05 異世界人と竜の姫
05 異世界人と竜の姫
・・・1年と1か月・・・
「えっ、えぇぇぇぇっ!」
功助の館の中。功助たちの驚嘆の声が響いた。
「ふん!何もそこまで驚かんでもいいじゃないか!」
腕を組み功助たちを睨むのは青の騎士団副団長のハンスだった。
「そうですよ。何も悪いことしたわけじゃないんですから」
ハンスの横で同じように不機嫌なのは魔法師隊副隊長のラナーシアだ。
「でも、でもですよハンスさん」
「と功助が言うと何故かその後ろで控えているミュゼリアが続けた。
「そうですよ兄上。まさか二人が……」
「二人がそんな仲だっただなんて誰だって驚くわよ」
と、功助の右側に座ったシャリーナが続く。
「そうだろう。俺も聞いた時驚いたぞ。飲んでた酒を全部吐き出してしまったからな」
と空気のように静かだったベルクリットが苦笑する。
「悪かったなベルク」
とハンスが睨む。
「ぐわははは」
と笑いで返すベルクリット。
「ふふふ。でも、とても喜ばしいことです」
シオンベールがうれしそうに二人を見る。
「そうだな。驚いて悪かったです。そうですか、ハンスさんとラナーシアさん、結婚されるんですか」
と功助が微笑む。
「ああ。そこで相談なんだが」
とハンスがベルクリットとミュゼリアを交互に見た。
ハンスたちが言うには、できればミュゼリアとベルクリットの二人と合同結婚式を行いたいとのことだった。
「ベルクたちと俺たちが合同ですれば式は一回で済むからな。別々にすると金もかかるし参列者も二度手間になるし。それなら合同ですればいいじゃないかと二人で話したんだ。で、どうだろうミュゼリア」
功助の後ろで控えている我が妹のミュゼリアを見る。
「そ、そうです。私はいいと思います。兄上たちと合同でできたらうれしいです。いかがですかベルクリットさま」
「あ、うん。そうだな。ミュゼリアがいいと言うのなら俺は文句などない。それでいいかハンス」
「悪いなベルク。それとありがとうミュゼリア」
とハンス。だがミュゼリアはでもと話を続けた。
「私、ラナーシア副隊長のウェディングドレス姿に嫉妬するかもしれませんが」
と眉尻を下げる。。
「そんなことはないですよミュゼリア。私がかわいらしくドレスを着るミュゼリアに嫉妬すると思いますよ」
と肩を竦めるラナーシア。
「いえ、私が」
「いや私が」
と私が私がと続きそうなので功助が一言言った。
「ちょっとストップ二人とも。二人ともドレスはよく似合うと思うぞ。なあみんな」
「そうですよミュゼリア。ラナーシア副隊長もよくお似合いになると思います」
「そうよそうよ。ラナーシアは背が高いんだからたぶん見栄えいいわよぉ。ミュゼちゃんは小柄だけど姿勢もいいし負けてないわよ」
とシオンベールもシャリーナもそう断言した。
それを聞いて少し顔を赤らめるラナーシアとミュゼリアだった。
「そっかぁ。ということはラナーシア副隊長はミュゼの義姉でベルクリット団長はラナーシア副隊長の義弟……」
「あっ、そうなんだ。私に姉上ができるってことですよねコースケ様」
とうれしそうだ。
「ふむ。そうなるな。よろしく頼みますミュゼリア」
とラナーシアもうれしそうだ。
「なら俺はハンスをお兄ちゃん、ラナーシア副隊長をお姉ちゃんって呼べばいいんだな。ぐわははは」
と爆笑する。
「やめてくれベルク!」
「やめてくださいベルクリット団長」
とあわててベルクリットを止める二人。
「あはは」
「うふふ」
「きゃはははは」
功助もシオンベールもシャリーナも大笑いした。
・・・1年と6か月・・・
高く青い空に白い雲が浮かぶ秋。
ベルクリットとラナーシア、ハンスとミュゼリアの合同結婚式が行われた。
二人の新郎は凛々しく、そして二人の花嫁はとても美しく、参列者も惜しみない祝いの言葉を向けた。
そして四人の左手薬指にはキラリと指輪が光っていた。
これ以降、結婚指輪はこの世界に定着し平民たちにも広まっていったのだった。
・・・1年と7か月・・・
そして功助たちの婚姻後七ヶ月がたちようやく白竜城での各部署の移動や昇進の辞令が降りた。
青の騎士団は団長ベルクリット・ラウディー。副団長ハンス・デルフレック。魔法師隊も隊長シャリーナ・アンドー・シルフィーヌ、副隊長ラナーシア・デルフレック・サラマンディスと今までと同様。緑の騎士団も今までと同様だ。
そして功助は新しく立ち上がった白の騎士団団長となり副団長にはあのカレットが着任した。それとなんと隊員にあのイリス、モーザ、フランサ、メリアの四人娘も入隊した。
また功助の館には正式名称として「白桜館」が与えられた。ちなみにこの名を提案したのはシオンベールとシャリーナの新妻たちだ。日本を忘れないようにと真依たちと決めたのだと言う。
そして侍女長にはライラ・ミルマーテス、副侍女長にはミュゼリア・ラウディー・デルフレックが着任した。そして白竜城全体の侍女長としてはミーシェスカ・グランスがそして副侍女長には今までノーザン班班長だったポーラが着任となった。
また白桜館に新しい侍女も数人入り、その中にはフィリシアが入った。
「あなた」
「ダーリン」
二人の妻がテラスに出るとそこには功助が城下を眺めていた。
「ん?シオンとシャリーナか。」
何してるんですかと二人は功助の両側に立つと同じように城下を眺めた。
「……この街で暮らすんだなあって。改めて考えると不思議だな。ほんと奇跡だよ。俺が異世界で暮らすことになっただなんてさ」
「そうですね。でも、私、いえ、私たちはとてもうれしいです。ねぇ、シャリーナ」
「ええ。そうよダーリン。あたしたちの一方的な思いで悪いんだけど、ダーリンがこっちの世界にきてくれてほんとうれしいのよあたしたち」
功助を見上げる二人。
「まあ、全部ユリアルのせいなんだけどな。なあ」
と音もなく功助の頭に着地するユリアルに言った。
「なあに?コースケ」
功助の頭の上で満足そうにお座りをするユリアル。
「なんでもないよ。なあユリアル」
「ん?」
「俺を召喚してくれてありがとう。おかげでこんなに素敵な女性と出逢うことができたよ」
功助は二人の妻の肩を抱き寄せた。
「ほんと、感謝しますユリアル」
「ありがとユっちゃん」
二人の妻も功助の頭上でくつろぐ白竜神を見上げると微笑んだ。
「シオン、シャリーナ、これからもよろしくな」
「はい。こちらこそよろしくお願いいたします」
「ええ。よろしくねダーリン」
と微笑み合う。
「ちょっと、ボクは?」
と頭上のユリアルが不満そうに功助の頭を翼でペシペシ叩く。
「はは。ユリアルもよろしくな」
「うん。まかせといて」
とドヤ顔のユリアル。
「うふふ」
「あはは」
と二人の妻。
「ほんと、ユリアルはユリアルだよな」
と笑う功助。
「あっ、コースケ様ここにおられましたか。お食事のご用意ができました。コースケ様、シオン様、シャリーナ様、食堂にお越しください」
副侍女長のミュゼリアがテラスに出てきて笑顔で言った。
「わかった。さあ行こうかシオン、シャリーナ」
「はい、あなた」
「ええ、ダーリン」
三人はミュゼリアのあとに続きテラスから館に戻った。
青い空には白い雲。町から上がるのは竈の煙。遠くに見えるのは緑の山々。
この世界で功助は愛する人たちと暮らしていく。そう決めたのは功助自身。
傍らには二人の妻。周りには信頼できる友。
これからもいろいろな出来事を功助たちは経験するだろう。そして力を合わせ乗り越えていくだろう。
そう、異世界人と竜の姫、そしてこの世界の友たちと。
END
『異世界人と竜の姫』 これにて完結です。
応援いただきありがとうございました。




