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後編

「さて、向こうは皆に任せて私はエダガクレを探そうか」



 アンリたちはトウソウシンをイスナ先生はモグラモドキを捕まえに街へ走って行った。


 聞くとすでに被害が出ていて騎士団も出ているが慣れない雪と凍結した路面のせいで苦戦しているらしい。


 なら溶かせばいいのでは? と思ったが魔法を攻撃だと思ったトウソウシンに止められてしまうようで、それでもさすがというべきか騎士団に大きな被害はなくみんな軽症ですんでいるとのこと。


 私は一人でエダガクレを捜索中。


 やり方は簡単。妖精眼で擬態の魔法を探すだけ。


 事前にイスナ先生からもらった情報によると擬態するときに色だけでなく大きさも変わるらしい。なら確実に魔法だと思っていたのだが……



「全然見当たらない…… 魔法じゃないのかな? それとも学園の外に逃げた?」



 かれこれ一時間探しているが全然見つからない。


 だんだん面倒になった私はあることを思いついた。



「探知をこの街全体にかければいいんだ! なんで思いつかなかったんだろう」



探すのが面倒になったんじゃないよ、ただ効率がいいからそうしただけだよと頭の中で言い訳しつつ探知を使った私は驚いて足を滑らせた。



「え!? これって……痛っ!」





――――――――――――――――――


「さて、トウソウシンの捕獲ですね~。殺してしまいそうなので加減しないといけませんね~」


「お前は冗談抜きに手加減を覚えてくれ…… 抑えるこっちも全力を出さないといけなくて疲れるんだ」


「あはは、でもそのおかげで反射神経や魔法の発動は入学前より速くなってるよね。素直に喜べないけど」



 苦笑いをする二人を見ながら首をかしげながら私はクロノに情報を持っているか聞いてみた。



「さて、トウソウシンの居場所が知りたいのですがクロノさん何か分かりませんか?」


「ちゃんと聞いてあるぞ、この通りの突き当りを右に行けばすぐだそうだ」


「……この通り、7kmくらいなかったっけ?」


「だな。まぁ強化すればすぐだろ。サクッと終わらせて暖かい部屋に戻ろう。ってアンリ? いったいどうしたんだ、いきなり立ち止まってぇ!?」


「コロナウェーブ」



 雪を溶かしながら火の柱が滑るように道の先へ消えていく。クロノとレオンは驚いているようだが家に火が付かないように放っているので大丈夫。



「アンリ…… いきなり魔法を使わないでくれ、心臓に悪いし巻き込まれるだろう」


「ちゃんと立ち止まったのを確認してから使ってますから大丈夫ですよ~」


「絶対に他の奴の時にやるなよ? 怪我人が出るぞ」


「生徒会長くらいですもんね~あのタイミングで立ち止まれそうなのは」


「二人とも、戦闘の音が聞こえてきたよ」



 会話しながら走っているとドゴンと激しくぶつかる音やガウッっといった鳴き声が聞こえるまで近づきました。


 突き当りを曲がった先には何度も転びながらも盾を構える騎士団とそれを何度も蹴り飛ばす体長120cmくらいのカンガルーにライオンの顔をした生物だった。



「あれがトウソウシンですか~。なかなか可愛らしい姿をしていますが戦闘能力はなかなかのものですね~」


「言ってる場合か! あいつらに気付かれる前に雪を融かすぞ!」


「う、うん。でも聞いてた数より多くない?」



 そう、3頭だと聞いていたトウソウシンの数が2頭多いんですよね~。管理者であるイスナ先生が数え間違いをすることはないでしょうしあの中の2頭が脱走を手助けしたんでしょうか?



「まぁそんなことを考えても仕方ないですね。ヒート!」


「ッ! ガゥ!」


「君たちこの奇妙なものを消してくれたのはありがたいがここは騎士団に任せなさい!」



 加熱の魔法で水も蒸発させたところでトウソウシンも乱入者に気付いたらしく1頭がこちらに向かってきましたね。


 騎士団の方が何か叫んでいますが無視無視。



「よし、強化魔法で1頭ずつ相手にしよう。残りの2頭は早い者勝ちだな!」


「競争ですか? なら負けられませんね~」


「え、えぇ!? 僕2人に勝てる気しないんだけど!?」


「自信を持てよ。確かにエルとアンリに比べれば地味だが俺たちも強いんだぞ」


「……うん、わかった!」


「では行きますよ~!」



―――――――――――――


「ハァッ! ヤァッ!」



 私の蹴りを受けてトウソウシンは10mほど後ろに下がります。強化された状態で本気を出しているのにいるのに()()()()です。


 何度かこれを繰り返していますがトウソウシンにダメージどころか疲労すら感じません。


 受けた傷も少し間を置けば治っていますし何かカラクリがありそうだと考えたところで脇腹への強い衝撃と同時に身体が宙に浮く感覚が私を襲いました。



「カハッ!?」



 壁に叩きつけられた私は痺れて動くことができず、そのまま地面に落ちた。


 必死に体を起こしてみると騎士団はトウソウシンを1頭抑え込むのがやっとでもう1頭は騎士団を突破してそのまま私を蹴飛ばしたようです。



「っ、アンリ!」


「すぐに回復魔法をって、うわっ!?」


「レオン! 大丈夫か!?」


「平気だけどこのままじゃアンリが!」



 痛みでぼやける視界では魔法も使うことができずに私は目をつぶった。


 しかしいつまで経っても何も起きないのでそっと目を開けるとトウソウシンの足をつかみながらもう1頭を睨んで威圧しているエルちゃんがいた。




――――――――――


 あっぶなぁ、なんとか間に合った。


 やっぱり正体がわからなきゃ苦戦しちゃうよね。探知して分かったのはエダガクレを探知したはずなのにトウソウシンやモグラモドキも一緒に見つかったこと。


 それをもとに何頭か捕まえて調べてみたら手に乗るくらいの小さな魔獣が集まった「群体魔獣」というべき存在のようだ。


 一体だけだとふわふわの毛玉のような見た目で臆病なのだが集まると性格や行動パターンが変わる。


 トウソウシンくらいになると体の一部のみ分離して攻撃を躱す、なんて器用なこともできるらしい。



「こいつらの秘密もいくつかわかったしサクッとやっちゃいますか。アンリはそこで待機ね」


「はぁ~い。その秘密、あとで教えてくださいね~? やられっぱなしは嫌なので~」


「はいはい」



 アンリに回復魔法をかけ、私は足を掴んでいた方のトウソウシンに向き直る。



「群体であることを利用して戦うならまとめて捕まえればいい。ウォーターキューブ」



 五頭のトウソウシンを水でできた正方形の檻に閉じ込めた。これなら分離しても逃げられないし抵抗もされない。


 私が作ったものだから運ぶのも魔法を追加するだけでいい。うん、我ながらナイスアイデア!


 捕まえたトウソウシンを一か所にまとめているうちに皆が集まってきた。



「捕まえるだけならこれでいいが…… トウソウシンは魔力が使えるから逃げられないか?」


「予め魔力を込めておくんだよ。そうすると込めた魔力以下だと効かなくなるんだ。同じ属性の魔法がぶつかったときに魔力が多い方が勝つでしょ? それと同じ」


「なるほど…… でもあいつらを一か所に集めるのは失策じゃないか?」


「……あっ」



 気付いた時にはもう遅く、魔法が破られる感覚とバシャアと水が落ちる音が聞こえてきた。


 恐る恐る振り返るとそこには大きな翼で羽ばたく家くらいの大きいドラゴンがいた。


 ドラゴンはこの世界の最強種で普段は険しい山奥でひっそりと暮らしているが、人に化けて人里に降りてくる変わり者もいるらしい。


 ドラゴンは周囲の建物を破壊しながら学園の方向に向かい始めた。



「これ、そうとうやばくないか……?」


「そうとうやばいですね~」


「早く止めないと皇都が崩壊しちゃうよ!? チェーンバインド!」



 レオンの魔法がドラゴンを捕らえたと思ったが一瞬で拘束は解かれた。


 流石ドラゴン、魔力量も筋力もトウソウシンとは桁違いだ。そう思った時違和感を感じた。


 あれ、なんでこのドラゴンブレスをしないんだ?



「考え事は後にしよう。さっきのやり方に氷の魔法を組み合わせて凍らせてみるよ。殺しちゃうかもしれないけどそんなこと言ってられないし」


「氷の魔法は俺がやろう。一つの魔法に集中した方が成功率は上がるだろ」


「なら私とレオンさんは家の修復や怪我人の治療をしますね~」


「二人とも頑張って!」



 私とクロノはドラゴンのところへ走り始めた。能力を上げているとはいえ相手は空を飛んでいて追い付くまでにドラゴンは校門の目の前まで来てしまっていた。



「ようやく追いついたけどこのまま落としたら学園にも被害が出るから校庭に誘導しよう!」


「なら怒らせればいいんだな。フレア!」



 クロノのフレアはドラゴンの眼に当たり、しばらく悶絶したドラゴンは血走った目で私たちを追いかけ始めた。


 あの大きな体で体当たりされればひとたまりもないだろう。しかも私たちの全力よりドラゴンの方が早い。



「怖い怖い怖い! 覚悟はしてたけどそれでも怖い~!!」


「話すだけの余裕があるなら走れ! 死にたいのか!?」



 もう差が10mくらいしかなくなったと思った時ようやく校庭が見えてきた。しかしこのままでは校庭にたどり着く前に追い付かれそうだと思った時、前から氷塊が飛んできてドラゴンをひるませた。



「早く! こっちへ!」


「イスナ先生!」



 氷塊を飛ばしたのはイスナ先生だった。



「はぁ…… 死ぬかと思った。ところでイスナ先生どうしてここに?」


「話は後! まずはあのドラゴンをなんとかしないとのんびり話ができない」


「なら私とクロノに任せてください。行くよ!」


「あぁ!」


「ウォーターキューブ!」「フリーズ!」



 ドラゴンは全身を凍らせて地面に落ち、その衝撃で大量の雪が私たちへ襲い掛かってきた。



「まずい!? さっきので魔力は使いきったぞ!? エル、なんとかできないか!?」


「ごめん、私も魔力切れ……」


「先生は!?」


「魔力はあるけどあれをなんとかできる魔法は使えないなぁ……」


「生き埋めは嫌だぞ!!」



 目の前に迫った雪に、死んだかなと思った時土の壁が出来て私たちを守ってくれた。



「全くお前たちは…… 事件を解決するのはいいが無茶しすぎだ。我々教師もいることを忘れるな」


「アハハ…… すっかり忘れてました」


「お前な……」



なんて学園長と話しているうちにアンリとレオンも合流してきた。聞くと、怪我人は少なかったが家を直すのに時間がかかったらしい。


あーだこーだと愚痴を言うアンリを後で聞くからと宥め、和んでいるみんなに私はとある事実をつげた。



「実はね、まだまだこの魔獣なんだけど沢山街に潜んでるみたいなんだ」



その言葉を聞いたみんなの顔がゲッソリとしたものに変わっていく。



「ソ、ソウナンダー。でも私たち探知使えないからさ」


「心配しないで。20分で覚えてもらうから。それから先生方にも手伝って貰いましょうか。我々教師もいるんですよね?」


「グッ、それは……」



私だけで全部捕まえるなんて絶対回避しないと。だってまだ200頭も潜んでいるんだもん!


イスナ先生飼育しすぎ〜!と叫びながらみんなで街を駆け回り、全て捕まえ終えたのは次の日の朝だった。


因みにドラゴンの姿をしたのは新たにニセドラゴンと呼ばれる新形態として登録されるらしい。


あの形態でブレスを使わなかったのは魔力が数百頭集まっても足りなかったからだそうだ。


ゴタゴタした日になったがいい思い出になったと思う。だって最後はみんな笑顔だったからね。

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