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三つ巴  作者: 消しゴム食べたい
1/12

一国の皇子と庶民の出会いが、運命を変える


その昔、一つの大国があった。大国の皇子の名はライギといった。


「ライギ様、お食事の時間です。」

ライギは差し出された豪勢な料理には脇目を振らず窓の外を眺めていた。あまりにも贅沢で裕福な暮らしも生まれた時から当たり前のように続けていれば何も思う事はなくただの平凡でありふれた毎日だと感じるようになりライギはだんだんと城の外の世界に興味を持つようになっていた。


そんなある日、ライギはついに城を抜け出し外界へ降り立ったーーー。




「今日は散々な日だった。食事をしたら決まったお金を払わないといけないし悪党はその辺をうろついているだなんて全く知らなかったよ。まぁこれもいい経験だった。城を抜け出して散策した甲斐があったってもんだ。

………しかし、おかしいな。さっきから同じ場所を行ったり来たりしているようだが……。もしかすると私は道に迷ってるのかもしれない。まずいな、早く帰らないと余計に怒られるのに…。」

そう思いつつライギは行き当たりばったりで道無き道を戸惑うことなく進んでいった。どんどん山奥に進んでいるのにその足を止めなかったのは山で迷ったら動かずじっとしているという鉄則をしらなからでもあるが、何より彼が怖いもの知らずの向こう見ずな性格であったからだ。


そうこうするうちにだんだんと暗くなってきてライギは体力の限界を迎えていた。山の中を歩き続けることにより体はすりむけ、汗で服が体に張り付いていた。

もうこれ以上はあるけない、そう思った時ライギは小さな集落を視界の端に捉えた。


(よかった…。)


“バタッ”


そう安心した瞬間、ライギ足がもつれそのまま地面に倒れ込んだーーーー。




「ーーーーーーん…。ここは…?」

ライギがゆっくりと目を開けると見知らぬ天井が見えた。ライギが慌てて腰を浮かせ辺りを見渡すとそこは殺風景な部屋であった。倒れた後の記憶を必死に手繰り寄せているとき、奥から足音が聞こえてきた。

ライギが振り返るとそこに立っていたのは1人の青年であった。青年は一見すると15,6程に見えたが歳の割に大人びたような、苦労の滲んだ表情をしており、逞しかった。


「やっと目を覚ましたか。家の前で倒れてる人がいるもんだから本当にびっくりしたよ。なんせこの辺りに見知らぬ人が来るなんてこと無いからね。今ご飯を持ってきたところなんだ。これを食べて元気を出すといい。」

「ああ…ありがとう。君は、この集落の者か?」

「あぁそうだ。俺は生まれた時からずっとこの山奥で暮らしている。父ちゃんも母ちゃんも死んじまったから今は俺が他の兄弟の面倒を見ながら、作物を育てて町に売りに行って生計を立てているのさ。」

「…君の兄弟は何人いるんだ?」

「俺以外で5人さ。そのうち4人はまだ五つにもなってないからおしっこやうんちも一人で出来ないのばかりだよ。って、こんなこと食事中の君にいうことじゃなかったね。まぁ、だから料理も洗濯も掃除も家業よ子供の面倒見るのも全部俺一人でやってるのさ。」

ライギは箸を止め唖然とした表情を浮かべた。

「そんな事を全て一人でやるだと。そんなんじゃ自分の時間も取れやしないじゃないか。何を生きがいにすればそんな日々に耐えられるんだ」

「生きがい?いや、そんな事考えたこともないな。俺は今日を生きるのに必死で明日のこともにすら頭が回らないのに自分の時間なんて取れやしないよ。」


ライギにはにわかにも信じがたい話であった。毎日毎日、ただ生きるために時間を使うなど想像も出来なかったのだ。

将来を思い描く楽しさも、日々の娯楽も、学ぶ喜びも、彼のような人間は知らずに死んでいくのだ。それが当たり前の様に。生まれた環境が違うだけで。

そんな人生で果たして生きていると言えるのだろうか、とライギは疑問に感じこの青年の事が哀れでいてもたってもいられなくなった。

「私の名はライギ。頂の国の皇子で、次期皇帝だ。今日は町の様子がどうしても知りたくなって城の外に抜け駆けしてきた次第だ。君の生き方を知って胸が苦しくなった。世の中には君の知らない喜びが沢山ある。今日はその幾つかを君に知ってもらいたい。」


青年は驚きのあまりぽかんと口を開けたまま動かなくなった。

「皇子?まさかそんな。とんだご無礼をお掛けしました。この様なみすぼらしい食事をお出ししてしまい本当に申し訳ございません。」

そう言って青年は土下座した。

「顔を上げてくれ。無礼を働いたのはむしろこちらの方だ。済まなかった。礼と言ってはなんだが、君の知らない事を沢山教えると言っているのだ。名前を教えてくれないか。」

「はぁ、なんと有り難きお言葉。私の名前はソンで御座います。」

「ソンか。いい名だ。」


こうしてライギはソンに漢詩、小説、武術、歌など様々な事を教えた。

ソンはそのたびに目を輝かせ、ライギが皇子である事も忘れて話に食い付いた。二人は夜になっても語らった。 


「ライギ様。たくさんの事について教えていただき本当に有難う御座います。自分は本当に何も知らなかったのだと情けなくすら感じてきました。」

「いや、ソンが悪いのではない。悪いのは自分達の利益だけを考え国民を蔑ろにしている我々王朝だ。この国の皇子にも関わらず国民の様子を何も知らなかった。全ては私の無知のせいだ。この責任は必ず取ると約束しよう。」

「こんな私共の為にライギ様が奮起なさるとは…なんと有難いお言葉で有りましょうか。」

ソンは思わず涙を溢した。

「あぁ、するとも。それにはソンの協力が必要不可欠だ。」

「協力と申しますと?」

ライギはにこりと微笑み、話し始めた




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