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異世界人と竜の姫  作者: アデュスタム
第9章 最終章 異世界人と竜の姫
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03 異世界で

 03 異世界で



「婚姻承諾の儀式をされるようです隊長」

 功助とシオンベールの会話をカレットが通訳する。

「……そ、そうなんだ……。姫様が勝てばダーリンは元の世界に還っていくし、ダーリンが勝てばこちらの世界にずっといるけど姫様と結婚……。んもう……複雑ぅ……」

 と眉尻を下げるシャリーナ。


『始めます!』

「おう!」

 シオンベールは一声雄たけびを上げるとその長い首を左右に揺らし始めた。

「(け、けっこう揺れ幅が大きいんだな)」

 そしてだんだんとその速度を早くしていく。

 景色が左右に大きく動く。功助は少しだけあせった。

「(わわわ。どっかのアトラクションが幼稚にかんじるなこりゃ)」

『コースケ様、まだまだこんなものじゃありませんよ。お覚悟を!』

 シオンベールがそういうと首振り速度が更に増した。

『あはは、お兄ちゃん大丈夫かなあ』

『ほんとねえ。見てるだけで酔いそうねぇ』

『で、これにはどんな謂れがあるんや、あるんやろミュゼちゃん』

「はい。あれは第一の試練’分銅(ふんどう)の儀’といって、時計の振り子を表してます。長い年月を一緒に過ごせるか問うものです。裏の意味で女に振り回されても耐えろという意味もあるとか無いとか……」

『あはははは!』

 とスマホの向こうは楽しそうに笑っている。


「まだまだあ!」

『むむむ!』

 シオンベールは首振りを止める。

「もう終わりか」

 ニヤリとする功助。

『次行きます。次は第二の試練’衝耐(しょうたい)の儀’です』

 シオンベールは草原の真ん中に土魔法で岩を作り出した。

「シオン?もしかしてあの岩に……?」

『はい。コースケ様は頑丈そうなので地面では物足りないかと思いまして岩を作り出しました』

 と胸を張る。

「あは、あははは」

 冷や汗の功助。

『それでは、お覚悟を!』

 シオンベールは作り出した岩に自分の頭をぶつけだした。ツノの間に立っている功助は前後に大きく揺らされるとともに、岩に身体をぶつけることになる。

「うがっ!ぐがっ!げほっ!」

 何度も何度も岩に叩きつけられる功助。


「うわあ。ダーリン大丈夫なのかしら?」

 と少し蒼い顔のシャリーナ。

「そうですね。揺れ幅が大きいですし……。でもコースケ隊長はちゃんと障壁張っているようですし……。でも、ほんと大丈夫なのでしょうか……?」

 とラナーシア。

「ま、大丈夫だろ」

 いつの間にか隣にはハンスがいてけっこう気楽そうに功助とシオンベールを見ている。

「ハンス副団長?」

「心配するなラナーシア。お前も知ってるとおりコースケは強い」

「はい」

 と少し微小するラナーシア。


『ミュゼちゃん』

「はいマイ様。あれは’衝耐の儀’と言ってどんな困難にも打ち勝てる頑強な信念があるのかを問うています。裏の意味では、皿や籠や(たらい)が飛んできても我慢できるかという意味があるとか無いとか」

『……けっこう我慢しなきゃいけないのね……』

 と苦笑する友紀。

『どこの世界も男は……』

 進は肩を竦めた。


『このっこのっこのっ!どうですかコースケ様!』

「あ、ううう、けっこう効くなあこれ。障壁作らなかったらたぶん身体グチャグチャになってるだろうな。はあ、くわばらくわばら」

『んもう!これでもダメですか……。ならば次行きます』

「おいシオン。確か次は池の中に入るんじゃなかったか?このへんにそんなとこあるのか?」

『はい。次は護溺(ごだく)の儀’です。コースケ様のおっしゃるとおり池や湖に入りますが川でもいいのです。そう、海でも』

「う、海?もしかしてシオン……?」

『はい。ここからあまり遠くないところに海があります。行きますよコースケ様!』

 シオンベールは翼を広げると急上昇し東の方に飛んで行った。


「ベルクリット団長!」

「はっ!」

 トパークスが急にベルクリットを呼ぶ。

「あの二人を追え。立ち合いしてくるのだ」

「はっ!」

 敬礼をしたベルクリットは走る。走りながら竜化すると翼を拡げシオンベールたちを追いかけた。


『ねえミュゼちゃん』

「はい、ユキ様」

『あの二人どこ行ったの?』

「はい。おそらく海かと。次の儀式は……」

 とミュゼリアが次の儀式について説明する。

「第三の試練、護溺の儀はどんなに苦しくても愛する者を離さない自信があるかを問うています。裏の意味で私に溺れさせますねという意味があるとか無いとか」

『へえ。そうなんだ。で、帰ってくるまでどれくらいかかるのかな?』

 と今度は真依。

「そうですねえ。十五分から二十分ほどかと」

 集まった人たちはシオンベールの飛び去った方を見つめた。


『もうすぐ着きますからねコースケ様。飛ばされないでくださいね。まあ、飛ばされた瞬間に渡しの勝利ですが』

 小さく笑うシオンベール。

「それは残念。俺はこうしてしっかりとお前の頭で立ってるぞ。風圧なんて効かないぞ」

 と偉そうに胸を張る。

『そうですか。それでは早く海に出たいので速度を上げますからね』

 とシオンベール。

「ま、まさか……。う、うわああああああ!」

 シオンベールは長い首を真っすぐ前に伸ばしその翼をたたんだ。そして黄金の魔力を放つとスピードは一気に上昇した。そう、衝撃波とともに。

「(うっ。凄い風圧だ。でも、吹き飛ばされるわけにはいかない。障壁を強化しないと)」

 功助は体内魔力を少し上げると自分を包み込んでいた障壁を強化する。

『海ですよコースケ様』

「あ、ああ、そうだな。もしかしてあの海って?」

『はい、そうです。ハンス副団長とミュゼリアたちと追いかけっこをしたあの海です』

 と少し懐かしそうなシオンベール。

「と言ってる間にもう海の上だ。シオン、速度落とせよ」

『はい。わかってますよ』

 というと速度を落とし上空で静止した。

『コースケ様、本来なら障壁を張ったままでは無効になるのですが、消していただけますか?』

「げっ。そ、そうなのか。それなら仕方ない消すよ」

 身体の周囲に張った障壁を消す功助。

『いいでしょう。では、始めます。またまたお覚悟を!』

「よっしゃ!いつでも来い!」

 シオンベールは真下に降下し頭から海の中へと潜っていった。

『やっと追いついたぞ。と思ったら海の中に入っていったか……。さあ、五分を三回だぞコースケ。耐えろよ』

 ベルクリットは空中で静止したままシオンベールが大きく上げた水柱を見つめていた。


「(うううぅっ!凄い水圧だ。まともに全身で受けてるからなぁ。くそっ!)」

『どうですか海中散歩は?いろいろなお魚がいて楽しいでしょうコースケ様』

「さ、魚……?」

 そう言われて周囲を見渡すとシオンベールのいうとおりいろいろな魚がたくさんいた。

「そうだな。でも今の俺には魚を見てる余裕なんて無いんだけど」

『ふふ、そうでしたか。なかなかみられるものじゃないのですけどね。さあ、一回目終わります』

 シオンベールは海面に向かう。そしてほんの十秒ほどでまた海中に潜った。


『一回目は終わりか。コースケの様子は…と。うん、まだ余裕そうだ』

 空中から見ているベルクリットは少しホッとする。


 そして二回目がおわり三回目に入った二人。

『コースケ様、かなりしつこいです!』

「う、うるさい!けっこうきついんだぞこれ。くそっ!」

 と容赦なく襲う水圧に耐える功助。

 そして最後の五分が経過した。

 海面から水柱をあげて飛び上がるシオンベール。

『コースケ様……。ほんっとしつこいです。あれだけ海中で泳ぎ回ったのに』

「う。うるさいわい!」

 と言って身体を震わせると上着の裾から魚が一匹落ちた。

『うふふふ。それでは最後の儀式を開始するためにみんなのところに戻りますよ。猛スピードで戻りますので障壁を張ってくださいね!』

「ああ、わかった!」

 シオンベールは再び黄金の矢と化しカガール平原に向かった。

『あっ!あの二人、俺の存在に気づきやがらなかった。せっかく立ち合いに来てやってるのに、くそっ!』

 ベルクリットは悪態をつきながらシオンベールたちを追いかけた。


「あっ、戻ってきたわよ」

 シャリーナがいち早く黄金の竜を見つけた。

 シオンベールはみんなのいるところまで戻ってくるとそのまま第四の試練に入った。

「ほう。第四の試練に入ったということは第三の儀は遂げたということか。なかなかやるではないかコースケ」

 とトパークス国王はニヤリとする。

『ミュゼちゃん?』

「はい。これから行われる第四の試練は’永遠の儀’です。天空に8の字を描いて八回飛びます。これには私と永遠に添遂げる心があるのかを問うています。そして幸せにしないと二つの丸井ものをねじ切るぞという裏の意味があるとか無いとか」

『二つの丸い者を……』

 それを聞いていた進は下腹部がキュンとして身震いした。

『でも、あれって盾に周ってるし。それに上の円は縦長やし……。もしかして両方とも……?』

 そう言うと内股になって両手で隠した。


『さあ、始めます。障壁は張らないでくださいね。では、行きます!振り落とされてください!」

『断る!」

 シオンベールは黄金の矢となったまま真上に急上昇。天空に向かい猛スピードで雲を(つんざ)きながら登って行く。

「(うっ!なんじゃこりゃ!目の前がちょっとグレーっぽい。くそっ!根性だ!でも、すごいGだぞこれは)」

 歯を食いしばる功助。

『耐えましたか。それじゃ降下します!』

 シオンベールは急反転。地表に向かって真っ逆さまに降下する。

「(う、うぎゃああああ!落ちるぅぅぅぅ!)」

『コースケ様、負けを認めてください。そして私の牙を使い元の世界にお戻りになってください!』

「だ、だから!こ、断る!」

『頑固ですねコースケ様。わかりました。続けますよ!』

 急降下し地表すれすれでまた急上昇。功助は目の前がグレーになったり赤くなったりたまに黒くなったりと忙しい。

 そして八回目の上昇。

 功助は耐える。もう身体はボロボロになっている。着ている服は見る影もない。そして体力はどんどん奪われツノを握る手の力もかなり弱くなってきていた。

 だが、シオンベールも同様に心身ともに疲労していた。頂点に達して降下をし始めたシオンベールに異変が起こった。

『(はぁ、はあはあはあ。き、きつい……。も、もう力が出ない。い、意識が……。コースケ様……)』

 降下しはじめてすぐにシオンベールは意識を失った。

「シオン?」

 さっきまでとは違い降下のスピードがおかしい。さっきまでは降下する時にも速度を出していたが今はどうも違う。

「……落ちてる……?自由落下か!シオン!おいシオン!!」

 シオンベールからの返事がない。

「シオン!しっかりしろシオン!目を覚ませ!……ダメだ。くそっ!このままじゃ地面に激突する。どうにかしないと」

 だが功助もかなり疲労している。通常ならシオンベールとともに飛ぶことなど軽くできるが今はできるかどうかわからない。それほど疲弊していたのだ。

「う、うわあああああ!」

 落下するシオンベール。その身体がグルグルと回転し始めた。功助はシオンベールのツノにしがみつく。

「な、なんとかしないと」

 ものすごい遠心力に恐怖を感じる功助。

「地面まで距離がない…。なんとかしないと……。う、うぅっ、くそっ!目が霞んできたぞ。くそっ!」

 疲弊している頭で考えるが何も浮かんでこない。


 あれ?変よあれ!……落ちてる!姫様気を失ってるみたい!このままだと地面に激突してしまう!」

 シャリーナが魔力で望遠鏡のように遠くまでよく見える目がシオンベールの異変に気付いた。

「魔法師隊!全員で姫様の落下地点にクッションを作り出して!どんなんでもいい衝撃を防ぐことができたらどんなものでもいい!早く!」

 シャリーナは両掌を前に向けると細かい風の渦を落下予想地点に向けて放った。

 見習い魔法師のイリスも全力でエアークッションを、モーザは水魔法でスライム状のクッションを落下予想地点に送る。

 ミュゼリアもスマホを左手で持ち右手で水のクッションを作り出す。そしてなんと国王トパークスも超大型の風のクッションを作り出し落下予想地点に送った。

 その他少しでも風や水の魔法を使えるものが次々とクッションを落下予想地点に送った。

「お願い!無事で降りてきて!」

 シャリーナは目の前で手を組み落下してくるシオンベールとその頭に立っている功助を見て祈った。


「く、くそっ!き、気力だ!気力を出せ俺!。はああああああああああ!」

 功助が気を放出するとその気は己と黄金の竜を包み込む。

「落ちて、落ちてたまるかあ!シオンを絶対に死なせない!うおわりゃあああああああああ!!」

 功助の身体が純白に光を放つと落下の速度が一気に落ちた。そしてゆっくりとゆっくりとみんなが作ってくれた柔らかなクッションの上に降り立ったのだった。


「おいシオン、しっかりしろシオン!」

「う、うぅ…」

 黄金の睫毛がひくひくしてゆっくりとその目を開けた。最初は焦点が合わないのか周囲を少し見渡し、そして何度か瞬きをするとようやく目の前にいる功助を認識した。

「シオン、よかったぁ」

 意識の戻ったシオンベールに安堵し微笑む功助。

「……コースケ様……?どうしたのです…か…?」

 まだ頭がぼんやりしているようでなかなか今の状況を把握してないようだ。

「よかったわあシオン、心配したわよ」

 と王妃ルルサ。

「お母さま?」

「まだ状況がつかめてないか。お前は気を失ってたのだぞシオン」

 と今度はトパークス国王。

「そうよシオン。コーちゃんを振り落とそうとして無茶な飛び方してたものねあなた」

「あっ!思い出しました。私、私……第四の試練の最後で意識を失って……」

 というとガバッと上半身を起こす。

「コースケ様っ!大丈夫ですか!お身体は、お体はご無事ですか!」

 と目の前にいる功助に顔を近づけた。

「わっ、お、おいおいシオン、それはこっちのセリフだぞ。ほんとにもう」

 と苦笑する。

「そうよシオン。あなたが気を失って真っ逆さまに落ちてきたのよ。でもここにいる大勢の方々の力と、、コーちゃんの愛の力であなたを助けたの。ねえコーちゃん」

「へ?あ、はい。完全に気を失ってたからなお前」

 と言ってシオンの頭をポンポン叩く。

『ほんとよかったねシオン』

 功助の横に立っているミュゼリアが持っているスマホから功助の妹真依の声がした。

「へ?マイさん?ど、どうして?」

 スマホの小さなディスプレイに映る真依を見て首を傾げるシオンベール。

『そうよね一時はどうなるかと思ったわよシオンさん』

 今度は母の友紀。

『よくやったぞ功助。それでこそ俺の息子やな』

 功助の父進はうれしそうだ。

「それでだなシオン」

 と功助。

「はい……?」

「俺の勝だ」

 と片方の口の端を上げてシオンベールを見る。

「コースケ様……。で、でも、ご両親様が、マイさんが……。コースケ様がご帰還されないと……」

『いいのよシオン』

「……マイさん…」

 スマホの向こうの三人は微笑んでいた。

『実はねシオン。一週間前に兄貴とあたしたちとで話をしたんだ。まあ、結論から言うと兄貴はそっちの世界に、シオンのいる世界で生きることに決めたんだ』

『そうなのよシオンさん。功助にそんな一途なとこがあっただなんて知らなかったわ。でもね、真剣な功助を見たらね、いいかなって』

『そうなんやシオンちゃん。この愚息はな、シオンちゃんのこと大好きなんやな。俺も男やし功助の気持ちはよくわかるんや。まあ、しゃあないわ。好きな女と一緒にいたいって気持ちは男やったらみんなわかるしな。なあとパークス』

 といきなり国王を呼び捨てにして話を振る進。

「そうだな。ススムのいうとおりだ。俺も今日コースケが還るとばかり思っていたからな。コースケを慕ってるシオンを追いて還るとは情けないヤツだと思っていた。だが……。コースケ」

「はい」

 功助の黒い瞳を見て言った。

「儀式を締めくくろうではないか」

「はい!」

 といって立ち上がった

「シオン、大丈夫か、立てるか?」

「はい。問題ありません」

 シオンベールも功助の横に並んで立つ。


 物音一つしないカガール平原。さわやかな風が短い草を揺らし通り過ぎていく。

 功助はさきほど脱ぎ捨てた黒いマントを羽織り、右拳を左胸に当てると大きな声を出し誓いの言葉を叫ぶ。

「コースケ・アンドー!異世界人である自分はここ竜帝国の王女シオンベール・ティー・アスタットを永遠の伴侶とし全身全霊をもって護り、いかなる苦難も乗り越え生涯愛し続けることを誓う!」

 その目はまっすぐにシオンベールの父、国王トパークスの黄金の目を見る。

「コースケ・アンドー。その心真か」

「はっ!」

 功助は再び敬礼をする。トパークスは少し笑んだように見えたが力強い功助の目を見て頷いた。

 そして母ルルサがシオンベールの黄金の目に問う。

「シオンベール。あなたはコースケ・アンドーとともに生きることを誓えますか」

「はい、母上。わたくしシオンベール・ティー・アスタットはコースケ・アンドーとともに生き、いかなる苦難も乗り越え、永遠に愛することを誓います」

 少し潤んだシオンベールの黄金の瞳。母ルルサはニコリと笑むと大きく頷いた。

「父さん」

 功助はスマホの向こうで真剣な眼差しを自分たちに向けている父進に声をかける。

「父さん。俺は突然召喚された異世界で自分が愛すべき人シオンベールと出逢いました。そして彼女と同じ世界で同じ時間をともに過ごすことを選びました。俺が異世界に渡ったことでいろいろご迷惑をかけると思いますがごめんなさい。俺はシオンベールと結婚します」

『功助。わかった。お前が決めたお前の人生や。俺がとやかく言うことではないが……。シオンちゃんを命を賭けて護れ。命を賭けて愛せ。そして命を賭けて幸せにしろ』

「うん、わかった」

 真剣な進の目が柔らかくなり功助を見る。

「母さん、ごめん。こんなに遠くで生きることを許してください」

『いいのよ功助。あなたの人生だもの。私たちのことは気にしなくていいのよ。幸せになりなさい。シオンさん、功助をよろしくお願いします』

 友紀は功助の横に立つシオンベールに柔らかに微笑む。

「はい。御母様」

「真依。いろいろ心配かけて悪かった。そしてシオンと仲良くしてくれてありがとう」

『気にしないでお兄ちゃん。あたしうれしいよ。幸せになってねお兄ちゃん。そして、シオン。お兄ちゃんのことをよろしくお願いします』

「はい、マイさん。ありがとうございます」

 と微笑む。

 するとトパークス国王が一歩前に出て大音声で叫ぶ。

「我が娘シオンベール・ティー・アスタットと異世界からきた勇者コースケ・アンドーの婚約を承諾する!」

 トパークス国王が婚姻承諾を宣言した。

「うわあああ!」「おめでとう!」「幸せになれよ!」「姫様万歳!」「コースケやったな!」「おめでとうごじゃいましゅ!」

 祝いの言葉が飛び交った。

「くすん……」

「シャリーナ隊長……。コースケ隊長とはこれからもずっと逢えるんですから」

 シャリーナはうらめしそうに功助とその横で満面の笑顔のシオンベールを上目づかいで見つめた。それを慰めるのは親友ラナーシア。

「わかってる。わかってるけどさ……。んもう……。くすん」

 人差し指で目尻をそっと撫でてじっとシオンベールと功助を見つめる。その時、シオンベールと目が合ってしまった。

「あ……」

 思わず目をそらしてしまうシャリーナ。


 祝福の声を聴きうれしそうなシオンベール。だがふと視線を感じそちらを向くと赤い目でこちらを見ているシャリーナと目が合った。

「シャリーナ隊長……」

 シオンベールは小さく呟くと功助をチラッと見上げた。どうやらシャリーナには気づいてないようだ。

 再びシャリーナを見るとラナーシアの肩に額を当てていた。

「シャリーナ隊長……。やっぱり、教えてあげよう……。あの人なら……」

 小さく呟くとうれしそうに笑う功助を見上げた。


「なあミュゼ、ところでユリアルはどこ行った?」

「あそこです。白き牙で囲まれた真ん中に。

「……スピー、zzzzz、スピー、zzzzz……」

「ボクが見届けるって言ってたのにな。ほんと、幸せなヤツだな」

「どうします。起こしましょうか?」

「まあいいや。ほっとこう」

 ユリアルを置いたまま全員白竜城に戻っていった。


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