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異世界人と竜の姫  作者: アデュスタム
第9章 最終章 異世界人と竜の姫
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04 結婚の儀

 04 結婚の儀


 ・・・一年・・・



「コースケ・アンドー。あなたは竜帝国王女シオンベール・ティー・アスタットを妻とし白竜神の導きにより夫婦となろうとしています。汝、命を賭け、健やかなる時も、病める時も、常にこの者を愛し、慈しみ、守り、助け、この世より召されるまで固く節操を保つ事を誓いますか」

 真っ白な髭をたくわえた柔和で笑顔が似合う神父が、容貌と同じ柔らかな声で目の前に立つ功助に誓いの言葉をといかける。

「はい。誓います」

 襟のフラワーホールに白いバラを飾った純白のタキシードを着た功助が瞳を輝かせ誓う。

 それを聞いてにこやかに微笑む神父。

「シオンベール・ティー・アスタット。あなたはコースケアンドーを夫とし白竜神の導きにより夫婦となろうとしています。汝、命を賭け、健やかなる時も、病める時も、常にこの者を愛し、慈しみ、守り、助け、この世より召されるまで固く節操を保つ事を誓いますか」

 シオンベールの瞳を見て神父が問いかける。

「はい。誓います」

 純白のウェディングドレスを着たシオンベールは緊張しながらもはっきりと誓う。

 神父は再び柔和に微笑むと続けて言った。

「それでは指輪の交換を」

 この世界には指輪の交換の習慣はない。だがシオンベールは日本の家族とスマホで話しをしていてこの習慣を知った。そうするとシオンベールもぜひに行いたいと願い真依と友紀に相談した。何度も何度も相談し出来上がったイラストを魔具師のリペアに指輪にしてもらったのだ。当然魔法が付与してあり壊れることも劣化することもない。

 功助はシオンベールの左手薬指に指輪をはめる。そしてシオンベールも功助の左の薬指に指輪をはめた。

 シオンベールの指輪には大きな金剛石がキラキラ輝いている。

 そして功助の指輪には驚くほど精密で見事な竜の細工が彫ってあった。

「それでは誓いの口づけを」

 功助は新婦の言葉に従いシオンベールのウエディングベールをそっと上げた。

「シオン」

「コースケ様」

 功助はシオンの両肩を優しく持つとゆっくりと顔を近づける。そして二人は目を瞑り軽く触れるような口づけをした。

 シオンベールの頬を伝う一筋の涙。功助はそれを親指でそっと拭うと言った。

「シオン。幸せになろうな」

「はい」

 神殿の祭壇前で愛を誓い合った二人を、天井近くの壁に描かれた白い竜のレリーフが見つめていた。


「姫様おめでとうございます!」「コースケ様ぁぁ!」「お幸せにぃぃ!」「黒鉄の英雄バンザーイ!」「末永くお幸せに!」「おめでとうございましゅコーシュケ隊長!」「ちょっと噛みすぎ!」

 城下を進む馬車の上。功助とシオンベールは民からの祝いの声に手を振って応える。

 二人の馬車に続くのは国王夫妻とバスティーアを乗せた馬車。そして馬車の周囲を警護するのは白竜軍だ。

 その国王たちの乗る馬車の中、トパークスとルルサはスマホを持ち日本の功助の家族と話をしている。

『トパークス、功助をよろしくな』

「わかってるさススム。お前たちの愛した息子だ。安心してくれ」

「そうですわよススムさん。お任せくださいね」

『ありがとうルーちゃん。まだまだ未熟だけどよろしくね』

「わかってるってユキちゃん。あたしたちに任せて」

『でも俺達を式に参加させてくれてありがとうとパークス』

「何を言う、コースケの両親を三かさせないなど考えられん。こうしてスマホで参加できたのだ。喜ばしいことだ」

「ところでマイさん」

『あ、はい王妃様』

「シオンの相談相手になってくれて感謝します。これからもシオンの相談にのってあげてくれるかしら?」

『はい。いつでも言ってください。シオンはあたしの義理の姉だけど、妹のように思ってます。任せてください』

 と胸を張る。

「ありがとうございます。よかったわ、マイさんのような人がコーちゃんの妹で」

 とルルサもうれしそうだ。

 異世界をつなぐスマホで話をする四人。まだまだ話は尽きない。


「コースケさーん!」

 一段と大きな声で功助を呼んだのは岬のカモメ亭のお上だった。ちぎれんばかりに手を振っている。

「あっ!マギーさん!マギーさん、ありがとうございます!」

 大きく手を振り返す功助。

 養老院の人たちも、そして孤児院の子供たちも沿道に出て二人の結婚を喜んでいる。

 コースケ様、私うれしいです。こんなにたくさんの人たちに祝っていただいて。ほんとうれしいです」

 と満面の笑みで手を振り返すシオンベール。

「ああ、俺もうれしいよ。でもなんだな、シオンを不幸にしたらおれ城下の人たちに半殺しにされそうだなってつくづく思うよ」

「うふふ。そうならないように私を、私たちを幸せにしてくださいね」

 と馬車と並んで歩く魔法師隊隊長の方を見る。

「ああ。わかってるよ。でも、俺がシャリーナさんとも一緒になるなんてな」

 周囲を警戒しながら歩くシャリーナを見て微笑む功助。

「でも、幸せが二倍になるんですからいいんじゃないですかコースケ様」

「そうだな。でも驚いたよ。こんな法があったなんて」

「私も知りませんでしたが偶然です。国の政のお勉強の時に図書塔で国政に関する本の中で見つけたんですから。王族は第二婦人を娶ってもいいって」

「それでシオンがシャリーナさんをどうしても第二婦人に迎えてくれって言ってきたのはほんと驚いた」

「実は私自身も驚いているんです。恋敵を第二婦人にすることを。でも、あのシャリーナ隊長のコースケ様を思う純粋な心を知ったら私うれしくて。この人なら一緒にコースケ様を愛し続けることができると確信したんです」

「うん。その話をしてからシャリーナさんのあの超積極的アプローチがなくなったもんな」

 今もシャリーナは功助と目が合うとうれしそうにニコリと微笑んだ。

 本当ならシャリーナと三人で結婚式を挙げたかったがそれは国王から却下された。シオンベールの見つけた本にも書いてあったが身分制度のあるこちらの世界ではシオンベールとシャリーナでは身分が違うので正妻との挙式後でなければ式を挙げることはできない。その期間は記されておらず翌日でも数ヶ月後でもいいらしい。ただし正妻より小規模にしなければならないのだそうだ。

 そしてシオンベールは竜帝国の王女だ。功助の身分は名誉隊長なので騎士に相当する。だがシオンベールと婚姻するには貴族の爵位以上でないと認められない。これは身分制度のあるこちらの世界では仕方ないことだ。

 そこで功助はトパークス国王から貴族の称号を与えられた。

 功助の身分は貴族位となりシオンベールとの婚姻が可能となったのだった。


「姫様ぁ、姫様ぁ!」「コースケ様ぁ!」「竜帝国バンザーイ」

 今も民から祝いの言葉が届く。

「私、女王になるまでに、もっともっと勉強して竜帝国をもっともっと素晴らしい国にしていきたいと思ってます」

「ああ俺も手伝うよ。政はよくわからないから俺も勉強してシオンが女王になった時、俺も王配としてサポートできるようになりたいし」

「ありがとうございます。でもお父様はまだまだ引退するつもりはないようですよ。まあ、国王になってからまだ十年もたってないので、あと百五十年はするって言ってました」

「ははは。そうか。それならまだ百五十年勉強できるな」

 竜族の寿命は二百五十年ほどだ。竜族以外も長寿で人族さえ百年を軽く超えるほどだ。エルフにいたっては三百から四百年もの寿命がある。だが功助はこちらの世界の人族ではない。長くても九十から百念あるかないかだ。だが今の功助は寿命が少なくとも竜族と同じ程度になっていた。

「ボクがいてよかったねコースケ」

 二人の足下、外からは見えない位置で見上げてきたのは白竜神ユリアルだった。

「ボクがコースケがこちらの世界で長生きできるようにしてあげたんだからね。感謝してよね」

「そうだな。感謝してるよユリアル。お前が竜界に戻らなかったおかげだよ」

「ふんっ!コースケのせいなんだからね!あの時白い牙のところで寝てて起きたら朝だったんだから。竜界への門は二十四時にしまってしまうのに起こしてくれなかったから戻れなかったんだよ、ほんとにもう」

 と口を尖らすユリアル。

「でもなユリアル。まさかあの草原で眠りこけてるとは思わないぞ普通。あれは確か昼過ぎだったぞ。一度も起きずに朝まで寝てたなんてどれだけ寝心地よかったんだあそこは」

 と苦笑する。

「でもユリアルが竜界に戻らなかったからコースケ様に寿命を延ばす魔法をかけてもらえたのです。感謝しますユリアル」

 とユリアルを見て微笑む。

「ま、まあ、喜んでもらえてよかったけど。でも……、次に竜界に戻れるのが五十年後だよ。ボクたち神竜にとってはすぐだけど……、でも、長いなあ……」

 と肩を落とすユリアルだった。


「さあ、もうすぐ白竜城に続く坂道だ」

 馬車は城下を一周し白竜城へと続く道に入った。

「このあたりにもお祝いしてくださっている方々がたくさんいらっしゃいますね。ほんとうれしいです」

 沿道にはまだまだ多くの民が二人の結婚を祝福に訪れていた。

「うん」

 功助は周囲に感謝の手を振った。

 ゆっくりと坂を登って行く馬車。そして白く輝く白竜城が見えてきた。

「しかしなんだな。たった半年ほどで立派な館が作れるとは。やっぱり魔法ってすごいよな」

 白竜城の東側には立派な館が建てられた。

 婚姻承諾の儀のあと功助とシオンベールが住むための館が急ピッチで建設された。

 館は城から独立はしているが廊下で結ばれている。そして従者たちもすでに館で働いていた。

 馬車は坂道を登りそのまま館に向かう。だんだんと近づいて行く館の前には多くの従者たちが主たちを出迎えていた。

「お帰りなさいませ姫様、コースケ様」

「ただいまライラ」

「ただいまライラ侍女長」

 二人は馬車から降りると満面の笑顔で出迎えたライラに応えた。

「姫様、コースケ様お疲れさまでした。お式はとても素敵で、私感動して泣いちゃいました」

 ライラとミュゼリアはもとより新しい館の従者たちも二人の結婚式に参列した。そして式が終わると同時に館に戻り主たちを出迎えたのだ。

 ミュゼリアはこれまでの黒いエプロンドレスと緑のカチューシャではなく濃紺のエプロンドレスと赤いカチューシャを付けている。ライラもミュゼリアと同じものを着けているが新しく仕立てたのだとわかる。

 功助とシオンベールの館ができると同時にライラとミュゼリアは二人の許で働くこととなった。そして ライラは侍女長として、功助専属侍女だったミュゼリアは副侍女長となり二人を支えていくこととなった。

「ははは。ありがとうミュゼ。さあ、中に入ろう」

 多くの侍女や侍従からの祝いの言葉を浴びながら二人は館へと入って行った。その後ろをユリアルがひょこひょこ歩いて着いて行く。

 この館には功助夫妻と第二婦人予定のシャリーナの部屋。そしてユリアルの部屋もある。ユリアルが竜界に戻れるのは約五十年後だ。それまでここで暮らすこととなったため急遽部屋を一つ増やしたのだった。


「ああ、疲れた」

 功助は衣装を脱ぎ軽装になると大きなソファーにゴロンと横になった。

「ふふふ。コースケ様、かなり疲れておられますね。って言ってる私も少し疲れましたけど」

 と言って功助が横になっているソファーの向かいにちょこんと座った。

「なあシオン」

「はい?」

「これからずっとよろしくな」

「はい。こちらこそよろしくお願いいたします」

 とほほ笑み合う二人。

 コンコンコン。

「はい。どうぞ」

 功助は起き上がるとソファーに座りなおす。

「ミュゼリアです。ご休憩のところ申し訳ございません」

 入ってきたミュゼリアの手にはスマホが握られていた。

「コースケ様、スマホの魔力充電が着れそうなのでよろしくお願いいたします」

「はいよ。それで次は誰か使うのか?」

「いえ、今のところどなたからも使用申請は出ていません」

「そっか。えーと……」

 受け取ったスマホの充電残量は三パーセントになっていた。

「はは、もうちょっとで充電切れだったな」

 と言うとスマホに光属性の魔力を充てる。みるみるパーセンテージが上がって行きものの数分で百パーセントになった。

「コースケ様。ご実家に電話されてはどうですか?私もマイさんたちに報告したいので」

「そうだな。それじゃかけようか」

 そういうと慣れた手つきでスマホを捜査した。

 トゥルルルルル、トゥルルルルル。

『はい、あっ、お兄ちゃん、おめでとう』

「あ、うん、ありがとう」

 功助はスピーカーホンにするとシオンベールに代わった。

「マイさん。見ていただけましたか?」

『あ、シオン。おめでとう。うん、全部みせてもらったよ。今日のために五十インチのテレビ買ったんだ、それで見たんだけど、シオン、とってもきれいだった。ほんとお兄ちゃんにはもったいないくらい。ね、お兄ちゃん』

「へえ、五十インチのテレビ買ったんだ。迫力ありそうだなそれ」

『うん。最後のウェディングキスなんて超どアップだったよ。確かミュゼちゃんが捜査してくれてたんだよね』

「あ、はい。私がスマホで撮ってました」

『うまいもんだったよミュゼちゃん。ありがとう。母さんなんて涙流して喜んでたんだよ。あたしもうれしかった。ちなみに父さんはうらやましそうだったな。あはは』

「あ、ありがとうございます」

 と照れるミュゼリア。

「そうなんだよ。ミュゼってけっこう器用みたいでさ、スマホのカメラ機能もけっこう使いこなしてるんだ。たぶん俺よりも上手く扱えてるんじゃないかな」

「そうですね。スマホの捜査はミュゼリアが一番上手いんですよマイさん。私もたまに使わせてもらってますがミュゼリアに教えてもらってるんです。スマホの扱いならミュゼリアにお任せして問題ないんですよ」

「あは、あはは」

 と赤い顔のミュゼリア。でも、とてもうれしそうだ。

『ところでシャリーナさんとの挙式は一週間後だったよね』

「あ、うん。今日と同じところでするんだ」

『楽しみだな。ミュゼちゃん、また名カメラマンよろしくね』

「あ、はい。頑張ります」

 と鎖骨の前でグーを作るミュゼリア。

「真依、父さんたちは?」

『ちょっと散歩に行くって出かけたよ。ずっと挙式の生中継見てて身体が固まったって。それよりシオン』

「あ、はい」

『結婚指輪どうだった?」

『はい。よい週刊を教えてくださりありがとうございました。とても素敵な思い出が増えました」

 シオンベールはうれしそうに左手の指輪をスマホに向けた。

『喜んでもらえてよかった。それからねシオン……』

 次から次と話のネタは尽きずずっと話を続けるシオンベールと真依。功助はいつの間にか別のテーブルに移りミュゼリアに淹れてもらったお茶を飲みながら二人のたのしそうな話しを聞いていた。


 そしてその夜。功助とシオンベールの披露宴が催された。

 ここでもシャリーナは功助から少し離れたところで二人の警護をしている。だがうらやましいとか悲しいとか憤るとかの気持ちはまったく無く、それどころか楽しそうに話をしている二人を観て知らず知らずニヤケている。

「隊長」

「ん?どうしたのラナーシア」

「珍しいこともあるものです」

「ん?何が?」

「隊長がおとなしい」

「へ?……ははは。まあ、たまにはね」

「ふふ。コースケ隊長もおっしゃってました、シャリーナさんがおとなしい、嵐の前の静けさでしょうかって」

「何よそれ」

 と苦笑する。

「ま、まあ、今まで、っていうか……。どこかでダーリンと離れたくないって気持ちが身体の中にたまらないようにしてたのかなって。わざとダーリンに詰め寄って発散してたっていうか……」

「今までの、コースケ隊長と出逢うまでの隊長はあんなにはっちゃけてませんでしたものね。長い時間あなたとともに魔法師隊にいますがこんなことは初めてでした。異性とか恋とかには消極的でしたからね」

「そうね。こんな気持ち初めてだったわ」

 と今も祝辞を述べに来た貴族と談笑している功助を見た。

「来週ですね。イリスたちが何か考えてるみたいですよ。お二人を祝うんだって」

「ふふふ、そう。楽しみだわ」

 と微小した。


 功助とシオンベールが正式に婚約し結婚式の日取りが決まったあの日。竜族の婚姻承諾の儀から三か月ほどたった時だった。

 陰鬱になりつつあったシャリーナにシオンベールから自室に来て欲しいと連絡があった。何事かと部屋に行ったシャリーナはその話を聞いて膝が震えた。でも、それ以上に歓喜に身体全体が震えたのをよく覚えている。

「そ、そんな法が……。で、でもでもでも、第二婦人を娶れるだなんて……。それをあたしにだなんて……。な、なんで、なんでですか姫様。あたしは姫様の恋敵……」

「だからなのです。シャリーナ隊長、私はあなたのコースケ様への想いが純粋であることに気づいてしまったのです。あなたのコースケ様への愛が本物だと気づいてしまったのです。だから、だから……」

「……姫様……」

「……あなたとならコースケ様を一緒に、愛し続けることができると確信しています。シャリーナ隊長、いえ、シャリーナ・シルフィーヌ、私とともにコースケ様をお支えし、愛し続けましょう」

「……ひ、姫様…………。よ、喜んで、姫様…うぇ、うぇーーーん!」

 号泣するシャリーナ。シオンベールはその肩を抱いて微笑むのだった。




 ・・・一年と7日・・・


 そして一週間後。

「コースケ・アンドー。あなたはシャリーナ・シルフィーヌを第二婦人とし白竜神の導きにより夫婦となろうとしています。汝、命を賭け、健やかなる時も、病める時も、常にこの者を愛し、慈しみ、守り、助け、この世より召されるまで固く節操を保つ事を誓いますか」

 柔和な笑顔の神父が優しい声色で功助に近いを問う。

「はい、誓います」

 白いタキシードを着た功助が真剣に誓う。

「シャリーナ・シルフィーヌ。あなたはシオンベール・ティー・アスタットとともにコースケアンドーを夫とし、白竜神の導きにより夫婦となろうとしています。汝、第二婦人として、命を賭け、健やかなる時も、病める時も、常にこの者を愛し、慈しみ、守り、助け、この世より召されるまで固く節操を保つ事を誓いますか」

「はい。誓います」

 白銀の瞳を潤ませたシャリーナが力強く誓った。

 決意の誓いを聞いて神父は柔和に微笑む。

「それでは指輪の交換を」

 功助はシャリーナの左手をそっと握るとその薬指に指輪をはめる。それは深緑の輝きを放つエメラルド。愛と献身の意味がある。

 そしてシャリーナも功助の左手をそっと握り指輪を近づけた。だがそこには正妻シオンベールの竜の刻まれた指輪がすでにはまっている。シャリーナはその指輪をそっと撫でると自分の気持ちの籠った指輪を薬指にはめシオンベールの指輪と合わせた。するとそれは一つの指輪となり功助の指でキラリと輝いた。それは翼を広げた竜だった。

「ほう」

 神父は一つになった指輪を見ると少し驚いたようだがすぐにやさしく微笑むと言った。

「それでは誓いの口づけを」

 功助はシャリーナのウエディングベールをそっと上げるとその潤んだ銀色の瞳を見つめる。シャリーナも功助の黒い瞳を見つめた。

「シャリーナ」

「コースケ」

 功助はシャリーナの両肩をそっと持つとゆっくりと顔を近づける。そして二人のその唇はそっと重なった。自分の頬を伝う一筋の涙にシャリーナはこの上ない幸せを感じていた。

 そして愛を交わした二人のすぐ後ろには二人を見守る正妻シオンベールがシャリーナと同じ涙を流し幸せを感じていた。

「シオンベール・ティー・アスタット、ここへ」

「はい」

 シオンベールは新婦に呼ばれて功助の左側に立つ。右側にはさっきまで功助の左側にいたシャリーナが移動した。

「新婦、二人とも前に」

 神父の言葉のままシオンベールとシャリーナが一歩前に出る。そして互いに向き合った。

 するとおもむろにシャリーナが両膝を着いて胸の前で手を組んだ。頭を深く垂れると次いでシオンベールが胸の前で手を組む。そして功助が二人に近づくとそれぞれ組んだ手に自分の手を重ねる。シオンベールには左手を、シャリーナには右手をその手に重ねた。しばしの沈黙のあとシャリーナは立ち上がりシオンベールとともに功助の方に身体を向ける。

「シオンベール・ティー・アスタット、シャリーナ・シルフィーヌ。二人を我が妻としこの命尽きるまで愛することを誓う」

 二人の妻は再び功助の横に立つ。そして新婦がおごそかに宣言した。

「コースケ・アンドー、シオンベール・ティー・アスタット、シャリーナ・シルフィーヌ。ここに新しい夫婦が生を受けました。永劫の幸福が三人にあらんことを」

 と言うと大きく頷きにこやかに微笑んだ。

 挙式を見守っていた参列者も笑顔となり三人をみつめている。

 魔法師隊副隊長のラナーシアは我がことのように喜び、シャリーナの瞳から流れる涙をうれしそうに見つめ自分も涙を流していた。

 その横で青の騎士団副団長のハンスや団長ベルクリットも感極まった様子で三人を見ている。


 功助とシオンベール、シャリーナの三人は参列者の間をゆっくりと扉に向かう。

 そして、神殿を出るといきなり頭上から白い雪が降ってきた。

「へ?雪?今、春だよな」

 ふと横を見ると魔法師隊元見習いのモーザが手を挙げて水魔法の一つ凍結を利用して雪を作りだしているのに気づいた。

 それを空高くに舞い上がらせて三人の真上から降らしているのは風魔法を使うイリスだ。

「うわあ、きれい。なかなかやるじゃないモーザとイリス」

「はい、とてもきれいです」

 シャリーナもシオンベールも春の日差しにキラキラと輝いている雪をうれしそうに見上げている。

「いい演出だな。ありがとう」

 功助がモーザとイリスの方を見て礼を言う。

「いえいえ、隊長たちに喜んでいただいてうれしいです。ね、イリス」

「ひゃ、ひゃい。それに姫ちゃまもチャリーナ隊長もとーってもきれいでしゅ!」

 と褒められたのがうれしくて少し顔を赤くするイリス。

「ちょっ、ちょっとイリス。噛みすぎだっていつも言ってるでしょうが!」

「あ、ごめん」

 あははと笑うイリス。

「ほんと、イリスはいつもイリスよね」

「そうだな。イリスはイリスだ」

 と笑うシャリーナと功助。

「でも、ありがとうございます」

 とうれしそうなシオンベール。

 ドーン!

 と、その時、上空から何かが爆発する音が聞こえた。

「な、なんだ?」

 上を見上げる三人とうれしそうな元見習い二人。

 ドーン!

 再び上空で音がした。

「あっ!」

 功助が見たものは。

 青い空に拡がる色とりどりの炎の大輪の花だった。

「うわっ、綺麗じゃない!」

「ええ、とても綺麗です」

 と上を見上げる二人の花嫁。

「花火……?」

「はい、そうです!」

 功助の言葉に応えたのはフランサだった。

「コースケ隊長の妹のマイさまに教えてもらったのじゃ。ニホンでは夏にこのような花火というものを楽しむと。それでは隊長たちの結婚式のあとでぜひお見せしたいと思ってやってみたのじゃ。いかがです?」

 とドヤ顔のフランサ。

「ありがとうフランサ。とても綺麗だ」

 と、またまたその時。

 ドンドン、ジャラジャラ、ピーピーシャンシャン

 と何やら楽器の音が聞こえてきた。

 そちらを向くと、なんと小さなゴーレムたちが太鼓や鈴を鳴らして演奏していた。

「へえ、あれは土のゴーレム。うまいもんじゃない。ねえメリア」

 シャリーナはそれが誰の仕業かわかったようでいつの間にかフランサの横に立っているメリアに親指を立てて笑顔を向けた。

「ふふふ。喜んでいただいてとてもうれしいですわ。コースケ隊長、姫様、シャリーナ隊長」

 メリアがそう言うと、

「ご結婚おめでとうございます!」

 元見習い四人の声が唱和した。

「ありがとう」

 功助たちは四人の笑顔を見てとても幸せな気持ちに笑みをこぼした。

 そして、

「バッチリ撮れました」

 と、うれしそうにスマホを掲げたのはミュゼリアだ。

 するとスマホの中から声がした。

『やったねミュゼちゃん。ねぇお兄ちゃん。今のもビデオに録ったからね!』

「なんだ真依、録ったのか?ははは。また見せてもらうかもしれないから残しといてくれよ」

『わかってるって』

 とうれしそうな真依。



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