夢の中で体験する全てを覚えている。夢の中で僕は脩人(しゅうと)と言う名前で、現実世界の僕と同じ歳で同じ速度で成長している。脩人(しゅうと)はここいらでは見慣れない人種で、のっぺりした顔に黒髪、焦げ茶色の瞳をもっている。

 脩人(しゅうと)の家は農家らしい。農家と言っても僕の領地でよく見る農家とは違うらしく、とても裕福そうだ。脩人(しゅうと)も小さい頃から“夢の中の自分”の話をしていたせいで“変わった子”だと思われている。だけど家族仲は良さそうで、脩人(しゅうと)は家族に大事にされている。すごく羨ましい。


 小さい頃は、僕も脩人(しゅうと)も、皆が夢の中で“もう一人の自分”を体験していると思っていた。皆も時々“昨夜見た夢”の話をしていたし、自分も皆と一緒だと信じて疑っていなかった。

 けど僕の“夢の話”に皆が度々不思議そうな表情を浮かべていたり、そのうち哀れみの含んだ表情をするようになり、ついには嘲るような目で見てくる様になって、どうも違うなと気がついた。

 よくよく聞いてみると、皆は、夢を見ても起きた瞬間に忘れてしまうとか、夢の中で見る事にあまり物語性が無いとか、一貫性がないとか、そもそもそれほど頻繁に夢を見るわけではないとからしく、これは僕だけの特殊な体質なのだと理解した。


 そんな事があったせいか、僕はあまり人と関わるのが好きではない。だから、自由な時間はいつも図書室にこもって本を読んでいる。脩人(しゅうと)に触発されて魔術の本や、魔道具、錬金術や鍛治などの物作りに関する本をよく読んでいる。


 脩人(しゅうと)の世界には魔力や魔術が無いようだ。その代わりカガクギジュツと言うものが発達している。

 灯りは眩しいほど強い。毎日お風呂に入っている。馬が付いていない鉄の塊が道を走ったり、長く連なってレールと言う物の上を走ったりする。鉄の巨大な塊が空を飛んでいるのを見たときには打っ魂消(ぶったまげ)た。

 他にも遠くにいる人に瞬時に声や手紙を届けたり、何万冊もの本が小さな鉄の塊に収納されていたり、魔力もないのに色んな便利な物があるのは不思議だ。


 ところで、僕は三男だから、成人したらこの家から出ていかなくてはならない。独りで生活していく為には何か稼ぐ手段を見つけなくてはいけない。僕は武術が苦手だから、魔術の習得に力を注ごうと思っている。

 父上は魔術師達を離れた安全な場所からチマチマ攻撃する軟弱な集団だと馬鹿にしている。勿論、父上も一通りの魔術は使えるよう訓練は受けているが、主に『身体強化』と『障壁』位しか使ってない様だ。自分で魔術を行使しなくても、攻撃魔術道具とかを使う方法もあるし、魔術の訓練にかまけている暇があるなら武術を鍛えろって考えなんだよね。

 でも、大陸が安定している今、武門がどうとか、正直、古くさい考えだと思う。それぞれが得意な事で貢献できれば良いんだ。


 魔術を発動するのに大切な事は、魔術を行使した時に現れる現象を具体的にしっかりと心の中で思い浮かべる事だ。なので実際に魔術を見たことが無い人は、本を読むだけでは魔術を発動できない。

 父上に見放された僕は攻撃魔術を教えてくれる教師をつけてもらえなかった。普通はここで魔術を身につける道は閉ざされてしまうのだろうけれど、僕は辛うじて魔力操作と生活魔術の訓練まではやっている。そして僕には脩人(しゅうと)の知識がある。

 魔力や魔術の無い世界に住んでいるにも関わらず、脩人(しゅうと)は魔術に詳しい。正確には脩人(しゅうと)がマホウと読んでいる空想世界の話だ。本やゲエムと言う物でその知識を得ている。それに向こうの世界には実験や観測を基に種々の事象を研究するカガクと言う学問があって、それが凄く役に立つ。

 だから僕は自力で攻撃魔術を習得していっている。まだまだ初級の魔術しか発動できないけど順調だよ。属性も火、水、風、土の4属性ともに発動できた。僕は武術よりも魔術の方に適正があったらしい。


 こうして僕が、武術の才能がない自分に腐る事なく、前向きに柔軟に考える事が出来るのは、脩人(しゅうと)の人生を見てきたお陰だと思う。脩人(しゅうと)を通して家族の暖かさや愛情を感じる事ができたし、自分の周囲が僕に優しくないのは、僕ではなく周囲の方がおかしいのだと知っている。そして子供は生まれた家の家風を必ず受け継がなければならないなんて考えは古くさいのだと知っている。脩人の世界では職業の選択は自由だっていう考えが一般的なのだ。

 

 魔術適正と異世界の知識。脩人(しゅうと)の世界ではこう言うのを“チイト”って言うらしい。

 これからの人生が楽しみだ。 



明日は脩人回に戻ります


シャルパンティエは、大工=カーペンターのフランス語読みです

シュートの家は大工とは関係ありません

何となく脩人の名字と揃えただけです

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